出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物の構造概論第99問
問題
電気及び電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 同一定格の電力では、同一電流値であれば交流のビーク電圧値は、直流に比べて高い。
(2) 建築設備に電力を送るケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくする。
(3) 電動機の起動時に過電流が流れて異常を起こさないために、スターデルタ起動方式が用いられる。
(4) 契約電力50kW以上の建築物の場合、高圧(6.6kV)で受電し、自家用変電設備で低圧(200V·100V)に変圧して給電する。
(5) 高さ31mを超える建築物には、非常コンセント設備の設置が義務付けられている。
ビル管過去問|建築物の電気設備(受電方式・スターデルタ起動)を解説
この問題は、建築物の電気設備に関する基礎知識を問うものです。交流と直流の電圧の考え方、ケーブルと遮断器の関係、電動機の起動方式、高圧受電、非常コンセント設備の設置基準を整理しておく必要があります。不適切な選択肢は(5)です。非常コンセント設備は、高さ31mを超える建築物に一律で義務付けられるものではなく、原則として高さ31mを超える階などに設置される消防用設備であるため、この記述が誤りです。
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(1) 同一定格の電力では、同一電流値であれば交流のビーク電圧値は、直流に比べて高い。
適切です。交流で一般に表示される電圧は実効値です。正弦波交流では、ピーク電圧は実効値の約1.41倍になります。一方、直流では電圧が一定であるため、実効値と最大値は同じと考えます。そのため、同じ電力、同じ電流値で比較すると、交流のピーク電圧値は直流より高くなります。交流では「表示されている電圧」と「瞬間的な最大電圧」が異なる点を押さえることが大切です。
(2) 建築設備に電力を送るケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくする。
適切です。ケーブルには、安全に流すことができる電流の上限である許容電流があります。配線用遮断器は、過電流が流れたときに回路を遮断してケーブルや設備を保護する装置です。もしケーブルの許容電流値が遮断器の定格電流値より小さいと、遮断器が作動する前にケーブルが過熱する危険があります。そのため、ケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくしておく必要があります。
(3) 電動機の起動時に過電流が流れて異常を起こさないために、スターデルタ起動方式が用いられる。
適切です。電動機は起動時に大きな電流が流れます。この起動電流が大きすぎると、電源電圧の低下や機器への負担につながります。スターデルタ起動方式は、起動時にスター結線として電動機にかかる電圧を下げ、起動後にデルタ結線へ切り替える方式です。これにより、起動電流を抑えることができます。ビル設備ではポンプや送風機など電動機を使う設備が多いため、起動方式の目的はよく問われます。
(4) 契約電力50kW以上の建築物の場合、高圧(6.6kV)で受電し、自家用変電設備で低圧(200V·100V)に変圧して給電する。
適切です。契約電力が50kW以上の建築物では、一般に高圧で受電します。高圧受電では、電力会社から6.6kVで電気を受け、自家用変電設備で低圧の200Vや100Vに変圧して、照明、コンセント、空調設備、ポンプなどに供給します。大きな建築物では多くの電力を使用するため、低圧で直接受電するのではなく、高圧で受電して建物内で使いやすい電圧に変換する仕組みになっています。
(5) 高さ31mを超える建築物には、非常コンセント設備の設置が義務付けられている。
不適切です。非常コンセント設備は、消防活動時に消防隊が照明器具や排煙機器などを使用するための電源を確保する設備です。ただし、「高さ31mを超える建築物そのもの」に一律で設置義務があるという表現は正確ではありません。非常コンセント設備は、原則として高さ31mを超える階など、消防活動上必要となる部分に設置される設備です。高さ31mという数値は重要ですが、「建築物全体に義務付けられる」と読み取ると誤りになります。試験では、このように基準値と設置対象の言い方がずれている記述に注意が必要です。
この問題で覚えるポイント
交流の電圧は、通常は実効値で表されます。正弦波交流では、ピーク値は実効値の約1.41倍になります。直流は電圧が一定であるため、交流と直流を比較するときは、実効値とピーク値の違いを意識することが正誤判断に直結します。
ケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくするのが原則です。遮断器はケーブルを保護するための装置であり、ケーブルが先に過熱してしまうような組合せは不適切です。電気設備では「遮断器が先に保護する」という考え方を押さえておくと判断しやすくなります。
電動機は起動時に大きな電流が流れます。スターデルタ起動方式は、この起動電流を抑えるための代表的な起動方式です。スター結線で起動し、回転が安定してからデルタ結線に切り替えることで、電源や機器への負担を軽減します。
契約電力50kW以上の建築物では、一般に高圧6.6kVで受電し、自家用変電設備で低圧200Vや100Vに変圧して使用します。高圧受電、自家用変電設備、低圧への変圧という流れは、建築物の電気設備で頻出の基本知識です。
非常コンセント設備は、消防活動を支援するための設備です。高さ31mという数値は重要ですが、設置義務の対象は「高さ31mを超える建築物全体」と単純に覚えるのではなく、「高さ31mを超える階など、消防活動上必要な部分」と理解することが大切です。
ひっかけポイント
この問題の大きなひっかけは、重要な数値だけを覚えている受験者を狙っている点です。「高さ31m」と聞くと、高層建築物や消防用設備に関係する基準だと判断できます。しかし、数値が正しくても、設置対象の表現が正確でなければ誤りになります。
電気設備の問題では、日常感覚だけで判断すると間違えやすい内容が出ます。たとえば、交流100Vと聞くと最大電圧も100Vのように感じますが、実際には交流の表示電圧は実効値であり、ピーク値はそれより高くなります。このように、電気では「表示値」と「実際の瞬間値」が異なる場合があります。
配線用遮断器とケーブルの関係では、どちらの電流値を大きくすべきかが混乱しやすいです。遮断器の容量を大きくすれば安心という発想は危険です。遮断器が大きすぎると、ケーブルを保護できなくなるため、ケーブルの許容電流値のほうを遮断器の定格電流値より大きくする必要があります。
高圧受電では、50kW以上、6.6kV、自家用変電設備、200V·100Vという言葉がセットで出題されやすいです。一部の数値だけで判断せず、受電から変圧、建物内への給電までの流れとして理解しておくと、似た問題にも対応しやすくなります。