出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの以外のもの)第22問
問題
産業医に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。ただし、産業医の選任の特例はないものとする。
(1) 常時使用する労働者数が50人以上の事業場において、厚生労働大臣の指定する者が行う産業医研修の修了者等の所定の要件を備えた医師であっても、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者は、産業医として選任することはできない。
(2) 産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、産業医の作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
(3) 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
(4) 事業者は、専属の産業医が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。
(5) 事業者が産業医に付与すべき権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれる。
第1種衛生管理者|産業医の選任要件と巡視・権限に関する法令を解説
産業医は、労働者の健康管理について専門的立場から事業者に助言や指導を行う医師です。答えは(4)です。専属の産業医が一時的に職務を行えない場合について、事業者が代理者を選任しなければならないという規定はありません。産業医は、50人以上の事業場で選任が必要であり、一定の研修修了者などの要件、職場巡視、衛生委員会への報告、必要な権限の付与などが法令上よく問われます。
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(1) 常時使用する労働者数が50人以上の事業場において、厚生労働大臣の指定する者が行う産業医研修の修了者等の所定の要件を備えた医師であっても、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者は、産業医として選任することはできない。
適切です。産業医は、医師であれば誰でも選任できるわけではなく、所定の産業医研修を修了していることなど、一定の要件を満たす必要があります。ただし、要件を満たす医師であっても、その事業場で事業の実施を統括管理する者は、産業医として選任することはできません。産業医には、労働者の健康管理について事業者に対して必要な勧告や助言を行う役割があります。事業を統括管理する立場の者が産業医を兼ねると、経営管理上の判断と労働者の健康保護の判断が衝突するおそれがあります。そのため、産業医の独立性や中立性を確保する趣旨から、このような者を産業医に選任することは認められていません。
(2) 産業医が、事業者から、毎月1回以上、所定の情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、産業医の作業場等の巡視の頻度を、毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができる。
適切です。産業医は、原則として少なくとも毎月1回、作業場等を巡視し、作業方法や衛生状態に有害のおそれがあるときは、労働者の健康障害を防止するために必要な措置を講じるよう事業者に勧告します。ただし、一定の条件を満たす場合には、巡視の頻度を毎月1回以上から2か月に1回以上にすることができます。その条件とは、産業医が事業者から毎月1回以上、労働者の健康管理に必要な所定の情報の提供を受けていること、そして事業者の同意があることです。単に忙しいから巡視を減らせるのではなく、情報提供と同意という条件が必要である点が重要です。
(3) 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
適切です。産業医が辞任した場合や、事業者が産業医を解任した場合には、事業者は遅滞なく、その事実と理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければなりません。これは、産業医が労働者の健康管理に関する重要な役割を担っているためです。特に解任の場合、産業医が事業者に対して必要な勧告をしたことなどを理由に不当に解任されると、産業医の独立性が損なわれます。そのため、辞任や解任の理由を委員会に報告させることで、透明性を確保する仕組みになっています。
(4) 事業者は、専属の産業医が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければならない。
不適切です。これが誤りです。専属の産業医が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって一時的に職務を行うことができない場合に、事業者が代理者を選任しなければならないという法令上の規定はありません。衛生管理者については、旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときに代理者を選任しなければならないという規定があります。この選択肢は、衛生管理者の代理者選任に関する規定を、産業医に当てはめたひっかけです。産業医と衛生管理者はどちらも衛生管理体制に関わるため混同しやすいですが、代理者選任義務が問われた場合は、どの役職についての規定かを慎重に確認することが大切です。
(5) 事業者が産業医に付与すべき権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれる。
適切です。事業者は、産業医がその職務を適切に行えるよう、必要な権限を付与しなければなりません。その権限には、労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集することが含まれます。産業医は、健康診断結果、長時間労働の状況、作業環境、労働者本人からの健康に関する情報などを踏まえて、就業上の措置や健康障害防止について専門的に判断します。必要な情報を得られなければ、産業医は適切な助言や勧告を行うことができません。そのため、情報収集の権限は、産業医の実効性を確保するために重要なものです。
この問題で覚えるポイント
産業医は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が必要です。産業医となる医師には、産業医研修の修了など所定の要件が求められますが、事業の実施を統括管理する者は、要件を満たす医師であっても産業医に選任できません。産業医の職場巡視は原則として毎月1回以上ですが、事業者から毎月1回以上所定の情報提供を受けており、事業者の同意がある場合には、2か月に1回以上にすることができます。産業医が辞任した場合や解任された場合は、事業者が遅滞なく、その旨と理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告する必要があります。産業医には、労働者の健康管理等に必要な情報を労働者から収集する権限など、職務遂行に必要な権限を付与しなければなりません。衛生管理者には、旅行、疾病、事故などで職務を行えない場合の代理者選任義務がありますが、これを産業医の規定と混同しないことが重要です。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、衛生管理者に関する代理者選任の規定を、産業医にも当てはまるように見せている点です。産業医も衛生管理者も、労働安全衛生法上の衛生管理体制に登場するため、役割や義務をまとめて覚えていると混同しやすくなります。特に「旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由」という表現は、衛生管理者の代理者選任で見覚えのある文言であるため、正しい文章に見えやすいです。また、産業医の巡視頻度については、原則の毎月1回以上だけを覚えていると、2か月に1回以上という記述を誤りと判断しやすくなります。頻度の変更には、毎月1回以上の情報提供と事業者の同意という条件があるため、数値だけでなく条件までセットで覚える必要があります。産業医の問題では、選任要件、巡視頻度、辞任や解任時の報告、付与すべき権限、衛生管理者との違いを分けて整理すると、同じテーマの問題にも対応しやすくなります。
