出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|空気環境の調整第53問
問題
ある居室に16人在室しているとき、室内の二酸化炭素濃度を建築物環境衛生管理基準値以下に維持するために最低限必要な換気量として、正しいものは次のうちどれか。 ただし、室内は定常状態・完全混合(瞬時一様拡散)とし、外気二酸化炭素濃度は400ppm、在室者一人当たりの二酸化炭素発生量は0.018m3/hとする。
(1) 320m3/h
(2) 400m3/h
(3) 480m3/h
(4) 600m3/h
(5) 720m3/h
ビル管過去問|二酸化炭素濃度と必要換気量計算|在室者数から求める換気量を解説
この問題は、在室者が発生させる二酸化炭素量と、外気の二酸化炭素濃度、そして建築物環境衛生管理基準における室内二酸化炭素濃度の上限から、必要換気量を求める基本問題です。定常状態・完全混合という条件では、二酸化炭素の発生量を、室内と外気の濃度差で割ることで必要換気量を求めます。室内基準値は1,000ppm、外気は400ppmなので、濃度差は600ppmです。在室者16人の二酸化炭素発生量は、0.018m3/h×16人=0.288m3/hです。したがって必要換気量は、0.288÷0.0006=480m3/hとなります。正しい選択肢は480m3/hです。
(1) 320m3/h
不適切です。必要換気量は、在室者全体の二酸化炭素発生量を、許容される室内外濃度差で除して求めます。この問題では、室内濃度の基準値1,000ppmから外気濃度400ppmを引いた600ppmを使う必要があります。600ppmは割合で表すと0.0006です。在室者16人の発生量0.288m3/hをこれで割ると480m3/hとなるため、320m3/hでは換気量が不足します。必要換気量の計算では、人数の掛け算までは合っていても、最後の濃度差の扱いを誤ると小さすぎる値を選びやすいので注意が必要です。
(2) 400m3/h
不適切です。400m3/hは正答に近いため迷いやすい数値ですが、基準値以下に維持するための最低限必要な換気量には足りません。必要換気量の考え方は、発生する二酸化炭素を、外気によってどれだけ希釈できるかで決まります。室内の上限濃度1,000ppmと外気濃度400ppmとの差600ppmが、許容される増加分です。この差を使って計算すると480m3/hが必要になります。400m3/hでは発生量に対して希釈能力が不足し、室内濃度が基準値を超えるおそれがあります。
(3) 480m3/h
適切です。在室者一人当たりの二酸化炭素発生量は0.018m3/hなので、16人では0.018×16=0.288m3/hとなります。建築物環境衛生管理基準では、室内の二酸化炭素濃度は1,000ppm以下に保つ必要があります。外気濃度は400ppmですから、室内で許される増加分は1,000ppm-400ppm=600ppmです。これを割合で表すと0.0006です。したがって、必要換気量Qは、Q=0.288÷0.0006=480m3/hとなります。この計算は、定常状態かつ完全混合という条件で成り立つ基本的な換気計算です。試験では非常によく問われる考え方なので、式の意味ごと理解しておくことが大切です。
(4) 600m3/h
不適切です。600m3/hは必要換気量としては十分ですが、問題は最低限必要な換気量を問うています。そのため、基準値以下を維持できる最小の値を選ばなければなりません。計算結果は480m3/hであり、600m3/hはそれより大きすぎます。試験では、「必要十分な最小値」を問うのか、「十分条件として成り立つ値」を問うのかを読み違えると誤答につながります。この問題では、計算で求まる値そのものを選ぶことがポイントです。
(5) 720m3/h
不適切です。720m3/hも換気量としては基準を満たしうる大きな値ですが、最低限必要な換気量ではありません。問題文には「最低限必要」と明記されているため、基準値をちょうど満たす計算値を選ぶ必要があります。換気量が大きいほどよいという感覚で選ぶと、このような選択肢に引っかかります。設備計算では、条件を満たす最小限の値を求める問題が多く、過大な値も正答にはならないことを押さえておくことが大切です。
この問題で覚えるポイント
必要換気量は、室内で発生する汚染物質量を、室内と外気の濃度差で除して求めます。二酸化炭素については、定常状態かつ完全混合の条件なら、必要換気量=二酸化炭素発生量÷(室内許容濃度-外気濃度)で考えます。濃度をppmで扱うときは、そのまま計算せず、1,000ppmなら0.001、600ppmなら0.0006のように割合へ直して使うことが重要です。建築物環境衛生管理基準では、室内の二酸化炭素濃度は1,000ppm以下です。外気濃度が高ければ高いほど、室内で許容される濃度差は小さくなるため、必要換気量は大きくなります。反対に、在室者数が増えると二酸化炭素発生量が増えるので、必要換気量も比例して増えます。このテーマでは、人数、1人当たり発生量、外気濃度、基準値の4つを正確に整理して式に当てはめることが、正誤判断に直結します。また、換気量は単位時間当たりの外気導入量であり、換気回数とは異なる概念です。換気回数は室容積との関係で表す指標で、必要換気量そのものとは区別して覚える必要があります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、計算式そのものよりも、条件と単位の扱いにあります。まず多いのが、室内基準値1,000ppmをそのまま使ってしまい、外気濃度400ppmを差し引かない誤りです。実際に換気で希釈できるのは、外気より上乗せされた分だけなので、使うべきなのは濃度差です。次に、ppmを割合に直さず、600をそのまま使ってしまうミスがあります。ppmは100万分の1の単位なので、600ppmは0.0006です。この変換を忘れると答えが大きくずれます。さらに、「最低限必要な換気量」という表現を見落として、大きめの安全側の数値を選んでしまうのも典型的な罠です。設備や衛生の問題では、条件を満たす最小値を問うのか、単に満たす値を問うのかで正答が変わります。日常感覚では「多めなら安心」と考えがちですが、試験では問題文の条件に忠実に判断することが重要です。
