【ビル管過去問】令和7年度 問題71|全熱交換器の仕組みと省エネ効果を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|空気環境の調整第71問

問題

空気調和設備に用いられる全熱交換器に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 全熱交換器は、排気中の顕熱·潜熱を同時に回収して省エネルギー化を図るための熱交換器である。

(2) 回転型全熱交換器では、エレメントが低速回転して吸湿と放湿が連続的に切り替わる。

(3) 静止型全熱交換器の仕切り板には、伝熱性と同時に透湿性が求められる。

(4) 水分の回収を必要としない厨房や温水ブールでは、全熱交換器に代わって顯熱交換器が用いられる。

(5) 空調された室内空気が便所·給湯室等から直接排気される比率が高い場合、全熱交換器の効率は向上する。

 

 

 

ビル管過去問|全熱交換器の仕組みと省エネ効果を解説

全熱交換器は、室内から捨てる排気の熱を利用して、外気を予熱または予冷する装置です。顕熱だけでなく潜熱、つまり水蒸気に関係する熱も回収できる点が特徴です。この問題では、全熱交換器の基本構造、回転型と静止型の違い、顕熱交換器との使い分け、排気の取り方が効率に与える影響が問われています。最も不適当な選択肢は(5)です。

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(1) 全熱交換器は、排気中の顕熱·潜熱を同時に回収して省エネルギー化を図るための熱交換器である。

適切です。全熱交換器は、室内から排出される空気が持っている熱を、取り入れる外気に移すことで空調負荷を減らす装置です。顕熱とは温度差に関係する熱で、潜熱とは水蒸気量、つまり湿度に関係する熱です。たとえば夏期であれば、冷房された室内空気の冷たさや乾燥した状態を利用して、高温多湿の外気をあらかじめ冷やし、湿度も下げる方向に働きます。これにより、空調機が外気を処理する負担が小さくなり、省エネルギーにつながります。

(2) 回転型全熱交換器では、エレメントが低速回転して吸湿と放湿が連続的に切り替わる。

適切です。回転型全熱交換器は、熱や湿気を蓄えるエレメントが排気側と給気側をまたぐようにゆっくり回転します。排気側を通過するときに熱や湿気を受け取り、給気側を通過するときにそれを外気へ移します。この動作が連続して行われるため、温度だけでなく湿度も回収できます。回転型は構造上、排気と給気が完全に分離されにくい面があるため、汚染空気を扱う場所では用途に注意が必要です。

(3) 静止型全熱交換器の仕切り板には、伝熱性と同時に透湿性が求められる。

適切です。静止型全熱交換器では、給気と排気が仕切り板を介して熱交換します。全熱交換器として働くためには、温度に関係する熱を伝える伝熱性だけでなく、水蒸気を移動させる透湿性も必要です。もし仕切り板が熱だけを通し、水蒸気を通さない構造であれば、潜熱の回収はできず、顕熱交換器に近い働きになります。したがって、静止型全熱交換器では、仕切り板の材料に伝熱性と透湿性が求められます。

(4) 水分の回収を必要としない厨房や温水ブールでは、全熱交換器に代わって顯熱交換器が用いられる。

適切です。厨房や温水プールでは、排気中ににおい、油煙、汚れ、多量の水蒸気などが含まれることがあります。このような空気から湿気まで回収してしまうと、衛生面や快適性の面で問題が生じる場合があります。そのため、水分の回収を必要としない場合には、潜熱を回収する全熱交換器ではなく、温度に関係する顕熱だけを回収する顕熱交換器が用いられます。試験では、全熱交換器は便利だが、すべての排気に適しているわけではない点が重要です。

(5) 空調された室内空気が便所·給湯室等から直接排気される比率が高い場合、全熱交換器の効率は向上する。

不適切です。全熱交換器の省エネルギー効果を高めるには、空調された室内空気を熱交換器に通して、その熱や湿気を回収する必要があります。しかし、便所や給湯室などから直接排気される空気は、臭気や湿気を含みやすく、一般に全熱交換器を通して再利用する対象にはしにくい空気です。また、空調された室内空気が全熱交換器を通らずに直接排気される比率が高いと、回収できる熱量が減ってしまいます。したがって、全熱交換器の効率は向上するのではなく、むしろ低下します。

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この問題で覚えるポイント

全熱交換器は、排気から顕熱と潜熱を回収して外気負荷を減らす省エネルギー機器です。顕熱は温度に関係する熱、潜熱は湿度や水蒸気量に関係する熱です。全熱交換器はこの両方を扱うため、単なる熱交換器よりも空調負荷の削減効果が大きくなります。回転型はエレメントが回転しながら排気側と給気側を交互に通過し、熱と湿気を移動させます。静止型は給気と排気を仕切り板で分け、仕切り板を介して熱と湿気を移動させます。そのため、静止型の仕切り板には伝熱性と透湿性が必要です。顕熱交換器は温度に関係する熱だけを回収し、水分の回収を目的としない場合に用いられます。厨房、便所、給湯室、温水プールのように、臭気、油煙、多湿、汚染の問題がある排気では、全熱交換器の使用に注意が必要です。全熱交換器の効果は、空調された良質な室内空気をどれだけ熱交換器に通して回収できるかに左右されます。直接排気される空気が多いほど、回収できる熱が減るため、省エネルギー効果は小さくなります。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、「空調された室内空気が排気されるなら、熱を多く持っているので効率が上がるはずだ」と考えてしまう点です。しかし、重要なのは排気される空気が全熱交換器を通るかどうかです。便所や給湯室などから直接排気される空気は、臭気や湿気の問題があるため、熱交換に利用しにくい場合があります。また、直接排気される比率が高いということは、熱交換器で回収されずに捨てられる空気が多いという意味です。したがって、省エネルギー効果は上がるのではなく下がります。全熱交換器の問題では、「熱を持った空気があること」と「その熱を回収できること」を混同しないことが大切です。

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