出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物の環境衛生第23問
問題
人体の臓器系とその障害・疾病との組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。
(1) 造血器系 ――― 再生不良性貧血
(2) 消化器系 ――― 肝硬変
(3) 呼吸器系 ――― 肺気腫
(4) 神経系 ―――― 甲状腺機能低下症
(5) 循環器系 ――― 動脈硬化症
ビル管過去問|人体の臓器系|各器官と代表的疾病(循環器・呼吸器・神経系など)の対応を解説
この問題は、各臓器系と代表的な障害・疾病の対応関係を正しく理解しているかを問う問題です。臓器系の問題では、病気そのものの名称だけでなく、その病気が主にどの器官や機能に関係するのかを整理して覚えておくことが大切です。今回の正答は、甲状腺機能低下症を神経系の病気として結び付けている記述です。甲状腺は内分泌器官であり、甲状腺機能低下症は内分泌系の疾患です。そのため、この組合せが最も不適当です。他の選択肢は、いずれも臓器系と疾病の対応として適切です。
(1) 造血器系 ――― 再生不良性貧血
適切です。再生不良性貧血は、血液をつくる働きをもつ骨髄の機能が低下し、赤血球、白血球、血小板が十分につくられなくなる病気です。造血器系とは、血液の産生やその維持に関わる器官や機能のまとまりを指しますので、再生不良性貧血を造血器系の障害と考えるのは正しいです。貧血という言葉だけを見ると赤血球だけの問題のように見えますが、再生不良性貧血では血液全体の産生障害が本質です。この点を押さえておくと、単なる鉄欠乏性貧血との違いも理解しやすくなります。
(2) 消化器系 ――― 肝硬変
適切です。肝硬変は、肝臓の細胞が長期間にわたって障害され、肝組織が硬く変化して正常な働きが低下する病気です。肝臓は消化器系に属する重要な臓器であり、栄養の代謝、胆汁の生成、解毒など多くの働きを担っています。そのため、肝硬変を消化器系の疾病とするのは正しいです。胃や腸だけが消化器系ではなく、肝臓、膵臓、胆のうなども広く消化器系に含まれることを確認しておくと、この種の問題に対応しやすくなります。
(3) 呼吸器系 ――― 肺気腫
適切です。肺気腫は、肺胞が壊れてしまい、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなる病気です。肺は呼吸器系の中心的な器官ですので、肺気腫を呼吸器系の疾病とするのは正しいです。肺気腫では息切れや呼吸困難が起こりやすく、慢性閉塞性肺疾患の一つとして扱われることもあります。病名に「肺」と入っているため比較的わかりやすい選択肢ですが、呼吸の仕組みと肺胞の役割まで理解しておくと、知識がより確実になります。
(4) 神経系 ―――― 甲状腺機能低下症
不適切です。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足することによって起こる病気であり、主に内分泌系の疾患です。甲状腺は首の前側にある内分泌器官で、全身の代謝や発育に深く関係しています。甲状腺機能が低下すると、無気力、寒がり、むくみ、体重増加、脈が遅くなるなどの症状がみられます。これらの症状の一部は神経の異常のように見えることもありますが、病気の本体は神経系ではなくホルモン分泌の異常です。このため、この組合せが最も不適当です。
(5) 循環器系 ――― 動脈硬化症
適切です。動脈硬化症は、動脈の壁が厚く硬くなり、弾力を失って血液の流れが悪くなる状態です。動脈は心臓から送り出された血液を全身に運ぶ血管であり、循環器系に属します。そのため、動脈硬化症を循環器系の障害とするのは正しいです。循環器系には心臓と血管が含まれますので、心筋梗塞や高血圧だけでなく、血管そのものの病変も循環器系の問題として整理することが大切です。
この問題で覚えるポイント
人体の臓器系に関する問題では、まず各器官がどの系に属するかを正確に整理することが基本です。造血器系は血液の産生に関わる系で、再生不良性貧血や白血病などが代表例です。消化器系は口から肛門までの消化管だけでなく、肝臓、膵臓、胆のうも含み、肝硬変はこの消化器系の代表的な疾患です。呼吸器系は気道や肺からなり、肺気腫や気管支喘息、肺炎などが代表例です。循環器系は心臓と血管からなり、動脈硬化症、高血圧、心不全などが含まれます。神経系は脳、脊髄、末梢神経に関わる系であり、脳梗塞、てんかん、パーキンソン病などが代表例です。 一方で、甲状腺機能低下症のようにホルモン分泌の異常によって起こる病気は内分泌系に分類されます。甲状腺、副腎、下垂体、膵臓の内分泌機能などは、神経系とは別に整理する必要があります。試験では、症状の印象に引っ張られず、どの器官の異常が本体なのかを見抜くことが重要です。病気の名前ではなく、原因となる臓器や機能の障害で分類する意識を持つと、正誤判断が安定します。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、症状の現れ方と病気の分類を混同させる点にあります。甲状腺機能低下症では、無気力、思考力低下、反応の鈍さなどがみられることがあり、受験者は神経系の異常と誤認しやすいです。しかし、分類の基準は症状の見え方ではなく、どの器官系に本質的な異常があるかです。この視点が抜けると、「神経っぽい症状があるから神経系」と考えてしまいます。 また、肝臓を消化器系に含めるかどうかで迷う人もいます。日常感覚では胃や腸だけを消化器として考えがちですが、試験では肝臓や膵臓も消化器系に含まれます。このように、普段のイメージと医学的な分類のずれが誤答の原因になります。今後も、病名の印象ではなく、障害の中心となる器官とその機能から分類する習慣をつけることが大切です。
