出典:建築物衛生管理技術者試験 令和6年度(2024年)建築物衛生行政概論第1問
問題
世界保健機関(WHO)憲章の前文に述べられている健康の定義に関する次の文章の( )内に入る語句の組合せとして、最も適当なものはどれか。 健康とは完全な肉体的、精神的及び( ア )福祉の状態にあり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。 到達しうる最高水準の健康を享有することは、人種、( イ )政治的信念又は( ウ )若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである。
(1) ア:社会的 イ:性別 ウ:経済的
(2) ア:地域的 イ:宗教 ウ:文化的
(3) ア:社会的 イ:宗教 ウ:経済的
(4) ア:地域的 イ:性別 ウ:文化的
(5) ア:社会的 イ:性別 ウ:文化的
ビル管過去問|WHO憲章の健康の定義(身体的精神的社会的福祉)を解説
この問題は、WHO憲章前文に示された健康の定義を正確に覚えているかを問う基本問題です。ビル管試験では、衛生行政や公衆衛生の土台となる定義がそのまま問われることがあり、あいまいな記憶では取りこぼしやすい分野です。正しい選択肢は(3)です。健康は「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態」とされ、さらに健康を享有する権利は、人種、宗教、政治的信念、経済的若しくは社会的条件によって差別されない基本的権利の一つとされています。したがって、ア=社会的、イ=宗教、ウ=経済的の組合せが正解です。
(1) ア:社会的 イ:性別 ウ:経済的
不適切です。アの「社会的」とウの「経済的」はWHO憲章前文の表現に合っていますが、イの「性別」が誤りです。WHO憲章では「人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに」とされており、この部分に入るのは「宗教」です。性別による差別の禁止自体は重要な考え方ですが、この問題はWHO憲章前文の定型表現を正確に再現できるかを見ています。正しい理念を知っているだけでは足りず、原文の語句をそのまま押さえておくことが必要です。
(2) ア:地域的 イ:宗教 ウ:文化的
不適切です。イの「宗教」は正しいものの、アとウが誤りです。健康の定義では「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態」とされており、「地域的福祉」という表現は用いられていません。また、差別のない健康享有権の説明では「経済的若しくは社会的条件」であり、「文化的」という語はここには入りません。地域や文化は公衆衛生を考えるうえで関係する概念ではありますが、WHO憲章前文のこの箇所の文言そのものではないため、混同しないことが大切です。
(3) ア:社会的 イ:宗教 ウ:経済的
適切です。WHO憲章前文の健康の定義は「健康とは完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態にあり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされています。さらに、「到達しうる最高水準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである」と続きます。したがって、アには「社会的」、イには「宗教」、ウには「経済的」が入ります。この問題は知識の難易度自体は高くありませんが、語句を一つでも取り違えると誤答になるため、原文ベースで覚えておくことが重要です。
(4) ア:地域的 イ:性別 ウ:文化的
不適切です。ア、イ、ウのすべてがWHO憲章前文の該当語句と一致していません。まず、健康の定義は「社会的福祉」であり、「地域的福祉」ではありません。次に、差別のない健康享有権に関する部分は「宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件」であり、「性別」や「文化的」はこの文脈の原文には出てきません。この選択肢は、日常的にもっともらしく見える語を並べて受験者を惑わせる典型的な誤りです。意味が通るかどうかではなく、出典となる定義に忠実かどうかで判断する必要があります。
(5) ア:社会的 イ:性別 ウ:文化的
不適切です。アの「社会的」は正しいですが、イの「性別」とウの「文化的」が誤りです。WHO憲章前文で示されるのは「宗教」と「経済的」であり、ここを別の重要概念にすり替えてしまうと誤答になります。特に「文化的」は公衆衛生や国際保健の文脈で見かけることがあるため、つい正しそうに感じやすい語です。しかし、この問題はあくまでWHO憲章前文の定義文をそのまま知っているかを問うています。部分的に合っていても、組合せ問題では一つでも違えば不正解になる点に注意しましょう。
この問題で覚えるポイント
WHO憲章前文の健康の定義は、「健康とは完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態」であり、「単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とされています。ここで最重要なのは、「身体面だけでなく、精神面社会面まで含めて健康を捉える」という点です。 「社会的福祉」という語が頻出です。似た言葉に引っぱられて「地域的」「文化的」などに置き換えないようにしてください。健康の定義は、身体的精神的社会的の三つで整理して覚えると安定します。 WHO憲章前文では、健康を享有することは「万人の有する基本的権利の一つ」とされています。これは公衆衛生の基本理念であり、単なる努力目標ではなく、国際的に重視される権利概念です。 差別禁止に関する語句は、「人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件」です。ここでは「宗教」と「経済的」がよく狙われます。性別、地域、文化などの語は重要な概念ではあっても、この原文の空欄には入りません。 「疾病がない=健康」ではない点が重要です。病気がなくても、精神的に不調であったり、社会生活に大きな支障があったりする場合は、WHOの定義する健康とはいえません。逆に、この考え方は建築物衛生管理の実務にもつながり、良好な環境を整えることが人の健康全体を支えるという理解に結びつきます。 試験対策としては、WHO憲章の健康の定義は文章の骨格ごと暗記すると有効です。「完全な肉体的精神的社会的福祉」「単に疾病又は病弱がないことではない」「人種、宗教、政治的信念、経済的若しくは社会的条件の差別なしに」という三つのまとまりで押さえると、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
もっとも多い罠は、「正しい理念っぽい語」に置き換えてくることです。性別、文化的、地域的などは、公衆衛生や人権の文脈では一見もっともらしく見えるため、受験者は「意味としては合っていそう」と感じて選びやすくなります。しかし、この問題は理念の一般論ではなく、WHO憲章前文の定型表現を正確に知っているかを問っています。 次の罠は、「一部だけ正しい組合せ」です。たとえば、アだけ正しくてイとウが違う選択肢は非常に見抜きにくいです。受験者は最初の語句が合っていると安心してしまい、残りの確認が甘くなります。組合せ問題では、必ずすべての空欄を独立して確認する癖をつけることが大切です。 また、「日常感覚と専門知識のズレ」も狙われやすいです。日常的には、健康を「病気でないこと」と捉えがちですが、WHOはそれより広く、社会的福祉まで含めて定義しています。このズレを理解していないと、原文の重要性を軽く見てしまい、語句の正確な暗記が後回しになってしまいます。 さらに、「似た価値概念の混同」も典型的です。差別禁止の文脈では、性別や文化なども重要な価値なので、受験者は無意識に混ぜてしまいます。このパターンは今後も繰り返し出ます。法律、憲章、基準の問題では、「一般に正しいこと」ではなく「その文書で実際にどう書かれているか」で判断する習慣をつけることが、安定した得点につながります。

