出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|ねずみ、昆虫等の防除第166問
問題
蚊の生態に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1) 日本のヒトスジシマカは、冬季は成虫のステージで越冬する。
(2) アカイエカは、主に建築物内の浄化槽、汚水槽、湧水槽等で発生する。
(3) ヒトスジシマカは、ヒト以外にも多種多様な動物を吸血源としている。
(4) コガタアカイエカの発生源は小さな水域であり、空き缶や古タイヤ等によく発生する。
(5) 同一期間におけるアカイエカとヒトスジシマカの移動距離は、ほぼ同程度である。
ビル管過去問|蚊の生態|ヒトスジシマカ・アカイエカ・コガタアカイエカの特徴を解説
この問題は、蚊の種類ごとの越冬形態、発生源、吸血対象、移動距離の違いを見分けられるかを問う問題です。正しい選択肢は(3)です。ヒトスジシマカは人だけでなく、さまざまな動物からも吸血します。一方で、アカイエカとチカイエカの発生源を混同したり、ヒトスジシマカの越冬形態を成虫と誤解したりすると、判断を誤りやすい問題です。蚊は見た目が似ていても、生態はかなり異なるため、種ごとの特徴を整理して覚えることが大切です。
(1) 日本のヒトスジシマカは、冬季は成虫のステージで越冬する。
不適切です。日本のヒトスジシマカは、一般に卵の状態で越冬します。ヒトスジシマカはヤブカの仲間で、暖かい時期に活動し、冬は成虫がそのまま生き残るのではなく、耐寒性をもつ卵で寒い時期をしのぐのが基本です。そのため、「冬季は成虫で越冬する」という表現は誤りです。越冬形態は試験でよく問われるため、ヒトスジシマカは卵、チカイエカは休眠せず冬でも活動することがある、と対比して覚えると整理しやすいです。
(2) アカイエカは、主に建築物内の浄化槽、汚水槽、湧水槽等で発生する。
不適切です。建築物内の浄化槽や地下の湧水池などを主な発生源とするのは、典型的にはアカイエカではなくチカイエカです。アカイエカは雨水ます、汚水だまり、下水溝などから発生することが多く、チカイエカは地下空間や浄化槽など建築物に関連した場所で問題になりやすい種類です。試験では「アカイエカ」と「チカイエカ」の生息環境の入れ替えがひっかけになりやすいので、ここは特に注意したいところです。
(3) ヒトスジシマカは、ヒト以外にも多種多様な動物を吸血源としている。
適切です。ヒトスジシマカは人をよく吸血するため人に身近な蚊として知られていますが、吸血対象は人だけではありません。状況に応じてさまざまな動物を吸血源とします。この性質は、病原体を媒介するうえでも重要です。試験では「ヒトスジシマカは人だけを吸血する」と思い込むと誤答しやすいですが、実際には吸血源の幅があるため、この記述が最も適当です。
(4) コガタアカイエカの発生源は小さな水域であり、空き缶や古タイヤ等によく発生する。
不適切です。空き缶や古タイヤのような小さな人工容器に発生しやすいのは、代表的にはヒトスジシマカです。コガタアカイエカは、一般に水田など比較的まとまった水域で発生することで知られています。したがって、この選択肢はコガタアカイエカとヒトスジシマカの発生源を取り違えています。発生源の違いは防除方法にも直結するため、容器性の小水域ならヒトスジシマカ、水田などならコガタアカイエカという形で押さえると実践的です。
(5) 同一期間におけるアカイエカとヒトスジシマカの移動距離は、ほぼ同程度である。
不適切です。ヒトスジシマカは、ふだんは潜伏場所の近くで活動し、比較的移動距離が短い蚊です。これに対して夜間吸血性のアカイエカ類は、数百メートルから数キロ程度移動して吸血源を探すことがあります。厚生労働省資料でも、ヒトスジシマカの移動距離はおおむね200~500m、アカイエカは2~4km程度とされており、ほぼ同程度とはいえません。距離感まで問われる問題は多くありませんが、「ヒトスジシマカは近距離型、アカイエカ類はより広く飛ぶ」と理解しておくと判断しやすくなります。
この問題で覚えるポイント
蚊の生態は、越冬形態、発生源、吸血源、活動時間、移動距離で整理すると正誤判断しやすくなります。ヒトスジシマカは昼間に活動するヤブカで、空き缶、古タイヤ、植木鉢の受け皿などの小さな水たまりに発生し、越冬は卵で行うのが基本です。移動距離は比較的短く、身近な発生源対策が重要になります。これに対してアカイエカは夜間吸血性で、雨水ます、汚水だまり、下水溝などに発生し、ヒトや鳥を吸血します。さらに建築物内の浄化槽や地下施設に関係しやすいのはチカイエカであり、アカイエカと混同しないことが重要です。コガタアカイエカは小容器ではなく、水田などの比較的広い水域で発生する代表的な蚊として整理しておくと、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、似た名前の蚊どうしの特徴を入れ替えている点です。特に、アカイエカとチカイエカは名前が近いため、建築物内の浄化槽や地下空間に発生するのがどちらかで迷いやすくなります。また、ヒトスジシマカは人をよく刺す印象が強いため、「人だけを吸血する」と思い込ませる罠もあります。さらに、空き缶や古タイヤという具体例を見ると、小水域に発生する蚊の代表であるヒトスジシマカを連想できるかが分かれ目です。見た目の印象や日常感覚で解くのではなく、「越冬は何か」「どこに発生するか」「どれくらい移動するか」を種ごとにセットで覚えることが、こうしたひっかけへの一番の対策です。
