出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働生理第30問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
(2) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(3) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5) 不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
第二種衛生管理者|体温調節の仕組みを解説
体温調節では、体温を一定範囲に保つために、視床下部を中心として発汗、皮膚血管の収縮や拡張、筋肉のふるえなどが調整されます。正しい記述は、体温調節中枢が間脳の視床下部にあるとする(1)です。体温調節は恒常性、つまりホメオスタシスの代表例であり、寒冷時には熱を逃がさないために皮膚血管が収縮し、暑熱時には発汗や皮膚血管の拡張によって熱を放散します。

(1) 体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
適切です。体温調節中枢は間脳にある視床下部に存在します。視床下部は、体温、空腹、のどの渇き、自律神経、内分泌などを調整する重要な部位です。体温が上がり過ぎたときは発汗を促し、皮膚血管を拡張させて熱を逃がします。体温が下がり過ぎたときは皮膚血管を収縮させ、必要に応じて筋肉をふるえさせて熱を作ります。体温調節の中心は視床下部、と押さえておくと正誤判断がしやすくなります。
(2) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
不適切です。外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする仕組みは、同調性ではなく恒常性、またはホメオスタシスといいます。体温、血糖値、血液中の水分量、酸塩基平衡などを一定範囲に保つ働きがこれに当たります。また、体温調節は筋肉と神経系だけでなく、自律神経系、内分泌系、循環器系、汗腺などが関係します。用語としては、同調性ではなく恒常性を選ぶことが重要です。
(3) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
不適切です。寒冷な環境では、体温を逃がさないように皮膚の血管は収縮します。皮膚血管が収縮すると、皮膚を流れる血液量が減り、体表面から外へ逃げる熱が少なくなります。逆に、暑い環境では皮膚血管が拡張して血流量が増え、体表面から熱を放散しやすくなります。寒いときは収縮、暑いときは拡張という対応関係で覚えると整理しやすいです。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
不適切です。汗が蒸発するときには気化熱が奪われるため、体温を下げる効果があります。しかし、体重70kgの人の体温を約1℃下げるには、10g程度の汗では足りません。水分の蒸発による放熱量は一定ありますが、体全体の温度を1℃下げるにはかなり大きな熱量を奪う必要があります。試験では、汗の蒸発は体温低下に役立つという方向性だけでなく、数値が極端に小さくないかにも注意が必要です。
(5) 不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
不適切です。不感蒸泄とは、汗として自覚されないまま、皮膚や呼気から水分が失われることをいいます。目に見える汗や、運動後に流れる汗とは区別されます。発汗は汗腺から汗として水分が分泌される現象であり、不感蒸泄は自分では感じにくい水分喪失です。汗をかいていないように見えても、皮膚や呼吸から水分は少しずつ失われているという点が大切です。
この問題で覚えるポイント
体温調節中枢は間脳の視床下部にあります。外部環境が変化しても体内の状態を一定に保つ仕組みは恒常性、またはホメオスタシスといいます。寒冷時には皮膚血管が収縮し、皮膚への血流量を減らして熱の放散を抑えます。暑熱時には皮膚血管が拡張し、発汗も増えて熱の放散を促します。発汗による体温低下は、汗が蒸発するときに気化熱を奪うことで起こります。不感蒸泄は、発汗として自覚されない水分喪失であり、皮膚や呼気から常に起こっています。試験では、視床下部、恒常性、寒冷時の血管収縮、暑熱時の血管拡張、発汗と不感蒸泄の違いを正確に区別できることが重要です。
ひっかけポイント
このテーマでは、用語の入れ替えと、寒冷時と暑熱時の反応の逆転がよく狙われます。恒常性を同調性など別の言葉に置き換えたり、寒いときに血管が拡張するとしたりする文章は、もっともらしく見えても誤りです。また、発汗と不感蒸泄はどちらも水分が失われる現象なので混同しやすいですが、汗として自覚できるかどうかが判断の分かれ目です。数値問題では、汗の蒸発が体温を下げるという方向性だけで判断せず、その数値が現実的かどうかを見る必要があります。体温調節は、日常感覚で考えると正しそうに見える選択肢が混じりやすいため、視床下部、恒常性、血管の収縮と拡張、不感蒸泄という基本語をセットで覚えることが得点につながります。
