問題
電離放射線に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 電離放射線は、物質をイオン化する作用を持つ。
(2) 放射能とは、放射性物質が放射線を出して壊変していく性質をいう。
(3) β線は、鉛、鉄の板を透過する。
(4) 細胞のうち、放射線感受性が最も低い細胞は神経細胞である。
(5) 生体内に取り込んだ放射性物質が2分の1量になるまでの時間を、生物学的半減期という。
ビル管過去問|電離放射線を解説
この問題は、電離放射線の基本的な性質や生体影響に関する知識を問うものです。放射線の種類ごとの透過力、放射能の定義、生体に対する影響などがポイントになります。特に重要なのは、放射線の種類による透過力の違いです。α線・β線・γ線では遮へい方法が大きく異なります。この問題では、β線の透過力について誤った説明をしている選択肢(3)が最も不適当です。
(1) 電離放射線は、物質をイオン化する作用を持つ。
適切です。電離放射線とは、物質に当たったときに原子や分子から電子をはじき出し、イオン化させる能力を持つ放射線のことです。代表的なものには、α線、β線、γ線、X線などがあります。これらは物質の構造を変化させる作用を持つため、生体に影響を与える可能性があります。例えば、細胞内のDNAに損傷を与えることで、細胞機能の障害や発がんなどの原因となる場合があります。このように、物質をイオン化する作用を持つ放射線を電離放射線と呼ぶため、この記述は正しいです。
(2) 放射能とは、放射性物質が放射線を出して壊変していく性質をいう。
適切です。放射能とは、放射性物質が自発的に放射線を放出しながら別の物質へと変化していく性質のことを指します。この現象を壊変と呼びます。放射線そのものを指す言葉ではなく、放射線を出す能力や性質のことを放射能といいます。例えば、ウランやラジウムなどの放射性物質は、時間の経過とともに放射線を出しながら別の元素へと変化していきます。このような性質を放射能と呼ぶため、この記述は正しいです。
(3) β線は、鉛、鉄の板を透過する。
不適切です。β線は電子の流れからなる放射線で、α線よりも透過力は強いものの、γ線ほど強くはありません。β線は紙よりは透過力が強いですが、アルミニウム板やプラスチック板などの比較的薄い材料で遮へいすることができます。鉛や鉄のような重い金属板は、通常はγ線の遮へいに用いられる材料です。したがって、β線が鉛や鉄の板を透過するという表現は適切ではありません。β線は一般的に数ミリ程度のアルミニウム板で遮へいできる程度の透過力であるため、この記述は誤りです。
(4) 細胞のうち、放射線感受性が最も低い細胞は神経細胞である。
適切です。放射線感受性とは、細胞が放射線の影響を受けやすい程度を指します。一般的に、分裂が盛んな細胞ほど放射線に対して感受性が高いとされています。例えば、骨髄細胞や生殖細胞、腸の上皮細胞などは分裂が活発なため放射線感受性が高い細胞です。一方で、神経細胞や筋細胞のようにほとんど分裂しない細胞は、放射線感受性が低いとされています。そのため、神経細胞は放射線感受性が低い細胞の代表例であり、この記述は正しいです。
(5) 生体内に取り込んだ放射性物質が2分の1量になるまでの時間を、生物学的半減期という。
適切です。生物学的半減期とは、生体内に取り込まれた物質が代謝や排泄などの生理的な作用によって体内量が半分になるまでに要する時間のことです。放射性物質の場合、体内に取り込まれた後、尿や便などを通じて徐々に排出されていきます。このように、生体の働きによって体内量が半分になるまでの時間を生物学的半減期といいます。なお、放射性物質の減少には、物理的半減期と生物学的半減期の両方が関係します。この記述は正しい内容です。
この問題で覚えるポイント
放射線にはα線・β線・γ線などがあり、それぞれ透過力が異なる。α線は紙で遮へいできる。β線はアルミニウム板程度で遮へいできる。γ線は透過力が非常に強く、鉛やコンクリートで遮へいする。放射能とは、放射線を出して壊変する性質のこと。分裂が盛んな細胞ほど放射線感受性が高く、神経細胞は感受性が低い。
ひっかけポイント
β線とγ線の透過力を混同させる問題がよく出題される。鉛で遮へいする放射線は基本的にγ線である。放射能と放射線の意味を混同しないこと。半減期には物理的半減期と生物学的半減期がある点にも注意する。
