出典:第二種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|関係法令第5問
問題
産業医の職務として、法令に定められていない事項は次のうちどれか。ただし、次のそれぞれの事項のうち医学に関する専門的知識を必要とするものに限るものとする。
(1) 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
(2) 作業の管理に関すること。
(3) 健康診断の実施に関すること。
(4) 衛生教育に関すること。
(5) 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
第二種衛生管理者|産業医の職務範囲|健康管理・衛生教育・作業管理の役割を解説
産業医の職務は、医学に関する専門的知識を必要とする健康管理、作業環境管理、作業管理、健康診断、衛生教育、健康障害の原因調査と再発防止措置などです。答えは(1)です。安全衛生に関する方針の表明は、事業者が行う安全衛生管理体制上の方針決定に関する事項であり、産業医の法定職務として定められているものではありません。

(1) 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
不適切です。その理由は、安全衛生に関する方針の表明は、事業場全体の安全衛生活動の方向性を示す経営上、管理上の事項だからです。産業医は医学的専門知識に基づいて労働者の健康管理について助言や指導を行う立場ですが、事業者に代わって安全衛生方針そのものを表明する職務までは法令上定められていません。安全衛生方針の表明は、労働安全衛生マネジメントや事業者責任に関係する事項として整理します。
(2) 作業の管理に関すること。
適切です。その理由は、産業医の職務には、医学的な専門知識を必要とする作業管理に関する事項が含まれるためです。作業管理とは、作業方法、作業姿勢、作業時間、作業負荷などを適切に管理し、労働者の健康障害を防ぐための取組です。たとえば、長時間労働による健康リスク、腰痛を起こしやすい作業姿勢、暑熱作業での休憩の取り方などについて、産業医が医学的見地から助言することがあります。
(3) 健康診断の実施に関すること。
適切です。その理由は、健康診断の実施とその結果に基づく措置は、産業医の重要な職務に含まれるためです。産業医は、健康診断の結果を確認し、異常所見のある労働者について就業上の措置が必要かどうかを医学的に判断します。たとえば、就業制限、作業転換、労働時間の短縮、精密検査の勧奨などについて、事業者に意見を述べることがあります。
(4) 衛生教育に関すること。
適切です。その理由は、医学に関する専門的知識を必要とする衛生教育は、産業医の職務に含まれるためです。衛生教育とは、労働者が健康障害を防ぐために必要な知識を身につける教育です。たとえば、生活習慣病予防、メンタルヘルス、熱中症予防、感染症対策、長時間労働による健康障害の防止などについて、産業医が専門的立場から教育や助言を行うことがあります。
(5) 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
適切です。その理由は、労働者に健康障害が発生した場合、その原因を医学的に調査し、再発防止のために必要な措置を検討することは、産業医の職務に含まれるためです。たとえば、職場環境、作業内容、労働時間、化学物質へのばく露、心理的負荷などが健康障害に関係していないかを確認し、必要に応じて作業方法の改善や配置転換、作業環境の改善などについて意見を述べます。
この問題で覚えるポイント
産業医の職務は、医学的専門知識を必要とする労働者の健康確保に関する事項です。代表的なものは、健康診断の実施と結果に基づく措置、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、作業環境管理、作業管理、健康管理、健康教育、衛生教育、健康障害の原因調査と再発防止措置です。産業医は医師として、労働者の健康状態と職場環境や作業条件を結びつけて判断する役割を持ちます。試験では、産業医の職務に含まれるかどうかを判断するときに、「医学的専門知識を必要とする健康管理に関係するか」を基準にすると整理しやすいです。安全衛生に関する方針の表明のように、事業場全体の方針決定や経営管理に属する事項は、産業医の法定職務とは区別して覚えます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「安全衛生」という言葉が入っているため、産業医の職務のように見えてしまう点です。産業医は安全衛生管理体制の中で重要な役割を担いますが、すべての安全衛生事項を担当するわけではありません。特に、安全衛生に関する方針の表明は、医学的判断というよりも事業者が組織として示す基本方針です。作業管理、衛生教育、健康診断、健康障害の原因調査は、いずれも医学的専門知識と結びつくため産業医の職務に含まれます。似た言葉に惑わされず、「産業医は医学的専門知識で労働者の健康を守る職務」と考えると、正誤判断が安定します。
