出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|給水および排水の管理第120問
問題
給湯設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 強制循環方式においては、湯を均等に循環させるため、リバースリターン方式とする。
(2) 密閉式膨張水槽を設ける場合は、逃し弁を設ける。
(3) 給湯循環ポンプの循環流量は、循環配管系などからの熱損失及び加熱装置における給湯温度と返湯温度の差より算定する。
(4) 自動空気抜き弁は、配管中の湯に含まれている溶存空気を抜くために、圧力の低いところに設置する。
(5) 給湯循環ポンブは、背圧に耐えることのできるものを選定する。
ビル管過去問|給湯設備を解説
この問題は、給湯設備における循環方式、膨張対策、循環流量の考え方、空気抜き弁、給湯循環ポンプの選定について問う問題です。給湯設備では、湯を安定して供給するだけでなく、温度低下、配管内の空気、熱膨張、ポンプの耐圧性などを適切に管理する必要があります。不適切な選択肢は(1)です。強制循環方式で湯を均等に循環させるためには、一般にリバースリターン方式ではなく、流量調整弁などによって各系統の流量を調整します。

(1) 強制循環方式においては、湯を均等に循環させるため、リバースリターン方式とする。
不適切です。リバースリターン方式は、各系統の配管抵抗をできるだけ均等にするための配管方式で、冷温水配管などで用いられる考え方です。しかし、給湯設備の強制循環方式では、湯を均等に循環させるために、一般には返湯管に流量調整弁などを設けて循環流量を調整します。給湯配管では使用箇所や配管長さによって熱損失が異なるため、単にリバースリターン方式とするだけで均等な循環が確保できるとは限りません。したがって、この記述は最も不適当です。
(2) 密閉式膨張水槽を設ける場合は、逃し弁を設ける。
適切です。給湯設備では、水を加熱すると体積が膨張し、密閉された配管内の圧力が上昇します。密閉式膨張水槽は、この膨張分を吸収して圧力上昇を抑えるための設備です。ただし、万一圧力が異常に上昇した場合には、設備や配管の破損を防ぐ必要があります。そのため、密閉式膨張水槽を設ける場合でも、安全対策として逃し弁を設けます。
(3) 給湯循環ポンプの循環流量は、循環配管系などからの熱損失及び加熱装置における給湯温度と返湯温度の差より算定する。
適切です。給湯循環ポンプは、配管内の湯が冷めすぎないように湯を循環させるためのポンプです。循環流量は、配管や機器から失われる熱量を補うために必要な湯量として考えます。具体的には、循環配管系などからの熱損失が大きいほど、多くの湯を循環させる必要があります。また、給湯温度と返湯温度の差が小さいほど、同じ熱損失を補うために必要な循環流量は大きくなります。この考え方は、給湯循環ポンプの容量選定で重要です。
(4) 自動空気抜き弁は、配管中の湯に含まれている溶存空気を抜くために、圧力の低いところに設置する。
適切です。水には空気が溶け込んでおり、加熱されると溶存空気が分離して配管内に空気だまりをつくることがあります。空気だまりが生じると、循環不良、騒音、腐食、ポンプの性能低下などの原因になります。自動空気抜き弁は、この空気を自動的に排出するための弁です。空気は圧力の低い箇所や高い位置に集まりやすいため、自動空気抜き弁は空気が抜けやすい位置に設置します。
(5) 給湯循環ポンブは、背圧に耐えることのできるものを選定する。
適切です。給湯循環ポンプは、給湯配管内の圧力を受けながら運転するため、配管系の背圧に耐えられる構造である必要があります。給湯設備では、温度上昇による圧力変動や配管内圧が生じるため、ポンプには耐熱性だけでなく耐圧性も求められます。背圧に耐えられないポンプを選定すると、漏水や故障、運転不良につながるおそれがあります。
この問題で覚えるポイント
給湯設備では、湯を必要な温度で安定して供給するために、循環方式、膨張対策、空気抜き、ポンプ選定を一体で理解することが大切です。強制循環方式では、配管内の湯を循環させることで、末端の給湯栓でもすぐに湯が出るようにします。循環流量は、配管や機器から失われる熱量と、給湯温度と返湯温度の差によって決まります。熱損失が大きいほど必要な循環流量は大きくなり、温度差が小さいほど多くの流量が必要になります。 給湯設備では、水を加熱すると膨張するため、圧力上昇への対策が必要です。密閉式膨張水槽は膨張分を吸収する設備ですが、異常圧力に備えて逃し弁を設けます。膨張水槽があるから逃し弁が不要になるのではなく、安全装置として逃し弁も必要になる点を覚えておくとよいです。 加熱された湯からは溶存空気が分離しやすく、配管内に空気だまりが生じることがあります。空気だまりは循環不良や騒音、腐食の原因になります。そのため、自動空気抜き弁を空気が集まりやすい位置に設けます。また、給湯循環ポンプは温水に対応するだけでなく、配管内の背圧に耐えられるものを選定する必要があります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「湯を均等に循環させる」という目的だけを見て、リバースリターン方式が正しいと判断してしまう点です。リバースリターン方式は配管抵抗を均等にする考え方として有名なので、設備全般に使える万能な方法のように見えます。しかし、給湯循環では熱損失や使用状況も関係するため、流量調整弁などによる調整が重要になります。 また、給湯設備では「密閉式膨張水槽があるなら圧力対策は十分」と考えてしまうと誤りやすくなります。密閉式膨張水槽は膨張を吸収する装置であり、逃し弁は異常圧力から設備を守る安全装置です。役割が似ているように見えても、機能は異なります。 さらに、自動空気抜き弁や給湯循環ポンプの記述は、内容が地味に見えるため見落としやすい部分です。給湯設備では、温度、圧力、空気、熱損失がすべて管理対象になります。文章の一部だけが正しいのではなく、設備の目的と設置理由までつなげて判断することが、同じテーマの問題で得点するコツです。