問題
電気及び電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 同一定格の電力では、同一電流値であれば交流のビーク電圧値は、直流に比べて高い。
(2) 建築設備に電力を送るケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくする。
(3) 電動機の起動時に過電流が流れて異常を起こさないために、スターデルタ起動方式が用いられる。
(4) 契約電力50kW以上の建築物の場合、高圧(6.6kV)で受電し、自家用変電設備で低圧(200V・100V)に変圧して給電する。
(5) 高さ31mを超える建築物には、非常コンセント設備の設置が義務付けられている。
ビル管過去問|建築物の電気設備(受電方式・スターデルタ起動)を解説
この問題は、交流と直流の電圧の考え方、ケーブルと遮断器の関係、電動機の起動方式、高圧受電の基本、非常コンセント設備の設置基準について問う問題です。電気設備では、数値や用語を丸暗記するだけでなく、「なぜそうなるのか」を理解しておくことが重要です。正しい選択肢は(1)から(4)で、最も不適当なのは(5)です。(5)は「高さ31mを超える建築物」という表現に引っ張られやすいですが、非常コンセント設備は単純に高さ31m超だけで一律に設置義務となるわけではなく、11階以上の階などの基準で設置されるため不適切です。
(1) 同一定格の電力では、同一電流値であれば交流のビーク電圧値は、直流に比べて高い。
適切です。その理由は、交流では通常「実効値」で電圧を表しますが、波形の最大値であるビーク値は実効値より大きく、正弦波交流では最大値は実効値の√2倍になるためです。たとえば100Vの交流は実効値100Vであり、ビーク値は約141Vになります。一方、直流は時間的に一定の電圧であり、交流のように実効値とビーク値を分けて考える性質がありません。そのため、同一電流値で比較した場合、交流のビーク電圧値は直流より高くなります。
(2) 建築設備に電力を送るケーブルの許容電流値は、配線用遮断器の定格電流値より大きくする。
適切です。その理由は、ケーブルが安全に流せる電流の上限である許容電流よりも、遮断器の定格電流が大きすぎると、ケーブルが危険な温度まで発熱しても遮断器が動作せず、絶縁劣化や焼損の原因になるからです。このため、原則として「電線の許容電流≧配線用遮断器の定格電流」となるように設計します。つまり、遮断器より先にケーブルが傷まないようにするのが基本であり、この記述は適切です。
(3) 電動機の起動時に過電流が流れて異常を起こさないために、スターデルタ起動方式が用いられる。
適切です。その理由は、三相誘導電動機は起動時に大きな始動電流が流れやすく、そのまま全電圧で起動すると配線や電源設備に大きな負担を与えることがあるためです。スターデルタ起動方式では、起動時にスター結線として電圧を下げ、始動電流と始動トルクを全電圧始動時のおおむね3分の1に抑えます。これにより、起動時の電気的ショックを軽減し、設備への負担や異常発生のリスクを低減できます。
(4) 契約電力50kW以上の建築物の場合、高圧(6.6kV)で受電し、自家用変電設備で低圧(200V・100V)に変圧して給電する。
適切です。その理由は、一般に契約電力が50kW以上2,000kW未満程度の需要家は高圧受電の対象となり、6,000V級で受電して需要家側の受変電設備で100Vや200Vに変圧して使用するのが基本だからです。ビル、病院、商業施設などでは、この方式により効率よく電力を受け、建物内の照明やコンセント、空調、動力設備へ給電します。設問では6.6kVとありますが、実務上は6kV級高圧受電として理解して差し支えありません。
(5) 高さ31mを超える建築物には、非常コンセント設備の設置が義務付けられている。
不適切です。その理由は、非常コンセント設備の設置基準は「高さ31mを超える建築物だから一律に必要」という単純なものではないからです。非常コンセント設備は、消防活動を行うための電源確保を目的として設けられる設備で、代表的には11階以上の階、一定規模以上の地下街、地下4階以下の一定規模の階などに設置されます。したがって、「高さ31mを超える建築物には義務付けられている」とだけ言い切るのは基準の捉え方として不正確であり、この選択肢が最も不適当です。
この問題で覚えるポイント
交流の電圧は実効値で表すのが基本で、ビーク値はそれより大きくなります。ケーブルは遮断器より先に傷んではいけないため、許容電流は遮断器の定格電流以上にするのが原則です。スターデルタ起動は、電動機の始動電流を抑える代表的な方法です。契約電力50kW以上では、高圧受電して自家用変電設備で低圧に落として使うのが基本です。非常コンセント設備は「31m超」で覚えるのではなく、「11階以上の階など消防活動上必要な場所に設置」と整理して覚えると正答しやすいです。
ひっかけポイント
「高さ31m超」という数字は、高層建築物や非常用昇降機、防炎物品など別の基準でも頻出するため、非常コンセント設備の基準と混同しやすいです。また、交流100Vをそのまま最大値100Vと思ってしまうミスにも注意が必要です。さらに、遮断器が守ってくれるからケーブルはそれより細くてよい、と逆に考えてしまうのも典型的な誤りです。電気設備の問題では、数値だけでなく「何を守るための基準か」を押さえることが得点につながります。
