出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物の環境衛生第28問
問題
ヒトの発がんに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) ヒトのがんの3分の2以上は、食事や喫煙等の生活環境に関わる要因が原因とされる。
(2) 日光を浴びることが、発がんの原因となることがある。
(3) 細胞の増殖を促進する物質は、イニシエータである。
(4) 発がん促進因子を減らし、抑制因子を増やすことにより、発がんリスクを低下させることができる。
(5) 建築物の空気中に存在しうる発がん物質からの曝露を抑えることは、がんの一次予防となる。
ビル管過去問|発がん要因を解説
この問題では、ヒトの発がんに関わる生活環境要因、紫外線、発がんの段階、建築物環境中の発がん物質への曝露対策が問われています。不適切な選択肢は(3)です。発がんでは、遺伝子に変化を起こすイニシエータと、変化した細胞の増殖を促すプロモータを区別して覚えることが重要です。

(1) ヒトのがんの3分の2以上は、食事や喫煙等の生活環境に関わる要因が原因とされる。
適切です。ヒトのがんは、遺伝的要因だけでなく、喫煙、食生活、飲酒、感染、紫外線、職業性曝露など、生活環境に関わる要因が大きく関係します。特に喫煙や食事は、がん予防の分野で重要な危険因子として扱われます。ビル管試験では、がんは完全に避けられないものというより、環境管理や生活習慣の改善によってリスクを下げられる疾病として理解することが大切です。
(2) 日光を浴びることが、発がんの原因となることがある。
適切です。日光には紫外線が含まれており、紫外線は皮膚の細胞のDNAを傷つけることがあります。その結果、皮膚がんなどの発生リスクを高めることがあります。日光は健康に必要な面もありますが、過度な紫外線曝露は発がん要因になり得るため、この記述は正しいです。
(3) 細胞の増殖を促進する物質は、イニシエータである。
不適切です。細胞の増殖を促進する物質は、イニシエータではなくプロモータです。イニシエータは、細胞の遺伝子に変化を起こし、発がんのきっかけを作る物質を指します。一方、プロモータは、すでに変化を受けた細胞の増殖を促進し、がん化を進める因子です。この問題では、イニシエータとプロモータの役割を逆にしている点が誤りです。
(4) 発がん促進因子を減らし、抑制因子を増やすことにより、発がんリスクを低下させることができる。
適切です。発がんリスクは、危険因子を減らし、防御的に働く要因を増やすことで低下させることができます。たとえば、喫煙を避ける、過度な飲酒を控える、バランスのよい食事をとる、適切な換気や有害物質の管理を行うことは、発がんリスクの低減につながります。発がんは複数の要因が重なって起こるため、促進因子を減らす考え方が重要です。
(5) 建築物の空気中に存在しうる発がん物質からの曝露を抑えることは、がんの一次予防となる。
適切です。一次予防とは、病気が発生する前に原因や危険因子を取り除き、発症を防ぐことです。建築物の空気中には、アスベスト、ホルムアルデヒド、たばこ煙、ラドンなど、条件によって発がんに関係する物質が存在しうるため、換気、発生源対策、清掃、建材管理などにより曝露を抑えることは、がんの一次予防に該当します。
この問題で覚えるポイント
発がん要因では、生活環境要因が大きく関与することを押さえることが重要です。喫煙、食事、飲酒、紫外線、感染、有害化学物質への曝露などは、がんの発生リスクに関わります。発がんの過程では、遺伝子に変化を起こす因子がイニシエータであり、変化した細胞の増殖を促進する因子がプロモータです。一次予防とは、病気になる前に原因を取り除く対策であり、建築物衛生では空気中の有害物質への曝露を減らすことがこれに当たります。発がん物質を完全に暗記するだけでなく、曝露を減らすことが予防につながるという流れで理解すると、関連問題にも対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、イニシエータとプロモータの混同です。どちらも発がんに関係するため、言葉だけを見ると正しく感じやすいですが、役割は明確に異なります。イニシエータは発がんのきっかけとなる遺伝子変化を起こす因子であり、プロモータはその後の細胞増殖を促す因子です。「細胞の増殖を促進する」という表現が出たら、イニシエータではなくプロモータを思い出すことが大切です。また、日光や建築物内空気のように日常的なものでも、条件によって発がんリスクに関係する点も見落としやすいポイントです。