【ビル管過去問】令和7年度 問題67|蓄熱システムを解説

問題

蓄熱システムに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 一般的には、夏期冷房最盛期よりも、冬期暖房最盛期における電力負荷平準化効果が大きい。

(2) 躯体蓄熱システムは、氷蓄熱システムに比べて熱損失が大きい。

(3) 蓄熱システムの採用により、熱源装置の容量を削減できる効果がある。

(4) 潜熱利用蓄熱材としては、氷・無機水和塩類等が利用されている。

(5) 顕熱利用蓄熱材としては、水・土壌・RC躯体等が利用されている。

ビル管過去問|蓄熱システムを解説

この問題は、蓄熱システムの基本的な種類と特徴、さらに負荷平準化や熱損失、蓄熱材の分類について理解しているかを問う問題です。蓄熱システムは、夜間など負荷の小さい時間帯に熱をためて、昼間の空調負荷が大きい時間帯にその熱を利用する仕組みです。これにより、電力負荷の平準化や熱源機器の容量低減が期待できます。正しい選択肢を判断するには、氷蓄熱・躯体蓄熱・顕熱蓄熱・潜熱蓄熱の違いを整理しておくことが重要です。最も不適当なのは(1)です。一般的には、冬期暖房よりも夏期冷房のほうが電力需要のピークが大きくなりやすく、蓄熱システムによる電力負荷平準化効果も冷房期のほうが大きく現れやすいためです。

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(1) 一般的には、夏期冷房最盛期よりも、冬期暖房最盛期における電力負荷平準化効果が大きい。

不適切です。その理由は、蓄熱システムは主として夏期冷房時の昼間ピーク電力を抑える効果が大きいからです。冷房需要が高まる夏季の日中は、建物全体で空調負荷が集中しやすく、電力使用量も大きくなります。これに対して、夜間に冷水や氷として熱をためておき、昼間にその冷熱を使えば、昼間の電力消費を抑えることができます。冬期暖房でも蓄熱の活用はありますが、日本の一般的な建築設備では、冷房期のほうが電力ピーク対策としての意義が大きいです。そのため、「冬期暖房最盛期のほうが平準化効果が大きい」という記述は一般的な説明として誤りです。

(2) 躯体蓄熱システムは、氷蓄熱システムに比べて熱損失が大きい。

適切です。その理由は、躯体蓄熱システムは建物の床や梁、スラブなどのコンクリート躯体に熱を蓄える方式であり、蓄熱体が広い範囲に分散しているため、周囲への熱の逃げやすさを無視できないからです。一方、氷蓄熱システムは専用の蓄熱槽内で比較的集中的に蓄熱を行い、断熱もしやすい構造です。また、氷は融解潜熱を利用するため、コンパクトに大きな熱量を蓄えられる利点があります。躯体蓄熱は設備としてシンプルな面もありますが、熱の出し入れや制御、不要な部位への熱移動などの影響を受けやすく、氷蓄熱に比べると熱損失が大きくなりやすいです。

(3) 蓄熱システムの採用により、熱源装置の容量を削減できる効果がある。

適切です。その理由は、蓄熱システムでは空調負荷の大きい時間帯に熱源機をフル能力で運転しなくてもよくなるためです。通常、空調設備は昼間の最大負荷に合わせて熱源装置の容量を決めますが、蓄熱を行えば夜間にも熱をつくってためておけます。その結果、昼間の最大負荷の一部を蓄熱分でまかなうことができ、熱源機本体の必要容量を小さくできる場合があります。これは設備の受電容量や契約電力の抑制にもつながる重要な効果です。

(4) 潜熱利用蓄熱材としては、氷・無機水和塩類等が利用されている。

適切です。その理由は、潜熱利用蓄熱材は、物質が相変化するときに出入りする熱を利用するものだからです。代表例が氷で、水が氷になる、あるいは氷が溶ける際の相変化熱を利用して大きな熱量を効率的に蓄えます。また、無機水和塩類も融解・凝固の際の潜熱を利用できる材料として知られています。潜熱蓄熱は、温度変化が比較的小さくても多くの熱を蓄えられるため、設備の小型化や高密度蓄熱に有利です。

(5) 顕熱利用蓄熱材としては、水・土壌・RC躯体等が利用されている。

適切です。その理由は、顕熱利用蓄熱とは、物質自体の温度変化によって熱を蓄える方式だからです。水は比熱が大きく扱いやすいため、顕熱蓄熱材の代表例です。また、土壌やRC躯体も温度を上げ下げすることで熱を蓄えることができます。RC躯体蓄熱はまさにこの考え方を利用したもので、建物のコンクリート部分に冷熱または温熱をためます。相変化を使う潜熱蓄熱とは異なり、顕熱蓄熱では温度差そのものが蓄熱量を左右する点が特徴です。

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この問題で覚えるポイント

蓄熱システムは、夜間など負荷の低い時間帯に熱をつくってため、昼間のピーク負荷を抑える仕組みです。
一般に電力負荷平準化の効果は、暖房期よりも冷房期で大きくなりやすいです。
氷蓄熱は潜熱を利用するため、コンパクトに大きな熱量を蓄えられます。
躯体蓄熱はRC躯体などを利用する顕熱蓄熱で、熱損失や制御面に注意が必要です。
蓄熱システムを採用すると、最大負荷を分散できるため、熱源装置容量の低減が期待できます。
顕熱蓄熱は水・土壌・RC躯体、潜熱蓄熱は氷・無機水和塩類が代表例です。

ひっかけポイント

「暖房のほうが冬に厳しいから平準化効果も大きい」と感覚で判断すると誤りやすいです。試験では一般論として、冷房ピーク対策としての蓄熱が重要です。
「氷蓄熱は特殊だから損失が大きそう」と逆に考えてしまいやすいですが、実際は高密度に蓄熱でき、専用槽で管理しやすい方式です。
顕熱と潜熱の違いをあいまいに覚えていると、水と氷を取り違えやすいです。温度変化でためるのが顕熱、相変化でためるのが潜熱です。
RC躯体は建物そのものを使うため、蓄熱材として見落としやすいです。
「蓄熱設備を入れると設備が増えるので熱源容量も増える」と考えるのは誤りで、むしろピーク分散により熱源容量を抑えられる点が重要です。

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