出典:建築物衛生管理技術者試験 令和6年度(2024年)|建築物の環境衛生 第27問
問題
低温障害に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) しもやけ(凍瘡(そう))は、低温により、体の一部が凍ってしまったものである。
(2) 5°C以下の水に突然漬かると、5〜15分間で生命にかかわる低体温症を生じる可能性がある。
(3) 天候により、気温が13〜16°C程度でも低体温症となることがある。
(4) 低体温症が進行すると震えは止まる。
(5) 低体温症の診断は直腸温の測定により行う。
ビル管過去問|低温障害とは(凍傷しもやけ低体温症)を解説
この問題は、低温障害の種類と特徴を正しく区別できるかを問う問題です。正しい知識としては、しもやけは「凍る障害」ではなく、寒冷刺激によって血行障害や炎症が起こる状態です。一方、体の組織そのものが凍るのは凍傷です。そのため、最も不適当なのは(1)です。ほかの選択肢は、冷水への転落、風雨による体温低下、低体温症の進行時の震えの消失、直腸温による深部体温の評価という点で、いずれも適切な内容です。
(1) しもやけ(凍瘡(そう))は、低温により、体の一部が凍ってしまったものである。
不適切です。しもやけは、寒さによって手足や耳などの末梢部分の血行が悪くなり、その結果として赤み、腫れ、かゆみ、痛みなどが生じる状態です。一般に、湿気のある寒冷環境や、寒暖差の繰り返しで起こりやすいとされています。これに対して、組織そのものが凍結して傷害される状態は凍傷です。つまり、しもやけと凍傷はどちらも低温障害ではありますが、成り立ちが異なります。「体の一部が凍ってしまった」という説明は凍傷の説明であり、しもやけの説明としては誤りです。
(2) 5°C以下の水に突然漬かると、5〜15分間で生命にかかわる低体温症を生じる可能性がある。
適切です。水は空気よりもはるかに速く体の熱を奪います。そのため、極めて冷たい水に急に入ると、短時間のうちに深部体温が低下し、生命にかかわる状態に至ることがあります。特に5°C以下の冷水では、体表からの放熱が非常に大きく、泳ぐ力の低下、意識障害、心機能への悪影響も重なって危険性が高まります。低温障害は屋外作業や災害時にも関係するため、「冷水は短時間でも非常に危険である」という認識を持つことが大切です。
(3) 天候により、気温が13〜16°C程度でも低体温症となることがある。
適切です。低体温症は、真冬の氷点下だけで起こるものではありません。風が強い、雨で衣服がぬれる、長時間屋外にいる、疲労している、栄養状態が悪いといった条件が重なると、比較的高めの気温でも体温は下がります。特に、ぬれた衣服は体熱を奪いやすく、風があるとさらに放熱が進みます。そのため、13〜16°C程度でも状況によっては低体温症になり得ます。試験では、低体温症を「極寒時だけの障害」と思い込まないことが重要です。
(4) 低体温症が進行すると震えは止まる。
適切です。低体温症の初期には、体が熱を作ろうとして震えが起こります。これは筋肉を小刻みに動かして熱産生を増やす、生体の防御反応です。しかし、低体温症が進行すると、体力の消耗や中枢機能の低下によって、この震えが続けられなくなります。つまり、震えが止まるのは回復のサインではなく、むしろ重症化のサインです。この点は実務上も非常に重要で、震えがないから安心とは判断できません。
(5) 低体温症の診断は直腸温の測定により行う。
適切です。低体温症の評価では、わきの下や皮膚表面の温度ではなく、深部体温を把握することが重要です。その代表的な測定法が直腸温の測定です。直腸温は体の中心部の温度を比較的よく反映するため、低体温症の診断や重症度判定に用いられます。低温環境では末梢の温度は外気の影響を受けやすく、表面温度だけでは正確な判断が難しいため、深部体温の測定が重視されます。
この問題で覚えるポイント
低温障害では、まず「しもやけ」「凍傷」「低体温症」を明確に区別することが重要です。しもやけは、0°C以下で組織が凍る障害ではなく、寒冷による血行障害や炎症です。凍傷は、身体の一部の組織が実際に凍結して起こる障害です。低体温症は、体の中心部の体温、つまり深部体温が低下した状態を指し、全身性の障害です。 低体温症は、必ずしも氷点下で起こるわけではありません。雨、風、ぬれ、疲労、低栄養、長時間の屋外曝露などが加わると、10°C台でも起こり得ます。このため、気温だけで安全か危険かを判断しないことが大切です。 また、低体温症では、初期には震えが見られますが、進行すると震えは止まります。ここはよく問われるポイントです。震えの消失は改善ではなく重症化の可能性を示します。さらに、診断や重症度判定では、皮膚温ではなく深部体温をみる必要があり、その代表が直腸温です。試験対策としては、「末梢の障害か、全身の障害か」「凍っているのか、凍っていないのか」「表面温度か、深部体温か」という軸で整理すると、正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、しもやけと凍傷を混同させる点です。どちらも寒さで起こるため、日常感覚では同じように捉えやすいのですが、試験ではそこを厳密に区別させます。「低温で起こる」ことまでは合っていても、「組織が凍る」という部分まで含めると誤りになる、というのが典型的な出題パターンです。 また、低体温症についても、「寒い場所でしか起きない」「震えがなくなったら落ち着いた」「体温はわきで測ればよい」といった日常的な思い込みを利用して誤答を誘っています。実際には、風雨やぬれで比較的高めの気温でも発症し、震えの消失は重症化の兆候であり、評価には深部体温が必要です。つまり、このテーマでは、感覚的な理解よりも、医学的生理学的な定義を優先して判断することが合格への近道です。
