問題
電離放射線の健康影響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 脱毛は、放射線の早期影響の一つである。
(2) 電離放射線により発生する代表的な悪性腫瘍として、白血病がある。
(3) 急性放射線熱傷は、通常の熱傷に比べて初期には痛みがない。
(4) 妊娠可能な婦人へのX線の骨盤照射は、月経開始後10日以内に行う。
(5) 微量な線量であっても影響が発生する可能性があることを、確定的影響と呼ぶ。
ビル管過去問|電離放射線の健康影響を解説
この問題は、電離放射線による人体影響の基本的な分類と、放射線防護の考え方を問う問題です。放射線の健康影響には、ある一定以上の線量で起こりやすくなる「確定的影響」と、線量がごく少なくても発生の可能性が完全にはゼロにならない「確率的影響」があります。正しい選択肢を判断するためには、この2つの違いを正確に押さえることが重要です。最も不適当なのは(5)です。微量な線量であっても影響が発生する可能性があるものは「確率的影響」であり、「確定的影響」ではありません。
(1) 脱毛は、放射線の早期影響の一つである。
適切です。脱毛は、比較的多い線量の放射線を短時間に受けた場合に現れることがある早期影響の一つです。放射線によって毛根の細胞分裂が障害されることで生じます。早期影響とは、被ばく後比較的早い時期に現れる障害のことで、皮膚の発赤、脱毛、造血障害などが含まれます。したがって、この記述は正しいです。
(2) 電離放射線により発生する代表的な悪性腫瘍として、白血病がある。
適切です。電離放射線による健康影響として、がんの発生リスクの増加が知られており、その代表例の一つが白血病です。白血病は造血組織に生じる悪性腫瘍で、放射線被ばくとの関連が古くから確認されています。放射線による発がんは、被ばく後すぐに起こるのではなく、一定の潜伏期間を経て発生することが多いという点も重要です。よって、この記述は適切です。
(3) 急性放射線熱傷は、通常の熱傷に比べて初期には痛みがない。
適切です。放射線による皮膚障害は、一般的なやけどとは経過が異なることがあります。通常の熱傷では受傷直後から痛みが強く出やすいですが、急性放射線熱傷では初期に目立った痛みが乏しいことがあります。そのため、見た目や自覚症状だけで軽いと判断してしまうと危険です。時間が経ってから皮膚障害が進行することもあるため、この記述は正しいです。
(4) 妊娠可能な婦人へのX線の骨盤照射は、月経開始後10日以内に行う。
適切です。これは放射線防護上の基本的な配慮です。妊娠初期の胎児は放射線の影響を受けやすいため、妊娠している可能性が低い時期に検査や照射を行うことが望ましいとされています。その目安として、月経開始後10日以内に骨盤部のX線照射を行うという考え方があります。これはいわゆる「10日規則」に基づく内容であり、試験対策上は基本事項として押さえておきたいところです。
(5) 微量な線量であっても影響が発生する可能性があることを、確定的影響と呼ぶ。
不適切です。これは確定的影響と確率的影響を取り違えた記述です。確定的影響は、あるしきい線量を超えると発生し、線量が大きくなるほど症状が重くなる影響です。代表例として、皮膚障害、脱毛、白内障、不妊などがあります。一方、微量な線量であっても理論上発生の可能性があるものは確率的影響で、主に発がんや遺伝的影響がこれに該当します。したがって、この記述は誤りです。
この問題で覚えるポイント
放射線の健康影響は、「確定的影響」と「確率的影響」に分けて整理することが大切です。確定的影響は、しきい線量があり、それを超えると発生し、線量が増えるほど重症化しやすい影響です。確率的影響は、しきい線量がないと考えられ、少量でも発生の可能性があり、線量が増えるほど発生確率が高くなります。脱毛や皮膚障害は確定的影響、白血病や発がんは確率的影響として覚えると整理しやすいです。妊娠可能な女性への骨盤部X線照射は、妊娠初期の被ばくを避ける観点から、月経開始後10日以内という基本事項を押さえておくことが重要です。
ひっかけポイント
「微量でも起こる可能性がある」という表現は、確率的影響を指します。「しきい線量があるかどうか」を問われたら、確定的影響か確率的影響かをまず切り分けることが重要です。白血病は放射線障害の代表例として出題されやすいですが、早期影響ではなく発がんに関する話として整理する必要があります。脱毛は見た目の症状なので発がんと混同しやすいですが、急性期にみられる確定的影響です。放射線防護の設問では、妊娠可能年齢の女性、骨盤照射、月経開始後10日以内という組合せが頻出です。
