出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)4月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第10問
問題
労働基準法に基づく時間外労働に関する協定を締結し、所轄労働基準監督署長への届出を行うとき、延長する労働時間が1日について2時間以内に制限されない業務は、次のうちどれか。
(1) 著しく暑熱な場所における業務
(2) ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
(3) ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における業務
(4) 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
(5) 削岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
第1種衛生管理者|時間外労働の上限規制と1日2時間制限業務を解説
労働基準法では、一定の有害業務について、時間外労働をさせる場合でも1日について2時間以内という制限があります。これは、長時間従事すると健康障害の危険が高まる業務について、労働時間そのものを抑える趣旨の規定です。答えは(3)です。ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを入れたことのあるタンク内部での業務は酸素欠乏等の危険がある業務ですが、労働基準法上の「1日2時間以内に制限される有害業務」には該当しないためです。
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(1) 著しく暑熱な場所における業務
不適切です。著しく暑熱な場所における業務は、時間外労働を延長する場合でも1日について2時間以内に制限される業務に該当します。高温環境では、体温調節機能に大きな負担がかかり、熱中症、脱水、循環器への負担などの健康障害が起こりやすくなります。そのため、通常の時間外労働の上限とは別に、有害性の高い業務として1日2時間以内という制限が設けられています。
(2) ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
不適切です。ボイラー製造等の強烈な騒音を発する場所における業務は、1日について2時間以内に制限される業務に該当します。強い騒音に長時間さらされると、騒音性難聴などの聴覚障害につながるおそれがあります。耳への影響は蓄積しやすく、いったん障害が進むと回復が難しい場合もあるため、時間外労働の延長にも特別な制限がかけられています。
(3) ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における業務
適切です。これは、延長する労働時間が1日について2時間以内に制限されない業務です。ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスを入れたことのあるタンク内部では、酸素濃度が低下して酸素欠乏症を起こす危険があります。ただし、この業務は酸素欠乏危険作業として酸素欠乏症等防止規則などで管理される性質のものであり、労働基準法上の「1日2時間以内に制限される時間外労働の対象業務」とは別の分類です。危険な業務であることと、この規定の対象になることは同じではない点が重要です。
(4) 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
不適切です。土石、獣毛等のじんあいや粉末を著しく飛散する場所における業務は、1日について2時間以内に制限される業務に該当します。粉じんを吸入すると、じん肺や呼吸器疾患などの健康障害につながるおそれがあります。特に著しく粉じんが飛散する場所では、ばく露時間が長くなるほど身体への負担が大きくなるため、時間外労働についても厳しく制限されています。
(5) 削岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
不適切です。削岩機や鋲打機などの使用により身体に著しい振動を与える業務は、1日について2時間以内に制限される業務に該当します。強い振動に長時間さらされると、手指のしびれ、血行障害、神経障害などの振動障害を生じるおそれがあります。振動工具を使う業務では、作業時間の管理が健康障害防止の重要な対策になるため、時間外労働の延長にも制限があります。
この問題で覚えるポイント
労働基準法では、一定の有害業務について、36協定を締結して届け出た場合でも、時間外労働の延長は1日2時間以内に制限されます。代表例として、著しく暑熱な場所、著しく寒冷な場所、多湿な場所、強烈な騒音を発する場所、著しく粉じんを飛散する場所、身体に著しい振動を与える業務などがあります。ポイントは、「危険な業務ならすべて1日2時間制限の対象」と考えないことです。酸素欠乏危険作業や化学物質関係の危険作業は、別の法令や規則で厳しく管理される場合がありますが、それだけで直ちに労働基準法上の1日2時間制限業務に入るとは限りません。試験では、暑熱、騒音、粉じん、振動は1日2時間制限の対象として押さえ、不活性ガスを入れたタンク内部のような酸素欠乏関係の業務は、この規定ではなく酸素欠乏症等防止規則のテーマとして整理すると判断しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「健康障害のおそれがある業務」と「労働基準法で時間外労働が1日2時間以内に制限される業務」を混同させる点にあります。不活性ガスを入れたことのあるタンク内部の業務は、たしかに酸素欠乏のおそれがあり危険です。そのため、受験者は「危険だから2時間制限の対象だろう」と判断しやすくなります。しかし、試験で問われているのは危険性の有無ではなく、労働基準法上の時間外労働制限の対象業務に該当するかどうかです。暑熱、騒音、粉じん、振動のように、ばく露時間の長さが健康障害に直結しやすい典型的な有害業務は対象になりやすい一方、酸素欠乏危険作業は別の安全衛生管理の枠組みで問われることが多いです。このように、似たように危険に見える業務でも、どの法令のどの規制を問われているかを切り分けることが、正答につながります。
