出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|建築物衛生行政概論第21問
問題
健康に影響を与える環境要因のうち、化学的要因として最も不適当なものは次のうちどれか。
(1) 酸素
(2) 粉じん
(3) オゾン
(4) し尿
(5) 放射線
ビル管過去問|健康影響を与える環境要因 化学的要因・物理的要因・生物的要因を解説
この問題は、健康に影響を与える環境要因を、化学的要因、物理的要因、生物的要因のどれに分類するかを問う問題です。環境衛生では、有害性そのものだけでなく、その要因がどの種類に属するのかを正しく整理して覚えることが重要です。正解は(5)放射線です。放射線は化学的要因ではなく物理的要因に分類されます。他の選択肢は、人体に作用する物質そのもの、または化学物質として健康影響を及ぼすため、化学的要因として扱われます。
(1) 酸素
適切です。酸素は生命維持に不可欠な気体ですが、環境要因としてみた場合は化学的要因に含まれます。これは酸素が物質そのものであり、その濃度の過不足によって人体に影響を及ぼすからです。たとえば酸素濃度が低下すれば酸素欠乏による健康障害が起こりますし、逆に高濃度酸素環境では生体に悪影響を及ぼすこともあります。このように、物質の性質や濃度によって健康影響が生じるものは化学的要因として整理します。
(2) 粉じん
適切です。粉じんは空気中に浮遊する微細な固体粒子であり、吸入により呼吸器へ影響を及ぼすため、化学的要因として扱われます。粉じんの中には、単に異物として気道を刺激するものだけでなく、成分によってはじん肺や中毒の原因となるものもあります。つまり、人体に取り込まれる粒子状物質として健康に作用するため、環境衛生上は化学的要因に分類するのが基本です。
(3) オゾン
適切です。オゾンは強い酸化作用をもつ気体であり、吸入すると気道や粘膜を刺激し、呼吸器症状を引き起こすことがあります。このように、特定の化学物質が人体に有害な作用を及ぼす場合は化学的要因です。オゾンは大気汚染物質の一つとしても重要で、環境衛生分野では代表的な化学的要因として理解しておく必要があります。
(4) し尿
適切です。し尿は一見すると生物的要因のように感じるかもしれませんが、ここでは環境中の有害物質として人の健康に悪影響を及ぼす対象として捉えるため、化学的要因として扱うのが適切です。し尿そのものには有機物やアンモニア性成分などが含まれ、衛生状態の悪化や有害物質の発生につながります。もちろん、し尿を介して病原体が広がる場合は生物的側面も関係しますが、この設問では分類上、放射線との対比で化学的要因に位置づける理解が求められています。
(5) 放射線
不適切です。放射線は物質そのものの化学的性質によって人体へ作用するのではなく、エネルギーとして人体組織に作用し、細胞や遺伝子に障害を与えるものです。そのため、環境要因の分類では物理的要因に該当します。物理的要因には、放射線のほか、温熱、騒音、振動、気圧などがあります。したがって、化学的要因として最も不適当なのは放射線です。
この問題で覚えるポイント
環境要因の分類は、化学的要因、物理的要因、生物的要因の三つを基本として整理すると理解しやすいです。化学的要因は、気体、蒸気、粉じん、有害金属、薬品のように、物質の性質や濃度によって人体へ影響するものです。酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、オゾン、粉じんなどはこの分類に入ります。物理的要因は、熱、寒冷、騒音、振動、放射線、気圧のように、エネルギーや物理的条件によって人体へ影響するものです。生物的要因は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など、生物そのものが健康障害の原因となるものです。試験では、日常感覚では似て見えるものでも、何が人体に作用しているのかという観点で分類することが重要です。物質として作用するなら化学的要因、エネルギーや環境条件として作用するなら物理的要因、病原体などの生物が原因なら生物的要因と覚えると正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、人体に悪影響を与えるものをすべて同じ感覚で捉えてしまう点にあります。受験者は、危険そうなものという印象だけで分類しようとしてしまいがちですが、試験では危険性の強さではなく、何として作用するかが問われています。特に放射線は非常に有害なため、化学物質のようなイメージで捉えてしまうことがありますが、実際には物理的エネルギーによる作用です。また、し尿は病原体と結びつけて生物的要因と考えたくなりますが、設問ではし尿そのものを環境中の有害物質として見る視点が求められています。このように、日常的な印象ではなく、環境衛生上の分類基準で冷静に判断することが大切です。
