出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物の構造概論第101問
問題
建築物の防火対策と避難計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 火災の早期発見のため、自動火災報知機などを設置する。
(2) 火災の拡大防止のため、特定防火設備で区画化して防火区画を作る。
(3) 避難の原則として、二方向以上の避難経路を確保する。
(4) 劇場、集会場等における客室からの出口の戸は、内開きとする。
(5) 避難動線は、日常動線と一致させる計画が望ましい。
ビル管過去問|建築物の防火対策と避難計画を解説
この問題は、建築物における火災の早期発見、延焼防止、避難経路、出口の戸の開き方、避難動線の考え方について問う問題です。防火対策では、火災を早く見つける設備、火災を広げないための区画、そして人が安全に避難できる計画を組み合わせて考えることが重要です。不適切な選択肢は(4)です。劇場や集会場のように多くの人が一斉に避難する建物では、出口の戸は避難方向に開く外開きとするのが原則です。

(1) 火災の早期発見のため、自動火災報知機などを設置する。
適切です。火災時には、初期段階で火災を発見し、建物内の人に知らせることが非常に重要です。自動火災報知設備は、煙や熱などを感知して火災の発生を知らせる設備であり、避難開始を早める役割があります。火災そのものを消す設備ではありませんが、発見と通報を早めることで、避難の遅れや被害の拡大を防ぐ効果があります。
(2) 火災の拡大防止のため、特定防火設備で区画化して防火区画を作る。
適切です。防火区画は、火災や煙が建物全体に広がることを防ぐために、壁、床、防火戸、防火シャッターなどで建物内部を区切る考え方です。特定防火設備は、火災時に一定時間、炎や熱の広がりを防ぐ性能を持つ設備です。防火区画を適切に設けることで、火災の拡大を遅らせ、避難や消防活動の時間を確保できます。
(3) 避難の原則として、二方向以上の避難経路を確保する。
適切です。避難計画では、一つの避難経路が煙や火災で使えなくなった場合に備えて、別方向へ避難できる経路を確保することが重要です。これを二方向避難といいます。避難経路が一方向だけだと、その経路がふさがれた場合に逃げ場がなくなります。特に多くの人が利用する建築物では、複数の避難経路を計画することが安全性の基本になります。
(4) 劇場、集会場等における客室からの出口の戸は、内開きとする。
不適切です。劇場や集会場などでは、多くの人が火災時に一斉に出口へ向かう可能性があります。このとき出口の戸が内開きであると、人の流れや圧力によって戸を開けにくくなり、避難の妨げになります。そのため、客室からの出口の戸は、避難方向に開く外開きとするのが原則です。この問題では、「内開きとする」という部分が誤りです。
(5) 避難動線は、日常動線と一致させる計画が望ましい。
適切です。避難動線とは、火災などの非常時に人が避難するための経路のことです。避難経路が日常的に使っている通路や出口と大きく異なると、非常時に混乱しやすくなります。普段から使い慣れている動線と避難動線を一致させることで、利用者が迷わず避難しやすくなります。避難計画では、非常時だけを想定するのではなく、日常利用とのつながりを考えることが大切です。
この問題で覚えるポイント
建築物の防火対策は、火災を早く発見する対策、火災を広げない対策、安全に避難する対策の三つに分けて整理すると理解しやすくなります。自動火災報知設備は火災の早期発見と避難開始を助ける設備です。防火区画は、火災や煙の拡大を防ぎ、避難時間を確保するための区画です。避難計画では、一つの経路が使えなくなった場合に備えて、二方向以上の避難経路を確保することが原則です。劇場、集会場、百貨店など多くの人が集まる建築物では、避難時に人の流れを妨げないよう、出口の戸は避難方向に開く外開きが基本です。また、避難動線は日常動線と一致している方が、非常時に迷いにくく、安全な避難につながります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「出口の戸は開けばよい」と日常感覚で判断してしまう点にあります。通常の室内では内開きの戸も多いため、内開きでも問題ないように感じるかもしれません。しかし、劇場や集会場では、多数の人が一斉に出口へ向かうため、内開きの戸は人の圧力で開けにくくなります。防火や避難の問題では、普段の使いやすさではなく、火災時に人が安全に流れるかどうかを基準に判断することが重要です。特に「多くの人が集まる用途」と「避難方向に開く戸」はセットで覚えておくと、同じテーマの問題にも対応しやすくなります