問題
建築物衛生法に基づく国又は地方公共団体の用に供する特定建築物に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1) 国の用に供する特定建築物の使用開始時の届出は、厚生労働大臣に行う。
(2) 建築物環境衛生管理技術者を選任するよう努めなければならない。
(3) 国の用に供する特定建築物の立入検査は、都道府県知事等が行う。
(4) 建築物環境衛生管理基準に従って特定建築物の維持管理をするように努めなければならない。
(5) 都道府県知事等は、改善措置の勧告をすることができる。
ビル管過去問|国又は地方公共団体の用に供する特定建築物を解説
この問題は、国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供する特定建築物について、一般の特定建築物と比べてどのような特例があるかを問うものです。ポイントは、届出、建築物環境衛生管理技術者の選任、建築物環境衛生管理基準の遵守といった基本的義務は原則として通常の特定建築物と同様に課される一方で、立入検査や改善命令等については特例が設けられていることです。特に、国又は地方公共団体の用に供する特定建築物では、第十一条の立入検査規定は適用されず、改善命令等に代えて都道府県知事等が勧告を行うことができる点が重要です。結論として(5)が適切な選択肢です。
(1) 国の用に供する特定建築物の使用開始時の届出は、厚生労働大臣に行う。
不適切です。理由は、特定建築物の使用開始時の届出先は厚生労働大臣ではなく、都道府県知事であるからです。法律第五条では、特定建築物所有者等は、当該特定建築物が使用されるに至った日から1か月以内に、所在場所や用途、延べ面積、建築物環境衛生管理技術者の氏名などを都道府県知事に届け出なければならないと定めています。ここでいう都道府県知事には、保健所設置市や特別区では市長又は区長が含まれます。したがって、国の用に供する特定建築物であっても、届出先を厚生労働大臣とするこの記述は誤りです。
(2) 建築物環境衛生管理技術者を選任するよう努めなければならない。
不適切です。理由は、特定建築物については、建築物環境衛生管理技術者の選任は努力義務ではなく義務だからです。法律第六条では、特定建築物所有者等は、当該特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督をさせるため、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならないと明確に定めています。「努めなければならない」という表現は、法的には努力義務を意味しますが、この場合は「選任しなければならない」という義務規定です。国又は地方公共団体の用に供する特定建築物であっても、この選任義務自体が免除されているわけではありません。
(3) 国の用に供する特定建築物の立入検査は、都道府県知事等が行う。
不適切です。理由は、国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供する特定建築物については、第十一条の立入検査規定が適用されないからです。通常の特定建築物については、第十一条により都道府県知事が必要な報告を求めたり、職員に立入検査をさせたりすることができます。しかし、第十三条第一項で、特定建築物が国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供するものである場合には、第十一条の規定は適用しないと明記されています。その代わりに、第十三条第二項により、都道府県知事は必要な説明又は資料の提出を求めることができます。したがって、立入検査を行うとするこの記述は誤りです。
(4) 建築物環境衛生管理基準に従って特定建築物の維持管理をするように努めなければならない。
不適切です。理由は、特定建築物については、建築物環境衛生管理基準に従うことは努力義務ではなく、法的義務だからです。法律第四条第一項では、特定建築物の維持管理について権原を有する者は、建築物環境衛生管理基準に従って当該特定建築物の維持管理をしなければならないと定めています。これに対して、「従って維持管理をするように努めなければならない」とされているのは、第四条第三項にある特定建築物以外の建築物で多数の者が使用し、又は利用するものです。つまり、この選択肢は、特定建築物以外に適用される努力義務の表現を、特定建築物に誤って当てはめています。
(5) 都道府県知事等は、改善措置の勧告をすることができる。
適切です。理由は、国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供する特定建築物については、通常の改善命令等の規定は適用されませんが、その代わりに都道府県知事等が勧告を行うことができると法律で定められているからです。通常の特定建築物では、第十二条に基づき、都道府県知事は必要な措置を命じたり、使用停止や使用制限を命じたりすることができます。しかし、第十三条第三項では、国又は地方公共団体の用に供する特定建築物については第十二条を適用しないとしたうえで、同条に規定するような環境衛生上著しく不適当な事態があると認めるときは、当該機関の長又はその委任を受けた者に通知するとともに、維持管理方法の改善その他必要な措置を採るべきことを勧告することができるとしています。したがって、この記述が最も適当です。
この問題で覚えるポイント
国又は地方公共団体の用に供する特定建築物であっても、特定建築物としての基本的な義務は原則としてそのまま課されます。具体的には、使用開始時の届出、建築物環境衛生管理技術者の選任、建築物環境衛生管理基準に従った維持管理、帳簿書類の備付けなどです。特例があるのは、行政の関与の方法です。立入検査の規定は適用されず、必要な説明や資料提出の要求という形になります。また、改善命令や使用停止命令も適用されず、通知と勧告による対応になります。「義務そのものはあるが、監督手法に特例がある」と整理して覚えることが大切です。
ひっかけポイント
この問題では、「国の施設だから厚生労働大臣に届出するのではないか」「公的施設だから義務が緩くなって努力義務になるのではないか」と考えてしまう点がひっかけです。実際には、届出先は都道府県知事等であり、管理技術者の選任や管理基準の遵守も義務です。特例があるのは、立入検査や改善命令などの行政措置の部分だけです。つまり、「義務の有無」と「行政の関与方法」を混同しないことが重要です。特定建築物としての基本ルールは維持され、検査や命令の仕組みだけが特例に変わると押さえると、正誤判定しやすくなります。
