【ビル管過去問】令和4年度 問題82|空調・換気設備の維持管理トラブル 原因と対策を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|空気環境の調整第82問

問題

空気調和・換気設備に関する維持管理上の問題と考えられる原因との組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。

(1) 冷却水系統のスケール発生 ――― 冷却水の過剰な濃縮

(2) 全熱交換器の効率低下 ――― 熱交換エレメントの目詰まり

(3) 冬季暖房時の室内相対湿度の低下 ――― 高い室内温度設定

(4) 夏季冷房時の室内温度の上昇 ――― 外気量の低下

(5) 室内空気質の低下 ――― ダクト内部の汚れ

ビル管過去問|空調・換気設備の維持管理トラブル 原因と対策を解説

この問題は、空調・換気設備で実際に起こりやすいトラブルと、その原因の組合せが正しいかどうかを問う問題です。現場でのイメージと専門知識がずれていると誤答しやすい分野ですが、原因と結果の関係を論理的に押さえれば確実に得点できます。正しい組合せが多い中で、一つだけ因果関係が逆になっているものがあり、それが正解となります。正解は、夏季冷房時の室内温度上昇の原因として「外気量の低下」を挙げている組合せです。

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(1) 冷却水系統のスケール発生 ――― 冷却水の過剰な濃縮

適切です。冷却塔を用いる冷却水系統では、水が蒸発することで溶解していたカルシウムやマグネシウムなどの成分が濃縮されます。ブロー量が不足するなどして冷却水が過剰に濃縮されると、これらの成分が溶けきれなくなり、配管や熱交換器の内面にスケールとして析出します。スケールが付着すると熱交換性能が低下し、ポンプ動力の増加や機器の故障にもつながるため、濃縮倍率の管理と適切なブローが重要です。このように、冷却水の過剰な濃縮はスケール発生の代表的な原因といえます。

(2) 全熱交換器の効率低下 ――― 熱交換エレメントの目詰まり

適切です。全熱交換器は、給気と排気の間で顕熱と潜熱を交換することで省エネルギーと快適性の両立を図る装置です。熱交換エレメントの表面や通風経路に粉じんや汚れが堆積すると、空気の流れが妨げられ、熱と水分の交換が十分に行われなくなります。その結果、全熱交換効率が低下し、所定の温湿度条件を維持しにくくなったり、ファンの電力が増加したりします。したがって、エレメントの目詰まりは全熱交換器の効率低下の直接的な原因であり、定期的な清掃やフィルタ管理が重要です。

(3) 冬季暖房時の室内相対湿度の低下 ――― 高い室内温度設定

適切です。相対湿度は、空気がその温度で保持できる最大水蒸気量に対して、実際に含んでいる水蒸気量の割合を示す指標です。冬季に暖房で室温を高く設定すると、空気の「水蒸気を保持できる容量」が増える一方で、供給される絶対湿度が変わらなければ、相対湿度は低下します。つまり、同じ水蒸気量でも温度が高いほど相対湿度は下がるため、「暖房で室温を上げるほど乾燥感が増す」という現象が起こります。このため、冬季暖房時の高い室温設定が室内相対湿度の低下につながるという関係は正しいといえます。

(4) 夏季冷房時の室内温度の上昇 ――― 外気量の低下

不適切です。夏季冷房時に室内温度が上昇する主な原因は、冷房能力の不足や外気負荷・内部発熱の増加などです。外気量が増えれば、高温多湿の外気を多く取り込むことになり、その分冷房負荷が増加して室温が上がりやすくなります。逆に、外気量を低下させると、外気から持ち込まれる熱や水分が減るため、冷房負荷は小さくなり、室温はむしろ上昇しにくくなります。したがって、「外気量の低下」が「室内温度の上昇」の原因であるという組合せは因果関係が逆であり、不適切な記述となります。

(5) 室内空気質の低下 ――― ダクト内部の汚れ

適切です。空調用ダクトの内部に粉じんやカビ、微生物などが堆積すると、送風時にそれらが室内に再飛散し、浮遊粉じん濃度や微生物濃度の上昇を招きます。また、ダクト内部の汚れは悪臭の原因にもなり、居住者の不快感や健康影響につながるおそれがあります。さらに、汚れによる断面縮小や抵抗増加は風量低下を引き起こし、換気不足による二酸化炭素濃度の上昇など、空気質のさらなる悪化を招くこともあります。このように、ダクト内部の汚れは室内空気質低下の典型的な原因であり、定期的な点検と清掃が重要です。

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この問題で覚えるポイント

空調・換気設備の維持管理では、トラブルとその原因を「物理的・化学的なメカニズム」で結び付けて理解することが重要です。冷却水系統では、蒸発による濃縮が進むとスケールが析出しやすくなり、濃縮倍率の管理とブローがスケール対策の基本となります。全熱交換器では、熱交換エレメントの目詰まりが効率低下の直接原因であり、フィルタ管理とエレメント清掃が性能維持の要となります。 冬季の相対湿度は「温度が上がると相対湿度が下がる」という関係を押さえることが大切です。絶対湿度が同じでも、暖房で室温を高くすると相対湿度が低下し、乾燥感が増します。この性質を理解していれば、冬季の乾燥対策として加湿や適切な室温設定が必要であることが自然に導けます。 夏季冷房時の室温と外気量の関係では、「外気量が多いほど外気負荷が増え、冷房が苦しくなる」という原則を覚えておくとよいです。外気量を減らすと冷房負荷は減少し、室温は上がりにくくなるため、「外気量の低下が室温上昇の原因」という記述は誤りだと判断できます。換気量は空気質の観点からは必要ですが、温熱環境とのバランスを考える視点が問われています。 室内空気質の低下要因としては、ダクト内部の汚れやフィルタの目詰まり、換気量不足などが典型です。特にダクト内部の汚れは、粉じんや微生物の再飛散、悪臭、風量低下など複数の悪影響をもたらすため、維持管理上の重要ポイントとして整理しておくと、類題にも対応しやすくなります。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、夏季冷房時の室温上昇と外気量の関係です。日常感覚として「外気をあまり入れないと空気がこもって暑くなる」と感じる人も多く、その感覚のまま読むと「外気量の低下で室温が上がる」と誤って納得してしまいやすい構成になっています。しかし、空調設計の観点では、夏季の外気は高温多湿であり、外気量が多いほど冷房負荷が増えるという専門的な視点が必要です。 また、他の選択肢はどれも「いかにもありそうな」典型的な組合せで構成されており、一つだけ因果関係が逆転しているパターンです。このような問題では、「全部それっぽいから迷う」のではなく、一つずつ原因と結果をメカニズムレベルで確認し、「外気量が減ると負荷はどう変わるか」「温度が上がると相対湿度はどう変わるか」といった基本原理に立ち返ることが有効です。 さらに、「外気量」と「換気不足による不快感」や「空気質の悪化」を頭の中で混同してしまうと、温熱環境と空気質の問題がごちゃまぜになり、誤った判断につながります。温度や湿度に関する問題なのか、空気質に関する問題なのかを整理して読む習慣をつけると、同様のひっかけに強くなります。こうした思考パターンを意識しておくことで、今後の類題でも同じ罠に引っかかりにくくなります。

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