出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物の構造概論第105問
問題
建築物の管理及び空調技術に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) クール·ピートトレンチシステムとは、外気と地盤の温度差を利用して外気負荷の削減を図る手法である。
(2) ナイトパージとは、夜間の外気を取り入れることで、空調機の冷房負荷を削減するものである。
(3) 放射空調は、温度ムラによる不快感が起こりにくい。
(4) BCPとは、設備の経年劣化に対する保全計画のことである。
(5) ファシリティマネージメントは、コストと品質の最適化バランスを目的としている。
ビル管過去問|建築物管理と空調技術を解説
この問題は、建築物管理に関する用語と、省エネルギー型の空調技術について問う問題です。クールピットトレンチシステム、ナイトパージ、放射空調、BCP、ファシリティマネージメントはいずれも建築物の運用管理で重要な用語です。不適切な選択肢は(4)です。BCPは設備の経年劣化に対する保全計画ではなく、災害や事故などが発生した場合でも事業を継続・早期復旧するための計画を指します。

(1) クール·ピートトレンチシステムとは、外気と地盤の温度差を利用して外気負荷の削減を図る手法である。
適切です。クールピットトレンチシステムは、外気を地中や地下ピットなどに通すことで、地盤の温度を利用して外気を予冷または予熱する手法です。地中の温度は外気温に比べて年間を通じて変動が小さいため、夏は外気を冷やし、冬は外気を暖める効果が期待できます。その結果、空調機が処理する外気負荷を小さくでき、省エネルギーにつながります。
(2) ナイトパージとは、夜間の外気を取り入れることで、空調機の冷房負荷を削減するものである。
適切です。ナイトパージは、夜間の比較的涼しい外気を建物内に取り入れ、昼間に建物躯体や室内に蓄えられた熱を排出する手法です。翌日の室内温度上昇を抑えることができるため、冷房開始時や日中の冷房負荷を削減できます。特に昼夜の温度差が大きい時期や地域で効果を発揮しやすい技術です。
(3) 放射空調は、温度ムラによる不快感が起こりにくい。
適切です。放射空調は、天井、床、壁などの表面からの放射熱を利用して人体との熱交換を行う空調方式です。一般的な吹出し空調のように強い気流で室内空気を直接冷暖房する方式と比べて、風による不快感や局所的な温度ムラが生じにくい特徴があります。室内の表面温度を安定させることで、体感温度を快適に保ちやすい点も重要です。
(4) BCPとは、設備の経年劣化に対する保全計画のことである。
不適切です。BCPとは、Business Continuity Planの略で、日本語では事業継続計画といいます。地震、火災、感染症、大規模停電、水害などの非常事態が発生した場合でも、重要な業務を継続し、または早期に復旧するための計画です。設備の経年劣化に対する保全計画は、維持保全計画や長期修繕計画などに近い考え方です。BCPは単なる設備更新計画ではなく、災害時や緊急時に組織や建物機能をどう守るかという危機管理の計画である点を押さえる必要があります。
(5) ファシリティマネージメントは、コストと品質の最適化バランスを目的としている。
適切です。ファシリティマネージメントは、建物、設備、土地、什器、執務環境などの施設資産を、経営的な視点から総合的に管理する考え方です。単にコストを下げることだけが目的ではなく、施設の品質、快適性、安全性、機能性、生産性などとのバランスを取りながら、最適な状態で運用することを目指します。建築物管理では、コスト削減と品質確保の両立が重要な考え方になります。
この問題で覚えるポイント
クールピットトレンチシステムは、地中温度が外気温より安定している性質を利用し、外気を予冷または予熱して空調負荷を減らす省エネルギー手法です。ナイトパージは、夜間の涼しい外気を利用して建物内や躯体にたまった熱を排出し、翌日の冷房負荷を下げる方法です。放射空調は、空気の温度だけでなく床、壁、天井などの表面温度を利用して快適性を高める方式で、気流感や温度ムラによる不快感が起こりにくい特徴があります。BCPは事業継続計画であり、災害や事故などの非常時に重要業務を止めない、または早期に復旧するための計画です。設備の劣化に備える計画は、維持保全計画や長期修繕計画として整理します。ファシリティマネージメントは、施設を経営資源としてとらえ、コスト、品質、安全性、快適性、機能性を総合的に最適化する考え方です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、BCPという管理系の用語を、設備保全や長期修繕の用語と混同させる点にあります。BCPは建物や設備に関係する場面でも使われますが、本質は経年劣化への対応ではなく、災害や事故などの緊急時に事業を継続するための計画です。建築物管理では、保全、修繕、更新、危機管理、事業継続といった用語が似た文脈で登場するため、何を目的とした計画なのかを見分けることが大切です。また、省エネルギー空調技術では、地中熱を利用するのか、夜間外気を利用するのか、放射熱を利用するのかという違いが問われやすいです。用語の印象だけで判断せず、仕組みと目的を結び付けて覚えると、同じテーマの問題にも対応しやすくなります。