出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第16問
問題
金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) ベリリウム中毒では、接触皮膚炎、肺炎などの症状がみられる。
(2) マンガン中毒では、歩行障害、発語障害、筋緊張亢(こう)進などの症状がみられる。
(3) クロム中毒では、低分子蛋(たん)白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄(さく)などの症状がみられる。
(4) カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
(5) 金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震えなどの症状がみられる。
第1種衛生管理者|金属中毒の症状一覧と重金属による健康障害を解説
金属中毒では、原因となる金属ごとに障害されやすい臓器や代表症状が異なります。答えは(3)です。クロム中毒で重要なのは、鼻中隔穿孔、皮膚潰瘍、接触皮膚炎、肺がんなどであり、低分子蛋白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄はクロム中毒の典型症状ではありません。特に低分子蛋白尿はカドミウムによる腎障害、歯への黄色の色素沈着や視野狭窄は別の有害物質の症状として出題されやすいため、金属名と症状の組合せを整理して覚えることが大切です。
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(1) ベリリウム中毒では、接触皮膚炎、肺炎などの症状がみられる。
適切です。ベリリウムは、皮膚や呼吸器に障害を起こす金属です。皮膚に触れると接触皮膚炎を起こすことがあり、粉じんやヒュームを吸入すると肺に炎症を生じることがあります。急性では肺炎様の症状、慢性では慢性ベリリウム症として肺に肉芽腫性の病変を起こすことがあります。試験では、ベリリウムは「皮膚」と「肺」に障害が出やすい金属として押さえると判断しやすくなります。
(2) マンガン中毒では、歩行障害、発語障害、筋緊張亢(こう)進などの症状がみられる。
適切です。マンガン中毒では、中枢神経が障害され、パーキンソン病に似た症状がみられます。具体的には、歩行障害、発語障害、筋緊張亢進、手足のこわばり、動作がぎこちなくなるなどの症状です。マンガンは「神経症状」「パーキンソン症候群様症状」と結び付けて覚えると、他の金属中毒と区別しやすくなります。
(3) クロム中毒では、低分子蛋(たん)白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄(さく)などの症状がみられる。
不適切です。クロム中毒、とくに六価クロム化合物による健康障害では、鼻中隔穿孔、鼻粘膜の障害、皮膚潰瘍、接触皮膚炎、気道障害、肺がんなどが重要です。問題文にある低分子蛋白尿は、カドミウムによる腎尿細管障害でみられる代表的な所見です。また、歯への黄色の色素沈着や視野狭窄は、クロム中毒の代表症状として覚えるものではありません。クロムは「鼻中隔穿孔」「皮膚潰瘍」「肺がん」と結び付けるのが正確です。
(4) カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
適切です。カドミウムは、吸入によって上気道炎や肺炎などの呼吸器障害を起こすことがあり、慢性的なばく露では腎臓、特に腎尿細管の障害が問題になります。腎尿細管が障害されると、低分子蛋白尿などがみられます。カドミウムはイタイイタイ病の原因物質としても知られ、骨障害との関連も重要です。試験では「カドミウム=腎障害、低分子蛋白尿、骨障害」と整理しておくと対応しやすいです。
(5) 金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震えなどの症状がみられる。
適切です。金属水銀の蒸気を吸入すると、中枢神経が障害され、精神神経症状が現れます。代表的には、感情不安定、いらいら、不眠、幻覚などの精神症状や、手指の震えがみられます。水銀は形態によって症状が異なりますが、金属水銀では「精神症状」と「振戦」が重要です。有機水銀による中毒では、感覚障害、運動失調、視野狭窄などが問題になりやすいため、金属水銀と有機水銀を分けて覚えることが大切です。
この問題で覚えるポイント
金属中毒の問題では、金属名と代表症状の対応を正確に覚えることが正誤判断に直結します。ベリリウムは接触皮膚炎や肺炎などの皮膚・呼吸器障害、マンガンは歩行障害、発語障害、筋緊張亢進などのパーキンソン症候群様症状、クロムは鼻中隔穿孔、皮膚潰瘍、接触皮膚炎、肺がん、カドミウムは腎機能障害、低分子蛋白尿、骨障害、金属水銀は感情不安定、幻覚、手指の震えなどの精神神経症状として整理します。視野狭窄は有機水銀中毒で出題されやすい症状であり、金属水銀やクロムと混同しないことが重要です。低分子蛋白尿は腎尿細管障害を示す所見で、カドミウムと結び付けて覚えると安定して解けます。クロムは腎臓よりも鼻、皮膚、呼吸器、発がん性に注目する金属です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、複数の有害物質の症状を一つの選択肢に混ぜている点です。低分子蛋白尿はカドミウム、視野狭窄は有機水銀と結び付きやすい症状ですが、それらをクロム中毒の症状として並べることで、受験者の記憶を揺さぶっています。金属中毒の問題では、文章の一部に聞き覚えのある症状が含まれていると、全体を正しいと判断してしまいがちです。しかし、試験では「症状そのものを知っているか」だけでなく、「どの金属の症状なのか」を問われます。聞いたことのある症状が出てきたときほど、原因物質との組合せが正しいかを確認することが大切です。
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