出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働生理第43問
問題
肝臓の機能として、誤っているものは次のうちどれか。
(1) コレステロールを合成する。
(2) 尿素を合成する。
(3) ビリルビンを分解する。
(4) 胆汁を生成する。
(5) 血液凝固物質や血液凝固阻止物質を合成する。
第1種衛生管理者|肝臓の働きと代謝・胆汁生成の基礎知識を解説
肝臓は、栄養素の代謝、解毒、胆汁の生成、尿素の合成、血液凝固に関わる物質の合成など、多くの重要な働きを担う臓器です。答えは(3)です。ビリルビンは肝臓で分解されるのではなく、肝臓で処理されて胆汁中に排出されます。赤血球の分解により生じたビリルビンは、肝臓で抱合され、水に溶けやすい形になって胆汁として排出されるため、「分解する」という表現が誤りです。
(1) コレステロールを合成する。
適切です。肝臓はコレステロールを合成する重要な臓器です。コレステロールは悪いものとしてだけ覚えがちですが、細胞膜の材料になったり、胆汁酸やステロイドホルモンの材料になったりする、体に必要な脂質です。肝臓では糖質や脂質の代謝が行われており、その一環としてコレステロールの合成も行われます。
(2) 尿素を合成する。
適切です。肝臓では、たんぱく質の代謝によって生じる有害なアンモニアを、比較的毒性の低い尿素に変える働きがあります。アンモニアは体内に蓄積すると神経系に悪影響を及ぼすため、そのままにしておくことはできません。肝臓で尿素に変えられた後、血液によって腎臓へ運ばれ、尿中に排出されます。肝臓と腎臓の役割を混同しないことが大切です。
(3) ビリルビンを分解する。
不適切です。ビリルビンは、古くなった赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じる色素です。肝臓はビリルビンを分解するのではなく、処理して胆汁中に排出します。具体的には、肝臓でビリルビンを抱合し、水に溶けやすい形にして胆汁へ送り出します。ビリルビンの処理がうまくいかないと、血液中にビリルビンが増え、黄疸が起こることがあります。
(4) 胆汁を生成する。
適切です。肝臓は胆汁を生成します。胆汁は胆のうで作られると誤解しやすいですが、胆のうは胆汁を貯蔵し濃縮する場所であり、生成する場所ではありません。胆汁には胆汁酸などが含まれ、脂肪の消化・吸収を助けます。消化器系の問題では、肝臓は胆汁を作る、胆のうは胆汁をためる、と整理しておくと判断しやすくなります。
(5) 血液凝固物質や血液凝固阻止物質を合成する。
適切です。肝臓では、血液凝固に関わるフィブリノゲンやプロトロンビンなどの凝固因子が合成されます。また、血液が過剰に固まらないように働く凝固阻止物質も合成されます。つまり肝臓は、出血を止める働きと、血液が固まりすぎるのを防ぐ働きの両方に関係しています。肝機能が低下すると、出血しやすくなることがあります。
この問題で覚えるポイント
肝臓の機能は、代謝、解毒、胆汁生成、尿素合成、血液凝固関連物質の合成に整理すると覚えやすいです。糖質代謝では血糖の調節、脂質代謝ではコレステロールの合成、たんぱく質代謝ではアンモニアから尿素の合成を行います。胆汁は肝臓で生成され、胆のうで貯蔵・濃縮されます。ビリルビンは肝臓で分解されるのではなく、抱合されて胆汁中に排出されます。血液凝固因子の多くも肝臓で作られるため、肝機能低下は出血傾向につながります。
ひっかけポイント
この問題では、「ビリルビンを分解する」という表現がひっかけです。ビリルビンはヘモグロビンの分解産物であるため、「分解」という言葉につられて肝臓の働きとして正しいように見えます。しかし、肝臓の役割はビリルビンをさらに分解することではなく、抱合して胆汁中に排出できる形に処理することです。また、胆汁については「胆のうが作る」と誤解しやすい点も頻出です。胆汁を作るのは肝臓、ためるのは胆のう、と区別して覚えることが重要です。
