【第一種衛生管理者過去問】2025年10月公表問題|問16|有機溶剤中毒の症状と人体への健康影響|労働衛生(有害業務)を解説

出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第16問

問題

有機溶剤の人体に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 脂溶性があり、脂肪の多い脳などに入りやすい。

(2) 呼吸器の症状には、咳(せき)、上気道の炎症などがある。

(3) 低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、めまい、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4) 皮膚や粘膜に対する症状には、黒皮症、鼻中隔穿(せん)孔などがある。

(5) 肝機能障害や腎機能障害を起こすものがある。

第1種衛生管理者|有機溶剤中毒の症状と人体への健康影響を解説

有機溶剤は脂溶性が高く、吸入や皮膚から体内に入り、神経系、呼吸器、皮膚、肝臓、腎臓などに影響を及ぼすことがあります。正解は(4)です。有機溶剤による皮膚や粘膜への影響としては、皮膚の脱脂による皮膚炎、粘膜刺激、上気道の炎症などが代表的です。黒皮症や鼻中隔穿孔は、有機溶剤中毒の代表的症状ではなく、砒素やクロムなど他の有害物質による健康障害として整理します。

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(1) 脂溶性があり、脂肪の多い脳などに入りやすい。

適切です。有機溶剤は脂溶性が高いものが多く、脂肪を多く含む組織に入りやすい性質があります。脳や神経組織には脂質が多いため、有機溶剤は中枢神経系に影響を与えやすくなります。その結果、急性ばく露では頭痛、めまい、酩酊感、意識障害などが起こることがあります。有機溶剤中毒で神経症状が重要になるのは、この脂溶性という性質と深く関係しています。

(2) 呼吸器の症状には、咳(せき)、上気道の炎症などがある。

適切です。有機溶剤の蒸気を吸入すると、鼻、のど、気管などの粘膜が刺激され、咳や上気道の炎症がみられることがあります。有機溶剤は揮発しやすく、作業場の空気中に蒸気として存在しやすいため、吸入ばく露が主要な経路になります。特に換気が不十分な場所では、有機溶剤蒸気の濃度が高くなり、呼吸器症状や中枢神経症状を起こしやすくなります。

(3) 低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、めまい、不眠などの不定愁訴がみられる。

適切です。有機溶剤に低濃度で長期間繰り返しばく露されると、慢性中毒として、めまい、頭痛、倦怠感、不眠、集中力低下などの不定愁訴がみられることがあります。不定愁訴とは、検査でははっきりした異常が見つかりにくくても、本人がさまざまな体調不良を訴える状態をいいます。有機溶剤は神経系に影響を及ぼしやすいため、このような慢性的な症状が問題になります。

(4) 皮膚や粘膜に対する症状には、黒皮症、鼻中隔穿(せん)孔などがある。

不適切です。有機溶剤による皮膚や粘膜への影響としては、皮膚の脱脂作用による皮膚炎、乾燥、ひび割れ、かぶれ、目や鼻、のどの刺激症状などが代表的です。有機溶剤は皮膚の脂質を溶かしやすいため、皮膚のバリア機能を低下させます。しかし、黒皮症や鼻中隔穿孔は、有機溶剤中毒の代表的な症状ではありません。黒皮症は砒素中毒などでみられる皮膚障害として、鼻中隔穿孔はクロム化合物などによる障害として整理されます。この選択肢は、他の有害物質による症状を有機溶剤の症状としているため誤りです。

(5) 肝機能障害や腎機能障害を起こすものがある。

適切です。有機溶剤の中には、肝臓や腎臓に障害を起こすものがあります。肝臓は体内に入った化学物質を代謝する重要な臓器であり、有機溶剤の種類によっては肝細胞に影響を与え、肝機能障害を起こすことがあります。また、代謝物の排泄などに関係する腎臓にも負担がかかり、腎機能障害が問題になる場合があります。有機溶剤は神経症状だけでなく、臓器障害も起こし得る点を押さえておくことが大切です。

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この問題で覚えるポイント

有機溶剤は脂溶性が高く、脂肪の多い脳や神経組織に入りやすいため、中枢神経症状を起こしやすい物質です。急性ばく露では、頭痛、めまい、酩酊感、吐き気、意識障害などが問題になります。低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、めまい、不眠、倦怠感、集中力低下などの不定愁訴がみられることがあります。呼吸器や粘膜への刺激により、咳、上気道の炎症、目や鼻、のどの刺激症状がみられることもあります。皮膚に付着すると、脱脂作用によって皮膚炎、乾燥、ひび割れなどが起こりやすくなります。有機溶剤の中には、肝機能障害や腎機能障害を起こすものもあります。黒皮症は砒素中毒、鼻中隔穿孔はクロム化合物などで問われやすく、有機溶剤の代表症状としては整理しません。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、皮膚や粘膜の症状という大きな分類だけを見ると、黒皮症や鼻中隔穿孔も正しそうに見える点です。有機溶剤も皮膚や粘膜を刺激するため、皮膚障害や粘膜障害があること自体は正しいです。しかし、代表的なのは皮膚の脱脂による皮膚炎や乾燥、目や鼻、のどの刺激症状です。黒皮症は砒素、鼻中隔穿孔はクロム化合物のように、別の有害物質の特徴的症状として覚える必要があります。また、有機溶剤は「神経症状だけ」と思い込むのも危険です。脂溶性による中枢神経症状が中心ではありますが、呼吸器刺激、皮膚炎、肝機能障害、腎機能障害も起こり得ます。症状の有無ではなく、「その症状が有機溶剤に特徴的か、別の物質の代表症状ではないか」を見分けることが正答につながります。

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