【第一種衛生管理者過去問】2023年4月公表問題|問30|労働衛生統計の基礎・正規分布・静態データと動態データ|労働衛生(有害業務以外)を解説

出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第30問

問題

労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値及び中央値によって表される。

(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。

(3) 健康管理統計において、ある時点での集団に関するデータを静態データといい、「有所見率」は静態データの一つである。

(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。

(5) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。

第1種衛生管理者|労働衛生統計の基礎・正規分布・静態データと動態データを解説

労働衛生統計では、平均値、中央値、分散、標準偏差、静態データ、計数データ、計量データなどの基本用語を正しく区別することが大切です。答えは(1)です。正規分布における「ばらつきの程度」は、平均値や中央値ではなく、分散や標準偏差によって表されます。平均値や中央値はデータの中心的位置を示す値であり、ばらつきそのものを示す値ではありません。

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(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値及び中央値によって表される。

不適切です。平均値と中央値は、データの中心がどのあたりにあるかを示す代表値です。たとえば、身長や血圧などの測定値について、集団全体の中心的な水準を把握するために使われます。これに対して、データがどの程度散らばっているか、つまりばらつきの程度を示すのは分散や標準偏差です。正規分布では、平均値を中心として左右対称にデータが分布し、平均値と中央値は一致しますが、これらはあくまで中心を示す値です。平均値が同じ集団でも、測定値が平均付近に密集している場合と、大きく散らばっている場合では、集団の性質は異なります。この散らばりを評価するために標準偏差などを用います。したがって、「ばらつきの程度は、平均値及び中央値によって表される」という記述は誤りです。

(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。

適切です。平均値はデータの中心を示しますが、集団の特徴をそれだけで判断することはできません。たとえば、2つの職場で平均血圧が同じであっても、一方は全員が平均付近に集中しており、もう一方は低い人と高い人が大きく分かれている場合があります。この場合、平均値は同じでも、ばらつきの程度を示す分散や標準偏差は異なります。分散が異なれば、データの散らばり方が異なるため、集団の特徴も異なると評価できます。労働衛生管理では、平均値だけでなく、ばらつきや分布の形も確認することが重要です。

(3) 健康管理統計において、ある時点での集団に関するデータを静態データといい、「有所見率」は静態データの一つである。

適切です。静態データとは、ある一時点における集団の状態を示すデータです。健康診断の結果における有所見率は、一定の時点で受診者のうち所見があった人の割合を示すものなので、静態データに該当します。これに対して、出生、死亡、疾病発生、休業発生など、一定期間内に起こった事象の変化を示すものは動態データとして整理されます。衛生管理者試験では、静態データと動態データの違いがよく問われます。静態データは「ある時点の状態」、動態データは「一定期間の動き」と考えると区別しやすいです。

(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。

適切です。相関関係とは、一方の値が増えるともう一方の値も増える、または一方が増えるともう一方が減るといった統計上の関連をいいます。ただし、相関があるからといって、必ず一方が他方の原因であるとはいえません。たまたま同時に増減している場合や、別の要因が両方に影響している場合もあります。たとえば、ある作業環境要因と健康影響に関連が見られたとしても、それだけで直ちに因果関係が証明されたとは判断できません。因果関係を考えるには、時間的な前後関係、他の要因の影響、調査方法などを総合的に検討する必要があります。

(5) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。

適切です。計数データとは、人数、件数、回数のように数えて得られるデータです。健康診断における対象人数、受診者数、有所見者数などがこれに当たります。計量データとは、身長、体重、血圧、血糖値のように測定して得られる連続的なデータです。計数データは「何人、何件」と数えるもの、計量データは「どれくらいの量か」を測るものと考えると区別しやすいです。統計問題では、この基本的な分類が正誤判断に直結します。

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この問題で覚えるポイント

労働衛生統計では、平均値と中央値はデータの中心を示す代表値であり、ばらつきを示す値ではありません。ばらつきの程度は分散や標準偏差で表します。正規分布では平均値を中心に左右対称にデータが分布し、平均値、中央値、最頻値が一致するのが基本です。ただし、正規分布であっても、散らばりの大きさは標準偏差などで確認します。静態データは、ある時点の集団の状態を示すデータであり、有所見率や受診率などが該当します。動態データは、一定期間内の発生や変化を示すデータであり、死亡数、疾病発生数、休業件数などが代表例です。計数データは人数、件数、回数のように数えて得るデータで、計量データは身長、体重、血圧のように測定して得るデータです。また、相関関係は統計上の関連を示すだけであり、因果関係を直ちに証明するものではありません。統計の問題では、「中心を示す値」「ばらつきを示す値」「ある時点のデータ」「一定期間のデータ」「数えるデータ」「測るデータ」を区別できることが正答につながります。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、平均値や中央値というよく知られた用語を見て、統計的に正しそうだと感じてしまう点です。平均値と中央値は重要な統計量ですが、役割は「中心の位置」を示すことであり、「ばらつき」を示すことではありません。ばらつきと聞かれたら、分散や標準偏差を思い出す必要があります。また、平均値が同じなら同じ集団だと考えてしまうのも典型的な誤答パターンです。実際には、平均値が同じでも分散が異なれば、データの散らばり方が違うため、集団の特徴は異なります。さらに、相関関係と因果関係の混同もよく問われます。統計上の関連があることと、原因と結果の関係があることは別です。衛生管理者試験では、用語の意味を何となく覚えるのではなく、「何を示す指標なのか」という役割で整理すると、似た表現に惑わされにくくなります。

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