出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)4月公表問題|労働生理第39問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が収縮して血流量が減って、熱の放散が減少する。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3) 体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性(ホメオスタシス)という。
(4) 計算上、100gの水分が体重70kgの人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温が約1℃下がる。
(5) 熱の放散は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発には、発汗と不感蒸泄(せつ)によるものがある。
第1種衛生管理者|体温調節とホメオスタシスの仕組みを解説
体温調節では、暑いときは皮膚血管の拡張と発汗による蒸発で熱を逃がし、寒いときは皮膚血管の収縮で熱の放散を抑えます。答えは(2)です。暑熱環境で増えるのは主に皮膚血流であり、内臓の血流量増加や代謝活動の亢進によって熱の放散が促進されるわけではありません。

(1) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が収縮して血流量が減って、熱の放散が減少する。
適切です。寒冷環境では、体温を維持するために皮膚の血管が収縮します。皮膚に流れる血液量が減ると、体表面から外気へ逃げる熱が少なくなります。血液は体内の熱を運ぶ役割があるため、皮膚血流を減らすことは、熱を体の中心部に保つための重要な反応です。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
不適切です。暑熱環境では、熱を外へ逃がすために皮膚の血管が拡張し、皮膚血流量が増加します。また、発汗による蒸発で気化熱が奪われ、体温上昇を防ぎます。内臓の血流量が増加し、代謝活動が亢進すると、むしろ体内で熱が多く産生される方向になります。暑いときの体温調節は、熱を作ることではなく、熱を逃がすことが中心です。
(3) 体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性(ホメオスタシス)という。
適切です。ホメオスタシスとは、外部環境が変化しても、体内環境を一定の範囲に保とうとする働きです。体温、血糖値、血圧、血液中の水分量やpHなどは、この恒常性によって調節されています。体温調節では、暑ければ熱を逃がし、寒ければ熱を逃がさないようにして、体温を一定に保ちます。
(4) 計算上、100gの水分が体重70kgの人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温が約1℃下がる。
適切です。汗などの水分が体表面から蒸発するときには、気化熱として体の熱が奪われます。水1gが蒸発すると約0.58kcalの熱が奪われるため、100gでは約58kcalの熱が失われます。体重70kgの人では、計算上この熱量によって体温が約1℃低下すると考えられます。発汗は単に汗を出すことではなく、蒸発して初めて体温を下げる効果が大きくなります。
(5) 熱の放散は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発には、発汗と不感蒸泄(せつ)によるものがある。
適切です。人体からの熱の放散には、ふく射、伝導、対流、蒸発などがあります。ふく射は周囲へ熱を放つこと、伝導は接触している物へ熱が移ること、蒸発は汗や水分が蒸発するときに熱が奪われることです。蒸発には、汗として出た水分の蒸発だけでなく、皮膚や呼吸から自覚しにくく失われる不感蒸泄も含まれます。
この問題で覚えるポイント
体温調節では、暑熱環境では皮膚血管が拡張し、皮膚血流量が増加し、発汗と蒸発によって熱を逃がします。寒冷環境では皮膚血管が収縮し、皮膚血流量が減少し、熱の放散を抑えます。ホメオスタシスは、外部環境が変わっても体内環境を一定に保とうとする性質で、体温調節はその代表例です。熱の放散には、ふく射、伝導、対流、蒸発があり、試験では特に蒸発による気化熱の理解が重要です。汗は出るだけではなく、蒸発することで体温を下げます。100gの水分が蒸発すると、体重70kgの人では計算上、体温が約1℃下がるという数値も押さえておくと正誤判断に役立ちます。
ひっかけポイント
暑い環境では身体の働きが活発になるという日常的なイメージから、代謝活動が亢進して熱の放散が促進されると考えてしまいやすい点が落とし穴です。実際には、代謝活動が亢進すると熱産生が増えるため、暑熱環境で体温を下げる説明としては逆方向です。試験では、「血流量が増加する」という表現だけを見て正しいと判断せず、どこの血流量が増加するのかを確認する必要があります。暑いときに増えるのは主に皮膚血流であり、内臓血流や代謝亢進ではありません。部分的に正しそうな語句が含まれていても、体温調節の方向性と合っているかを確認することが大切です。
