【第一種衛生管理者過去問】2022年10月公表問題|問44|脂肪の消化吸収と脂質代謝の仕組み|労働生理を解説

出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働生理第44問

問題

脂肪の分解・吸収及び脂質の代謝に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 胆汁は、アルカリ性で、消化酵素は含まないが、食物中の脂肪を乳化させ、脂肪分解の働きを助ける。

(2) 脂肪は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵(すい)アミラーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸の絨(じゅう)毛から吸収される。

(3) 肝臓は、過剰な蛋(たん)白質及び糖質を中性脂肪に変換する。

(4) コレステロールやリン脂質は、神経組織の構成成分となる。

(5) 脂質は、糖質や蛋(たん)白質に比べて多くのATPを産生することができるので、エネルギー源として優れている。

第1種衛生管理者|脂肪の消化吸収と脂質代謝の仕組みを解説

脂肪の消化吸収では、胆汁が脂肪を乳化し、膵リパーゼが脂肪を脂肪酸とグリセリンなどに分解する流れを押さえることが重要です。答えは(2)です。膵アミラーゼはでんぷんなどの糖質を分解する酵素であり、脂肪を分解する酵素ではありません。脂肪分解に関わる主な消化酵素は膵リパーゼです。

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(1) 胆汁は、アルカリ性で、消化酵素は含まないが、食物中の脂肪を乳化させ、脂肪分解の働きを助ける。

適切です。胆汁は肝臓で作られ、胆のうに一時的に蓄えられた後、十二指腸に分泌されます。胆汁自体には脂肪を直接分解する消化酵素は含まれていません。しかし、胆汁酸の働きによって脂肪を細かい粒に分散させる乳化を行います。脂肪が細かくなると、消化酵素である膵リパーゼが作用しやすくなり、脂肪の分解が進みます。胆汁は「分解する」のではなく「分解されやすい状態にする」と覚えると整理しやすいです。

(2) 脂肪は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵(すい)アミラーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸の絨(じゅう)毛から吸収される。

不適切です。脂肪を脂肪酸とグリセリンなどに分解する主な消化酵素は、膵アミラーゼではなく膵リパーゼです。膵アミラーゼは、でんぷんなどの糖質を分解する酵素です。問題文の後半にある「脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸の絨毛から吸収される」という流れは大きくは正しいため、前半の酵素名の誤りを見抜く必要があります。衛生管理者試験では、このように一部は正しいが、重要語句だけがすり替えられている選択肢がよく出ます。

(3) 肝臓は、過剰な蛋(たん)白質及び糖質を中性脂肪に変換する。

適切です。肝臓は栄養素の代謝に深く関わる臓器です。摂取した糖質や蛋白質が体内で必要量を超えると、エネルギーとしてすぐに使われなかった分は、肝臓で中性脂肪に変換され、脂肪組織などに蓄えられます。蛋白質はそのまま脂肪になるのではなく、アミノ酸からアミノ基が外され、代謝経路を経てエネルギー源や脂質の材料として利用されます。肝臓は、糖質、蛋白質、脂質の代謝の中心として働くと理解しておくとよいです。

(4) コレステロールやリン脂質は、神経組織の構成成分となる。

適切です。コレステロールやリン脂質は、細胞膜を構成する重要な脂質です。特に神経組織では、神経細胞の膜や神経線維を包む髄鞘などに脂質が多く含まれています。コレステロールは悪いものとして扱われがちですが、体内では細胞膜の成分やホルモン、胆汁酸の材料にもなる必要な物質です。試験では、コレステロールを単に有害なものと考えず、体に必要な構成成分でもあると押さえることが大切です。

(5) 脂質は、糖質や蛋(たん)白質に比べて多くのATPを産生することができるので、エネルギー源として優れている。

適切です。脂質は、糖質や蛋白質に比べて単位重量あたりのエネルギー量が大きい栄養素です。一般に、脂質は1gあたり約9kcal、糖質と蛋白質は1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。そのため、脂質は効率のよいエネルギー貯蔵物質として体内に蓄えられます。ATPは細胞が活動するために使うエネルギーの形であり、脂質は分解されることで多くのATP産生につながります。

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この問題で覚えるポイント

脂肪の消化では、胆汁は消化酵素を含まず、脂肪を乳化して膵リパーゼの働きを助けます。脂肪を分解する主な消化酵素は膵リパーゼであり、膵アミラーゼは糖質、特にでんぷんを分解する酵素です。脂肪は小腸で分解、吸収され、体内ではエネルギー源や細胞膜、神経組織の構成成分として利用されます。肝臓は糖質、蛋白質、脂質の代謝の中心であり、過剰な糖質や蛋白質を中性脂肪に変換します。脂質は1gあたり約9kcalで、糖質や蛋白質の約4kcalより大きいため、エネルギー貯蔵に適しています。コレステロールやリン脂質は細胞膜や神経組織の構成成分であり、コレステロールを単に不要な物質と考えないことも重要です。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、脂肪の分解産物や吸収の説明は正しそうに見せながら、消化酵素名だけを膵リパーゼから膵アミラーゼにすり替えている点です。アミラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼなどの酵素名は似て見えるため、どの栄養素を分解する酵素かを混同しやすいです。特に膵臓から分泌される酵素という部分だけを見ると正しいように感じますが、膵アミラーゼは糖質、膵リパーゼは脂肪という対応関係を正確に覚えておく必要があります。また、胆汁は脂肪の消化に関わりますが、消化酵素ではなく乳化を行う補助的な役割である点も頻出です。部分的に正しい文章ほど誤りを見落としやすいため、栄養素、分解酵素、分解産物をセットで確認する習慣が大切です。

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