問題
労働安全衛生法に規定されている次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 厚生労働大臣は、労働災害防止計画を策定しなければならない。
(2) 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場で、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
(3) 事業者は、規模に応じて事業場ごとに衛生委員会を設けなければならない。
(4) 事業者は、事業場の規模に応じて労働者の健康診断を行ったときは、その結果を保健所長に提出しなければならない。
(5) 安全委員会の構成委員には、当該事業場の労働者で安全に関し経験を有する者のうちから、事業者が指名した者が含まれなければならない。
ビル管過去問|労働安全衛生法を解説
この問題は、労働安全衛生法における事業者や国の義務、委員会の設置、健康診断結果の報告先など、基本的な制度を正しく理解しているかを問う問題です。
特に重要なのは、健康診断の実施義務そのものと、実施後の報告先を区別して覚えることです。
また、作業環境測定や衛生委員会、安全委員会については、それぞれ法令上の根拠と対象が決まっており、似た制度同士を混同しないことが大切です。
なお、労働災害防止計画は厚生労働大臣が策定するものとされており、作業環境測定は有害業務を行う一定の屋内作業場等で必要となります。衛生委員会は一定規模以上の事業場ごとに設置が必要であり、定期健康診断結果報告書の提出先は保健所長ではなく、所轄労働基準監督署長です。安全委員会の委員には、安全に関し経験を有する労働者のうちから事業者が指名した者が含まれなければなりません。結論として(4)が不適当です。
(1) 厚生労働大臣は、労働災害防止計画を策定しなければならない。
適切です。厚生労働大臣は、労働災害を減少させるための基本的な計画として、労働災害防止計画を策定することが法令上求められています。
内容としては、国が労働災害防止に関する大きな方針を定める仕組みを述べており、法の趣旨に合っています。
この規定は、個々の事業場任せにせず、国全体として災害防止を計画的に進めるためのものです。したがって、この記述は正しいです。
(2) 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場で、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
適切です。労働安全衛生法では、有害な業務を行う一定の屋内作業場などについて、事業者に作業環境測定を実施させ、その結果を記録させることを求めています。
これは、労働者が有害物質や粉じん、騒音、高温多湿などの有害な作業環境にさらされていないかを客観的に把握するためです。測定をしないままだと、危険や健康障害の可能性を見落としやすくなります。
また、測定して終わりではなく、結果を記録して保存することにより、後から作業環境の変化を確認したり、改善措置の必要性を判断したりできます。したがって、この記述は法の内容に合っています。
(3) 事業者は、規模に応じて事業場ごとに衛生委員会を設けなければならない。
適切です。衛生委員会は、一定規模以上の事業場において、労働者の健康障害の防止や衛生に関する重要事項を調査審議するために設ける委員会です。
労働安全衛生法では、政令で定める規模の事業場ごとに設置しなければならないとされており、その規模は原則として常時50人以上の労働者を使用する事業場です。
この制度のポイントは、「会社全体で一つ」ではなく、「事業場ごと」に判断することです。たとえば同じ会社でも、支店や工場など事業場単位で設置義務の有無が決まります。したがって、この記述は正しいです。
(4)事業者は、事業場の規模に応じて労働者の健康診断を行ったときは、その結果を保健所長に提出しなければならない。
不適切です。事業者には健康診断を実施する義務がありますが、一定規模以上の事業場で定期健康診断を行ったときに提出するのは、保健所長ではありません。提出先は、所轄労働基準監督署長です。
保健所は地域保健や公衆衛生を担う行政機関ですが、労働安全衛生法に基づく事業場の安全衛生関係の届出や報告は、基本的に労働基準監督署が所管します。
この問題は、健康診断という言葉から医療・保健のイメージで「保健所」と誤って連想させる典型的なひっかけです。提出先を正確に覚えていないと間違えやすいですが、法令上の報告先は所轄労働基準監督署長です。したがって、この記述は誤りです。
(5) 安全委員会の構成委員には、当該事業場の労働者で安全に関し経験を有する者のうちから、事業者が指名した者が含まれなければならない。
適切です。安全委員会は、労働災害の防止のうち、とくに安全に関する事項を調査審議するための委員会です。
その構成委員には、事業を統括管理する者や安全管理者だけでなく、当該事業場の労働者の中から、安全に関し経験を有する者を事業者が指名して加えることが必要です。
これは、現場の実情を知る労働者の意見を安全対策に反映させるためです。机上の管理だけでは見えにくい危険も、実際に作業している労働者の知見によって把握しやすくなります。したがって、この記述は正しいです。
この問題で覚えるポイント
労働災害防止計画は厚生労働大臣が策定します。
有害業務を行う一定の屋内作業場では、作業環境測定の実施と結果の記録が必要です。
衛生委員会は、一定規模以上の事業場ごとに設置義務があります。
定期健康診断結果報告書の提出先は、保健所ではなく所轄労働基準監督署長です。
安全委員会には、安全に関し経験を有する労働者から事業者が指名した委員を含める必要があります。
ひっかけポイント
健康診断という言葉から、提出先を保健所と誤解しやすいです。
会社単位で考えてしまい、事業場ごとという設置基準を見落としやすいです。
安全委員会と衛生委員会の違いを混同しやすいです。
作業環境測定を実施する義務と、その結果を記録する義務がセットである点を見落としやすいです。
制度の名称が似ているため、所管官庁や提出先を曖昧に覚えていると誤答につながりやすいです。
