出典:第一種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働生理第43問
問題
ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
(2) ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
(3) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
(4) 職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
(5) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
第1種衛生管理者|ストレス反応とストレッサーによる健康障害を解説
ストレスでは、外部からの刺激であるストレッサーに対して、自律神経系や内分泌系が反応し、心身にさまざまな変化が起こります。答えは(1)です。ストレッサーは常に心身の活動を抑圧するわけではなく、交感神経やホルモンの働きによって心拍数や血圧を上げるなど、活動を高める方向に働くこともあります。

(1) 外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
不適切です。ストレッサーとは、寒冷、暑熱、騒音、人間関係、仕事上の変化など、心身に負担を与える外部からの刺激をいいます。ストレッサーを受けると、自律神経系、特に交感神経系が働き、心拍数の増加、血圧上昇、発汗、筋緊張などが起こります。また、内分泌系では副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質からコルチゾールなどが分泌され、身体を刺激に対応できる状態にします。つまり、ストレス反応は心身の活動を一律に抑えるものではなく、むしろ状況に対応するため活動を高める反応も含みます。「形態や程度にかかわらず」「抑圧する」と断定している点が誤りです。
(2) ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
適切です。ストレスを受けると、交感神経系と内分泌系が活性化します。副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌され、心拍数の増加、血圧上昇、血糖上昇などを引き起こします。また、副腎皮質から分泌されるコルチゾールなどの副腎皮質ホルモンも、血糖の維持や代謝の調節に関与します。これらは身体がストレスに対応するための重要な反応です。
(3) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
適切です。ストレスの原因は、必ずしも不快な出来事だけではありません。昇進のように一見よい出来事であっても、責任の増加、人間関係の変化、仕事量の増加などにより、心理的負担になることがあります。転勤や配置替えも、職場環境、通勤、業務内容、人間関係が変化するため、ストレッサーとなります。試験では、よい出来事でもストレスの原因になり得る点がよく問われます。
(4) 職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
適切です。ストレッサーには心理的なものだけでなく、物理的・化学的な環境要因も含まれます。騒音は集中力の低下や不快感を引き起こし、暑すぎる・寒すぎる環境や高湿度は身体的負担になります。悪臭も不快感や吐き気、集中力低下につながることがあります。このように、職場環境そのものがストレスの原因となることがあります。
(5) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
適切です。長期間にわたる強いストレスは、自律神経系や内分泌系の働きを乱し、身体疾患の発症や悪化に関係することがあります。交感神経の緊張が続くと血圧が上がりやすくなり、高血圧症につながることがあります。また、心臓への負担が増えることで狭心症の誘因となることもあります。さらに、胃や十二指腸の粘膜防御機能の低下などにより、十二指腸潰瘍などの消化器疾患が生じることもあります。
この問題で覚えるポイント
ストレッサーとは、心身に負担を与える外部からの刺激のことです。ストレッサーには、騒音、暑熱、寒冷、湿度、悪臭などの物理的・環境的要因、昇進、転勤、配置替え、人間関係などの心理的・社会的要因があります。ストレス反応では、自律神経系と内分泌系が重要です。交感神経が活発になると、心拍数増加、血圧上昇、発汗、筋緊張などが起こります。内分泌系では、副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌され、副腎皮質からはコルチゾールなどの副腎皮質ホルモンが分泌されます。ストレスは一時的には身体を活動しやすい状態にしますが、長期間続くと、高血圧症、狭心症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの心身症や身体疾患につながることがあります。試験では、ストレス反応は単に心身を弱らせるものではなく、刺激に適応するための反応でもあると理解しておくことが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「ストレスは悪いものだから、心身の活動を抑えるはずだ」と考えさせる点にあります。日常感覚では、ストレスという言葉から疲労、落ち込み、意欲低下などを連想しやすいですが、生理学的にはストレス反応には交感神経の活性化やホルモン分泌による活動亢進も含まれます。また、「その形態や程度にかかわらず」という断定表現も危険です。衛生管理者試験では、常に、必ず、すべて、かかわらず、といった表現が出た場合、例外がないかを確認することが重要です。ストレスは心身を抑圧するだけではなく、身体を緊張・興奮させて刺激に対応させる反応でもあるため、この点を押さえると同じテーマの問題でも正誤判断がしやすくなります。
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