出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|清掃第134問
問題
排水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 汚水槽の清掃は、酸素濃度が18%以上、かつ、硫化水素濃度が10ppm以下であることを確認してから作業を行う。
(2) 逆流防止弁は、排水通気管からの臭気の逆流を防止するために設置する。
(3) 飲食店などのグリース阻集器内で発生する油分の廃棄物は、産業廃棄物として処理する。
(4) 排水槽内で汚物などの腐敗が進行し、悪臭が発生する場合の対策として、排水ポンプのタイマ制御により1〜2時間ごとに強制的に排水する。
(5) 排水管に設置する床下式の掃除口の蓋には、砲金製プラグを用いる。
ビル管過去問|排水設備 維持管理 安全対策・逆流防止・悪臭対策を解説
この問題は、排水設備の維持管理における安全確保、悪臭防止、逆流防止、廃棄物処理、掃除口の構造に関する知識を問う問題です。正答は(2)です。逆流防止弁は排水の逆流を防ぐための機器であり、臭気対策のために排水通気管へ設置するものではありません。ほかの選択肢は、排水設備の維持管理上、いずれも適切な内容です。排水設備の問題では、臭気対策と逆流対策、安全管理と保守管理など、目的の異なる設備や措置を混同しないことが大切です。
(1) 汚水槽の清掃は、酸素濃度が18%以上、かつ、硫化水素濃度が10ppm以下であることを確認してから作業を行う。
適切です。汚水槽や排水槽の内部は、酸欠や有毒ガス発生の危険がある典型的な閉鎖空間です。そのため、作業前に酸素濃度や硫化水素濃度を測定し、安全な作業環境であることを確認する必要があります。酸素濃度が低いと意識障害や窒息の危険があり、硫化水素は低濃度でも人体へ悪影響を及ぼします。排水設備の清掃では、汚れを除去する技術だけでなく、作業員の生命を守る安全管理が最優先であることを押さえておくことが大切です。
(2) 逆流防止弁は、排水通気管からの臭気の逆流を防止するために設置する。
不適切です。逆流防止弁は、排水や汚水が逆方向へ流れ戻ることを防止するための機器です。たとえば、下水や排水が異常時に逆流して建物内へ流れ込むことを防ぐ目的で設置されます。一方、臭気の逆流防止は、主としてトラップの封水や通気設備の適正な計画・維持によって行います。つまり、逆流防止弁は液体の逆流対策であり、臭気対策の中心設備ではありません。ここでは、臭気の問題と排水の逆流の問題を意図的に混同させているため、最も不適当な選択肢となります。
(3) 飲食店などのグリース阻集器内で発生する油分の廃棄物は、産業廃棄物として処理する。
適切です。グリース阻集器は、排水中に含まれる油脂分を分離して下水道への流出を抑えるための設備です。ここにたまった油脂分や汚泥をそのまま流してしまうと、排水管の閉塞や悪臭、下水道機能の障害につながります。そのため、定期的に回収し、法令に従って適切に処理する必要があります。飲食店など事業活動に伴って発生したこうした廃棄物は、一般家庭のごみとは異なり、産業廃棄物として扱われる点を理解しておくことが重要です。
(4) 排水槽内で汚物などの腐敗が進行し、悪臭が発生する場合の対策として、排水ポンプのタイマ制御により1〜2時間ごとに強制的に排水する。
適切です。排水槽内に排水が長時間滞留すると、汚物や有機物が腐敗しやすくなり、悪臭やガス発生の原因になります。このような場合には、排水をできるだけ滞留させないよう、一定時間ごとに排水ポンプを作動させて槽内の排水を強制的に排出する方法が有効です。特に1〜2時間ごとの排水は、滞留時間を短くして腐敗の進行を抑える対策として理解しておきたいところです。排水設備の悪臭対策では、清掃だけでなく、運転方法の見直しも重要になります。
(5) 排水管に設置する床下式の掃除口の蓋には、砲金製プラグを用いる。
適切です。掃除口は、排水管内の点検や清掃、詰まり除去のために設けられる重要な設備です。床下式の掃除口では、耐久性や気密性、水密性が求められるため、蓋として砲金製プラグが用いられます。砲金は耐食性に優れ、排水設備のような湿潤で腐食しやすい環境に適した材料です。こうした部材は目立たない存在ですが、維持管理のしやすさや漏水・悪臭防止に関わるため、試験では基本事項として問われやすい部分です。
この問題で覚えるポイント
排水設備の維持管理では、安全対策、悪臭対策、逆流防止対策、それぞれの目的を明確に区別して覚えることが重要です。まず、汚水槽や排水槽の内部作業では、酸素欠乏と硫化水素中毒の危険があるため、作業前の濃度測定が必須です。安全確認は清掃作業の前提条件であり、設備知識と同じくらい重要です。次に、臭気対策はトラップの封水保持、通気設備の適正化、排水の滞留防止などで行います。これに対して、逆流防止弁は排水そのものの逆流を防ぐ装置であり、臭気防止の中心設備ではありません。この違いは頻出です。また、グリース阻集器内の油脂分は、排水管閉塞や悪臭の原因となるため、定期除去と適正処理が必要です。さらに、排水槽の悪臭対策では、槽内の長時間滞留を防ぐため、タイマ制御で定期排水を行う方法があります。最後に、掃除口の材質や構造もよく問われ、床下式では耐食性のある砲金製プラグが使われることを押さえておくと得点につながります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、設備の名称だけを見ると目的まで正しく思い込んでしまう点にあります。特に逆流防止弁は、「逆流を防ぐ」という言葉から臭気の逆流まで防ぐように感じやすいですが、実際に防ぐ対象は排水の逆流です。つまり、気体である臭気と液体である排水とを混同させるのが典型的な罠です。また、安全管理に関する数値や、排水槽の悪臭対策のような実務的な記述は、細かすぎて誤りに見えてしまうことがあります。しかし、試験ではむしろこうした現場的な知識がそのまま正しい内容として出題されます。さらに、グリース阻集器の廃棄物処理や掃除口の材質のような地味な論点も、受験者が見落としやすい部分です。派手なキーワードに引っ張られず、それぞれの設備が何を目的に設置されているのかを一つずつ整理して判断することが大切です。
