出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|ねずみ、昆虫等の防除第167問
問題
蚊の生態に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) コガタアカイエカは、水田や湿地等の大きな水域に発生する。
(2) 温帯に分布するヒトスジシマカは、卵のステージで越冬する。
(3) アカイエカは、有機物の多い排水溝や雨水ますに発生する。
(4) チカイエカは、最初の産卵を無吸血で行うことができる。
(5) アカイエカとチカイエカは、雌成虫の外部形態で容易に区別が可能である。
ビル管過去問|蚊の生態 アカイエカ・チカイエカ・ヒトスジシマカの特徴を解説
この問題は、蚊の種類ごとの発生場所、越冬形態、吸血や産卵の性質、形態的な識別の難しさを問う問題です。蚊の防除では、種類ごとの生態を正しく理解することが重要です。なぜなら、発生源対策や調査方法が蚊の種類によって大きく異なるからです。正しい選択肢は、コガタアカイエカの発生源を述べたもの、ヒトスジシマカの越冬形態を述べたもの、アカイエカの発生場所を述べたもの、チカイエカの無吸血産卵を述べたものです。一方で、アカイエカとチカイエカは雌成虫の外部形態で容易に見分けられるわけではないため、この内容を述べたものが最も不適当です。蚊の名前が似ているため混同しやすいですが、それぞれの特徴を整理して覚えることが得点につながります。
(1) コガタアカイエカは、水田や湿地等の大きな水域に発生する。
適切です。コガタアカイエカは、比較的大きな止水域を好んで発生する蚊です。代表的な発生源としては、水田、沼地、湿地、休耕田などが挙げられます。都市部の小さな排水ますや地下水槽のような場所よりも、広い面積を持つ自然的あるいは農業的な水域との結びつきが強いことが特徴です。このような性質は、発生源対策を考える際に非常に重要です。つまり、建物周辺の小規模水域だけを点検していても十分ではなく、周辺環境まで含めた広域的な視点で確認する必要があるということです。
(2) 温帯に分布するヒトスジシマカは、卵のステージで越冬する。
適切です。ヒトスジシマカは、いわゆるヤブカの一種で、日本でもよく見られる蚊です。温帯地域では、成虫のまま冬を越すのではなく、主に卵の状態で越冬します。これは寒い時期を耐えるための重要な生態的特徴です。そのため、春以降に気温が上がると、水がたまった容器などで卵がふ化し、幼虫が発生します。空き缶、植木鉢の受け皿、古タイヤ、バケツなどの小さな人工容器が発生源になりやすいのは、この越冬卵の存在と関係しています。防除では、冬の間に不要な容器を片づけることも有効です。
(3) アカイエカは、有機物の多い排水溝や雨水ますに発生する。
適切です。アカイエカは、都市部でもよく見られる代表的な蚊で、有機物を含むやや汚れた水域に発生しやすい性質があります。排水溝、側溝、雨水ます、たまり水のある設備周辺などは、典型的な発生場所です。特に水が長く滞留し、腐敗した有機物が混じるような環境では、幼虫が育ちやすくなります。建築物の維持管理では、単に水があるかどうかだけでなく、水質や清掃不良の有無にも注意する必要があります。発生源をなくすためには、滞水防止、堆積物の除去、定期的な清掃が基本になります。
(4) チカイエカは、最初の産卵を無吸血で行うことができる。
適切です。チカイエカは、アカイエカの近縁群として扱われることが多く、地下空間や閉鎖的な環境で見られやすい蚊です。大きな特徴の一つが、最初の産卵を吸血せずに行えることです。これを無吸血産卵といいます。通常、多くの蚊は産卵のために血液中の栄養を必要としますが、チカイエカは幼虫時代に蓄えた栄養を利用して初回産卵が可能です。この性質のため、人や動物から吸血しなくても一定の個体群を維持しやすく、ビルの地下施設や浄化槽周辺などで問題になることがあります。防除では、吸血被害の有無だけで発生の有無を判断しないことが大切です。
(5) アカイエカとチカイエカは、雌成虫の外部形態で容易に区別が可能である。
不適切です。アカイエカとチカイエカは非常によく似ており、雌成虫の外部形態だけで容易に区別することはできません。見た目が似ているため、実務上も単純な目視だけで判別するのは困難です。両者の識別では、雄の外部生殖器の特徴、行動、生息環境、産卵や吸血の性質などを総合的に判断することがあります。試験では、この「名前が違うのだから見た目も明確に違うだろう」という思い込みが狙われやすいです。実際には、分類学的にも近く、形態差が分かりにくいことが重要なポイントです。そのため、この記述が最も不適当です。
この問題で覚えるポイント
蚊の生態は、発生源、越冬形態、吸血と産卵の性質、識別の難しさをセットで覚えることが重要です。コガタアカイエカは水田や湿地などの大きな水域に発生し、アカイエカは排水溝や雨水ますなど有機物を含む都市型の小水域に発生しやすいです。ヒトスジシマカは温帯では卵で越冬し、小さな人工容器の水たまりが主な発生源になります。チカイエカは初回産卵を無吸血で行える点が大きな特徴で、地下施設や閉鎖空間の防除で重要です。また、アカイエカとチカイエカは名称が似ているだけでなく形態も似ており、特に雌成虫では外見だけで容易に区別できない点を押さえる必要があります。試験では、発生場所の違いと、越冬ステージ、無吸血産卵の有無、形態識別の難しさが頻出です。種類ごとの特徴をばらばらに覚えるのではなく、どこで発生し、どう増え、どう見分けるかという流れで整理すると正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、似た名前の蚊を同じような性質だと思い込ませる点にあります。アカイエカとチカイエカは名称が近く、実際に近縁であるため、受験者は発生場所や産卵習性、識別方法まで似ていると考えがちです。そこで出題者は、「容易に区別できる」という断定的な表現を使って、なんとなく正しそうに見せています。しかし、試験では「一見もっともらしい断定表現」ほど注意が必要です。また、ヒトスジシマカの越冬形態も、成虫で越冬すると誤解しやすい部分です。日常生活で夏に成虫を見る印象が強いため、冬もそのまま生き残ると考えてしまいやすいですが、温帯では卵越冬が基本です。このように、日常感覚で判断すると誤りやすく、種類ごとの専門的な生態知識で整理しておくことが大切です。
