出典:第一種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働生理第44問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
(2) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(3) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5) 不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
第1種衛生管理者|体温調節中枢とホメオスタシスの仕組みを解説
体温調節では、体温を一定範囲に保つ中枢がどこにあるか、暑熱時と寒冷時に身体がどのように反応するかを正確に押さえることが大切です。答えは(1)です。体温調節中枢は間脳の視床下部にあり、発汗、皮膚血管の拡張や収縮、筋肉のふるえなどを調整して体温を保っています。

(1) 体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
適切です。体温調節中枢は、間脳にある視床下部に存在します。視床下部は、自律神経系や内分泌系を通じて、体温、血圧、水分量、食欲、睡眠など、生命維持に関わる重要な調整を行う部位です。体温が上がり過ぎると発汗を促し、皮膚血管を拡張させて熱を逃がします。反対に体温が下がり過ぎると、皮膚血管を収縮させて熱の放散を抑え、筋肉をふるえさせて熱を産生します。
(2) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
不適切です。外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする仕組みは、同調性ではなく恒常性、またはホメオスタシスといいます。体温、血糖値、血液中の水分量、血圧などは、一定の範囲に保たれるように調整されています。また、この調整は筋肉と神経系だけで行われるのではなく、自律神経系、内分泌系、循環器系、呼吸器系、腎臓などが関わります。用語と調整機構の両方が誤っています。
(3) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
不適切です。寒冷な環境では、皮膚の血管は拡張ではなく収縮します。皮膚血管が収縮すると、皮膚表面へ流れる血液量が減り、身体の熱が外へ逃げにくくなります。寒いと手足が冷たく感じるのは、末梢の血管が収縮し、皮膚表面の血流が減るためです。皮膚血管が拡張して熱を逃がすのは、主に暑熱環境や体温上昇時の反応です。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
不適切です。汗が蒸発すると気化熱によって体表面から熱が奪われ、体温低下に役立ちます。しかし、10gの汗の蒸発で体重70kgの人の体温が約1℃下がるというのは大き過ぎます。体温を1℃下げるには、身体全体からかなり大きな熱量を奪う必要があります。汗10gの蒸発で奪われる熱量は限られており、体温を約1℃下げるほどではありません。試験では、汗の蒸発は放熱に有効だが、少量の汗で大きく体温が下がるわけではないと理解しておくことが大切です。
(5) 不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
不適切です。不感蒸泄とは、本人が自覚しないうちに、皮膚や呼吸器から水分が蒸発して失われることをいいます。発汗のように汗として認識できる水分喪失とは区別されます。たとえば、汗をかいている感覚がなくても、皮膚表面や呼気から水分は常に失われています。このような目に見えにくい水分の喪失が不感蒸泄です。
この問題で覚えるポイント
体温調節中枢は間脳の視床下部にあります。視床下部は自律神経系や内分泌系と関係し、体温を一定に保つための司令塔として働きます。外部環境が変化しても体内の状態を一定に保つ仕組みは恒常性、またはホメオスタシスです。暑いときは発汗と皮膚血管の拡張により熱を逃がし、寒いときは皮膚血管の収縮と筋肉のふるえにより熱の放散を抑え、熱産生を増やします。汗の蒸発は気化熱による放熱に有効ですが、少量の汗で体温が大きく下がるわけではありません。不感蒸泄は発汗ではなく、皮膚や呼吸によって自覚なく水分が失われる現象です。
ひっかけポイント
このテーマでは、体温調節中枢の場所、恒常性という用語、暑熱時と寒冷時の血管反応、不感蒸泄の意味が狙われやすいです。特に、寒いときに皮膚血管が拡張するという表現は、血流を増やして温めるように感じられるため誤答しやすいですが、実際には熱を逃がさないために血管は収縮します。また、不感蒸泄を発汗と混同するのも典型的なひっかけです。汗として見える水分喪失が発汗であり、自覚しにくい皮膚や呼吸からの水分喪失が不感蒸泄です。恒常性を同調性など似た印象の言葉に置き換えるパターンにも注意が必要です。
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