出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物の環境衛生第40問
問題
電離放射線の健康影響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 脱毛は、放射線の早期影響の一つである。
(2) 電離放射線により発生する代表的な悪性腫瘍として、白血病がある。
(3) 急性放射線熱傷は、通常の熱傷に比べて初期には痛みがない。
(4) 妊娠可能な婦人へのX線の骨盤照射は、月経開始後10日以内に行う。
(5) 微量な線量であっても影響が発生する可能性があることを、確定的影響と呼ぶ。
ビル管過去問|電離放射線の健康影響を解説
この問題では、電離放射線による健康影響について、早期影響、晩発影響、確定的影響、確率的影響の違いが問われています。不適切な選択肢は(5)です。微量な線量でも発生する可能性がある影響は、確定的影響ではなく確率的影響です。

(1) 脱毛は、放射線の早期影響の一つである。
適切です。放射線を比較的多量に受けた場合、皮膚や毛根など細胞分裂が盛んな組織に障害が起こり、脱毛が生じることがあります。放射線の影響には、被ばく後比較的早い時期に現れる早期影響と、長い期間を経て現れる晩発影響があります。脱毛、皮膚障害、悪心、嘔吐、造血機能の低下などは、早期影響として整理しておくと理解しやすいです。
(2) 電離放射線により発生する代表的な悪性腫瘍として、白血病がある。
適切です。電離放射線は細胞のDNAに損傷を与えることがあり、その損傷が修復されずに残ると、将来的にがんの発生につながることがあります。放射線による悪性腫瘍としては、白血病が代表的です。白血病などの発がんは、被ばく後すぐに現れるものではなく、一定の潜伏期間を経て発生する晩発影響に分類されます。
(3) 急性放射線熱傷は、通常の熱傷に比べて初期には痛みがない。
適切です。急性放射線熱傷は、熱によるやけどとは異なり、放射線によって皮膚や深部組織の細胞が障害されることで起こります。通常の熱傷では受傷直後から痛みを感じやすいのに対し、放射線熱傷では初期には痛みが目立たず、時間が経ってから皮膚の発赤、水疱、潰瘍などが現れることがあります。日常的な「やけど」の感覚とは異なる点に注意が必要です。
(4) 妊娠可能な婦人へのX線の骨盤照射は、月経開始後10日以内に行う。
適切です。妊娠している可能性がある時期に骨盤部へX線照射を行うと、胎児への影響が問題になることがあります。そのため、妊娠可能な女性に対する骨盤部のX線検査では、妊娠の可能性が低い月経開始後10日以内に行うことが望ましいとされています。これは、胎児への不要な被ばくを避けるための考え方です。
(5) 微量な線量であっても影響が発生する可能性があることを、確定的影響と呼ぶ。
不適切です。微量な線量であっても影響が発生する可能性があるものは、確定的影響ではなく確率的影響です。確率的影響とは、発がんや遺伝的影響のように、線量が増えるほど発生確率が高くなる影響をいいます。一方、確定的影響は、ある線量を超えると症状が現れ、線量が大きいほど症状が重くなる影響です。脱毛、皮膚障害、白内障、不妊などが確定的影響の例です。
この問題で覚えるポイント
電離放射線の健康影響では、確定的影響と確率的影響の区別が特に重要です。確定的影響は、しきい値があり、一定以上の線量を受けると発生し、線量が大きいほど症状が重くなります。代表例は、脱毛、皮膚障害、白内障、不妊、造血機能障害などです。確率的影響は、しきい値がないと考えられ、線量が増えるほど発生確率が高くなります。代表例は、がんや遺伝的影響です。早期影響は被ばく後比較的早く現れる影響で、脱毛や皮膚障害などがあります。晩発影響は長い期間を経て現れる影響で、白血病などの悪性腫瘍が該当します。妊娠可能な女性への骨盤部X線照射では、胎児への影響を避けるため、月経開始後10日以内という考え方も押さえておきましょう。
ひっかけポイント
この問題の大きなひっかけは、確定的影響と確率的影響の用語の混同です。「微量でも可能性がある」という表現を見ると、何となく重大な影響を表しているように感じますが、これは確率的影響の説明です。確定的影響は「必ず起こる」という意味ではなく、「一定以上の線量で起こり、重症度が線量に依存する影響」と理解することが大切です。また、脱毛や熱傷のように見た目で分かる障害は確定的影響、白血病のようながんは確率的影響と整理すると、正誤判断がしやすくなります。日常語の「確定」という響きに引っ張られず、しきい値の有無で判断するのがこのテーマの再現性のある解き方です。