出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|ねずみ、昆虫等の防除第168問
問題
ゴキブリの生態に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) ワモンゴキブリは、卵鞘(しょう)を唾液などでくぼみ、隙間等に貼り付ける。
(2) ゴキブリ類は、成虫と幼虫の生息場所が同じである。
(3) 孵(ふ)化したばかりのゴキブリ類の幼虫は、0.5mmの隙間でも潜ることができる。
(4) チャバネゴキブリは、休眠性をもたない。
(5) ゴキブリ類の集団形成は、気門から分泌される集合フェロモンにより促進される。
ビル管過去問|ゴキブリの生態 ワモンゴキブリ・チャバネゴキブリの習性を解説
この問題は、ゴキブリの基本的な生態について問う問題です。試験では、種類ごとの産卵習性、成虫と幼虫の行動の共通性、侵入できる隙間の大きさ、休眠性の有無、集合フェロモンの分泌部位などがよく問われます。正しい選択肢は、ワモンゴキブリの卵鞘の付着習性を述べたもの、成虫と幼虫が似た場所に生息する性質を述べたもの、ふ化直後の幼虫が非常に狭い隙間にも侵入できることを述べたもの、チャバネゴキブリが休眠性をもたないことを述べたものです。不適当なのは、集合フェロモンの分泌部位を気門としている記述です。集合フェロモンは主に糞や体表由来の化学物質などが関与しており、気門から分泌されるとする説明は誤りです。
(1) ワモンゴキブリは、卵鞘(しょう)を唾液などでくぼみ、隙間等に貼り付ける。
適切です。ワモンゴキブリは産んだ卵鞘をそのまま放置するのではなく、物陰や隙間など安全な場所に付着させる習性があります。これは卵を乾燥や外敵から守り、ふ化しやすい環境を確保するためです。ゴキブリの防除では、こうした卵鞘の設置場所になりやすい狭い隙間や裏側の空間を重点的に点検することが重要です。成虫だけでなく卵の存在を意識できるかどうかが、実務でも試験でも大切です。
(2) ゴキブリ類は、成虫と幼虫の生息場所が同じである。
適切です。ゴキブリは不完全変態の昆虫であり、幼虫は成虫とよく似た形態をしていて、生活する場所や行動範囲もおおむね共通しています。完全変態の昆虫のように、幼虫と成虫でまったく異なる場所に生息するわけではありません。そのため、防除では成虫だけを対象にするのでは不十分で、潜伏場所全体に対して対策を行う必要があります。この点は、ゴキブリが同じ場所で世代を重ねて増殖しやすい理由の一つでもあります。
(3) 孵(ふ)化したばかりのゴキブリ類の幼虫は、0.5mmの隙間でも潜ることができる。
適切です。ふ化直後の幼虫は非常に小さく、体も柔らかいため、肉眼では見落としやすいほどの狭い隙間にも入り込めます。こうした性質があるため、ゴキブリ対策では単に広い場所を清掃するだけでは不十分で、設備まわりや壁の継ぎ目、什器のすき間など微細な空間の封鎖や清掃が重要になります。試験では、ゴキブリがいかに狭い空間を利用するかという点が、侵入防止や潜伏防止の知識と結びついて問われます。
(4) チャバネゴキブリは、休眠性をもたない。
適切です。チャバネゴキブリは屋内性が強く、暖かく安定した環境で年間を通じて活動しやすい種類です。そのため、季節的な休眠によって活動を止める性質は基本的にもっていません。特に厨房や給湯設備周辺のような高温多湿の環境では繁殖しやすく、年間を通じて問題になることがあります。受験上は、屋外性の種と屋内性の種の違いを意識しながら整理すると覚えやすいです。
(5) ゴキブリ類の集団形成は、気門から分泌される集合フェロモンにより促進される。
不適切です。ゴキブリが集まるのは事実ですが、その集団形成を気門から分泌される集合フェロモンとするのは誤りです。ゴキブリの集合には、糞に含まれる化学物質や体表由来の物質、潜みやすい環境条件などが関与するとされています。つまり、集まる現象自体は正しいものの、その仕組みの説明が間違っています。試験では、このように現象そのものは正しくても、原因や部位の説明だけを誤らせる形で出題されることがあるため注意が必要です。
この問題で覚えるポイント
ゴキブリは不完全変態であり、幼虫と成虫は形だけでなく生息場所もおおむね共通します。このため、一部の成虫だけを駆除しても、同じ潜伏場所にいる幼虫や卵鞘が残れば再発しやすいです。防除では、成虫、幼虫、卵鞘を一体として考えることが重要です。
ワモンゴキブリは卵鞘を物陰や隙間などに付着させる習性があります。一方で、種類によって卵鞘の扱い方には違いがあり、チャバネゴキブリでは雌がふ化直前まで卵鞘を保持する性質が有名です。この違いは試験で比較されやすいポイントです。
ふ化直後の幼虫は非常に小さいため、きわめて狭い隙間にも侵入できます。そのため、侵入防止や潜伏場所対策では、見た目よりはるかに細かい隙間まで意識する必要があります。建物管理の実務でも、配管まわりや什器の継ぎ目などが重要な管理ポイントになります。
チャバネゴキブリは休眠性をもたず、屋内の安定した環境では一年中繁殖しやすい種類です。特に飲食施設や暖房のある建物では、季節に関係なく発生するおそれがあります。寒くなれば自然にいなくなると考えるのは誤りです。
ゴキブリの集合には化学的な要因が関与しますが、分泌部位や物質の由来まで正確に押さえることが大切です。集合フェロモンという言葉だけを覚えるのではなく、糞などに由来する集合刺激が関与するという理解まで進めると、誤答しにくくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、現象そのものは正しいが、その理由や部位だけを誤らせる作りにあります。ゴキブリが集団を作ること自体はよく知られているため、受験者は気門という専門用語が出てくると、もっともらしく感じてそのまま正しいと判断しやすいです。しかし試験では、このように専門用語を混ぜて因果関係をずらす出題がよくあります。
また、成虫と幼虫の生息場所が同じという記述も、昆虫一般のイメージで考えると迷いやすいです。チョウやハエのような完全変態の知識が頭にあると、幼虫と成虫は別の場所にいるはずだと考えてしまいがちです。ゴキブリは不完全変態であることを基準に判断する必要があります。
さらに、0.5mmの隙間という数値は、日常感覚では狭すぎるように感じます。そのため、感覚的に無理だと思って誤答しやすいですが、試験ではこうした日常感覚と生物の実際の能力との差が狙われます。数値が出てきたときは印象ではなく、過去問で見た知識に基づいて判断する姿勢が大切です。
