【ビル管過去問】令和4年度 問題180|ねずみ・昆虫・鳥類の防除 殺虫剤・IGR・カラス対策を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|ねずみ、昆虫等の防除第180問

問題

ねずみ・昆虫等及び鳥類の防除と殺虫剤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 蚊の幼虫に対する基礎的な殺虫力は、LD50値により判断できる。

(2) カラスの巣を卵ごと撤去する場合には、自治体の長などの許可が必要となる。

(3) 「発生予防対策」は、ねずみ・昆虫等の対策の基本である。

(4) 水性乳剤は、水で希釈した際に白濁(乳濁化)しない。

(5) IGRは、成虫に対する致死効力がない。

 

 

 

ビル管過去問|ねずみ・昆虫・鳥類の防除 殺虫剤・IGR・カラス対策を解説

この問題は、ねずみや昆虫、鳥類の防除に関する基本知識と、殺虫剤の作用や剤型、さらに鳥獣保護に関する法的な扱いまでを横断的に問う問題です。防除分野では、薬剤の効き方を示す指標、発生を未然に防ぐ考え方、剤型ごとの性質、IGRの作用機序などを正しく整理しておくことが重要です。正しい選択肢は、カラスの巣の撤去に許可が必要であること、発生予防対策が基本であること、水性乳剤が希釈時に白濁しにくいこと、IGRが成虫に対する直接的な致死効力を持たないことを述べたものです。一方で、蚊の幼虫に対する基礎的な殺虫力をLD50値で判断できるとする記述は不適当です。LD50は主に薬剤の致死量を示す指標であり、蚊幼虫の基礎的な殺虫力の評価では、通常はLC50のような致死濃度による見方が重要になるためです。

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(1) 蚊の幼虫に対する基礎的な殺虫力は、LD50値により判断できる。

不適切です。その理由は、蚊の幼虫のように水中で薬剤にさらされる対象では、どのくらいの濃度で半数が死亡するかを示すLC50が基本的な評価指標として用いられるためです。LD50は、一定数の生物を半数死亡させる薬剤量を示す指標で、主に経口や経皮などで体内に取り込まれた量を基準に考える場面で使われます。これに対して、幼虫防除では水中濃度が効果判定の中心になります。つまり、この選択肢は「致死量」と「致死濃度」を混同している点が誤りです。試験では、似た略語を入れ替えて出題されることがあるので注意が必要です。

(2) カラスの巣を卵ごと撤去する場合には、自治体の長などの許可が必要となる。

適切です。その理由は、カラスを含む多くの野鳥は鳥獣保護管理法の対象であり、卵やひなを含む巣の撤去は、単なる清掃や片付けではなく、保護対象への影響を伴う行為として扱われるためです。特に卵がある巣を撤去する場合は、原則として自治体などの許可が必要です。建築物管理の現場では、フン害や鳴き声、威嚇行動などの問題から早く除去したくなることがありますが、法令を無視して処理することはできません。防除は衛生面だけでなく、法的な手続きを踏むことも含めて適正に行う必要があります。

(3) 「発生予防対策」は、ねずみ・昆虫等の対策の基本である。

適切です。その理由は、ねずみや昆虫の防除では、発生してから薬剤で駆除するよりも、そもそも発生しにくい環境をつくることが最も基本であり、効果的だからです。例えば、食品残渣を放置しない、水たまりや漏水をなくす、隙間をふさぐ、整理整頓を徹底するなどの対策は、害虫やねずみの生息条件そのものを断つことにつながります。これはIPMの考え方とも一致しており、薬剤依存を減らし、再発防止にも有効です。試験では「すぐに薬を使う」のではなく、「まず発生要因を除く」という順序が大切だと理解しておくと判断しやすくなります。

(4) 水性乳剤は、水で希釈した際に白濁(乳濁化)しない。

適切です。その理由は、水性乳剤は一般の乳剤と異なり、もともと水を基材としてつくられており、水で希釈した際に白く濁りにくい性質を持つからです。通常の乳剤は有効成分を有機溶剤に溶かし、界面活性剤によって水中に分散させるため、希釈時に乳濁しやすい特徴があります。一方、水性乳剤は臭気や引火性が比較的低く、取り扱いやすい剤型として用いられます。この選択肢は、乳剤一般の性質と水性乳剤の性質を区別できているかを問うものです。剤型ごとの見た目や取扱性の違いは頻出なので、整理して覚えておくと有利です。

(5) IGRは、成虫に対する致死効力がない。

適切です。その理由は、IGRは昆虫成長制御剤であり、昆虫の脱皮や変態、羽化、生殖などの成長過程に作用する薬剤だからです。つまり、幼虫や若虫が正常に発育できないようにして個体数を抑えるものであり、一般的な殺虫剤のように成虫をすぐに殺す薬ではありません。成虫に対しては、直接的な致死効力は基本的に期待しにくく、速効性もありません。そのため、成虫をすぐ減らしたい場面では、他の殺虫剤との併用が検討されることもあります。試験では「すぐ効く薬」と「発育を妨げる薬」の違いを区別できるかが重要です。

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この問題で覚えるポイント

ねずみ・昆虫等の防除では、まず発生源や侵入経路、えさ、水分、隠れ場所を断つ発生予防対策が基本です。これはIPMの中心的な考え方でもあり、薬剤散布だけに頼らない管理が求められます。殺虫剤の効果判定では、対象や使用環境によって評価指標が異なり、水中の幼虫防除ではLC50のような致死濃度の考え方が重要です。一方、LD50は致死量を示す指標であり、両者を混同しないことが大切です。IGRは昆虫の成長や変態を阻害する薬剤で、成虫を直接殺す速効性殺虫剤とは性質が異なります。剤型については、乳剤は希釈時に白濁しやすいのに対し、水性乳剤は白濁しにくいという違いがあります。また、鳥類対策では衛生管理の視点だけでなく、鳥獣保護に関する法令も重要であり、卵のあるカラスの巣の撤去には許可が必要となる点を押さえておく必要があります。

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ひっかけポイント

この問題の罠は、よく似た専門用語を入れ替えて受験者の知識をあいまいにさせる点にあります。特にLD50とLC50は文字が似ているため、意味まで正確に区別していないと誤答しやすいです。また、防除という言葉から薬剤散布を最初に連想してしまうと、発生予防対策が基本であるという原則を軽視しがちです。さらに、IGRについても「殺虫剤」という名称だけで成虫を殺す薬だと思い込むと引っかかります。加えて、カラス対策は現場感覚では「危ないからすぐ撤去してよい」と考えやすいですが、実際には法令上の規制があるため、日常感覚と制度上の扱いのズレにも注意が必要です。こうした問題では、言葉の雰囲気で判断せず、作用機序、評価指標、法的条件を一つずつ冷静に確認することが大切です。

 

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