出典:第一種衛生管理者2024年(令和6年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第13問
問題
化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。
(2) 硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺(ひ)などがみられる。
(3) 弗(ふっ)化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。
(4) 二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕(しょく)症などがみられる。
(5) 二酸化窒素による中毒では、末梢(しょう)神経障害などがみられる。
第1種衛生管理者|化学物質中毒の種類・健康障害・標的臓器を解説
化学物質による中毒では、物質ごとに障害されやすい臓器や症状を結び付けて覚えることが大切です。答えは(5)です。二酸化窒素による中毒で重要なのは、気道や肺への刺激、肺水腫などの呼吸器障害であり、末梢神経障害は代表的な症状ではありません。末梢神経障害は、ノルマルヘキサンなどの有機溶剤で問われやすい健康障害です。
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(1) シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。
適切です。シアン化水素は、体内で細胞が酸素を利用する仕組みを阻害する化学物質です。血液中に酸素があっても、細胞が酸素を使えなくなるため、全身の組織が酸素不足のような状態になります。その結果、呼吸困難、頭痛、めまい、けいれん、意識障害などが起こります。単なる気道刺激ではなく、細胞レベルで酸素利用が妨げられる点が重要です。
(2) 硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺(ひ)などがみられる。
適切です。硫化水素は、腐卵臭のある有毒ガスとして知られていますが、高濃度では嗅覚が麻痺するため、臭いで危険を判断することはできません。中毒では、眼や気道への刺激のほか、重症例では意識消失や呼吸麻痺が起こります。特に高濃度ばく露では急激に生命に関わるため、酸素欠乏危険作業などと関連して出題されることもあります。
(3) 弗(ふっ)化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。
適切です。弗化水素や弗化物による慢性中毒では、弗素が骨や歯に影響を及ぼすことがあります。代表的な障害として、骨の硬化や斑状歯が挙げられます。斑状歯とは、歯に白色や褐色のまだら模様が生じる状態です。弗素は歯や骨と関係が深い物質であるため、慢性中毒では骨と歯への影響を結び付けて覚えると整理しやすいです。
(4) 二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕(しょく)症などがみられる。
適切です。二酸化硫黄は刺激性の強いガスで、呼吸器の粘膜を刺激します。慢性的にばく露されると、気道の炎症が続き、慢性気管支炎などを起こすことがあります。また、酸性の性質により歯が侵される歯牙酸蝕症もみられます。二酸化硫黄は「呼吸器刺激」と「歯への酸による影響」を関連付けて覚えるとよいです。
(5) 二酸化窒素による中毒では、末梢(しょう)神経障害などがみられる。
不適切です。二酸化窒素は、代表的には呼吸器に障害を起こす刺激性ガスです。ばく露により、咳、息苦しさ、気道刺激、気管支炎、肺水腫などが問題になります。特に肺水腫は、ばく露直後ではなく時間が経ってから症状が強くなることがあり、注意が必要です。末梢神経障害は二酸化窒素の代表的な中毒症状ではなく、ノルマルヘキサンなどで問われやすい症状です。この選択肢は、化学物質と標的臓器の組合せを入れ替えたひっかけです。
この問題で覚えるポイント
化学物質による健康障害は、物質名と標的臓器をセットで覚えることが正誤判断に直結します。シアン化水素は細胞内で酸素を利用できなくするため、呼吸困難やけいれんなどの全身性の急性中毒を起こします。硫化水素は高濃度で意識消失や呼吸麻痺を起こす危険なガスで、臭いに頼って判断しないことが重要です。弗化水素の慢性中毒では、骨の硬化や斑状歯など、骨と歯への影響が代表的です。二酸化硫黄は刺激性ガスであり、慢性気管支炎や歯牙酸蝕症と結び付けます。二酸化窒素も呼吸器障害が中心で、肺水腫などが重要です。末梢神経障害は、二酸化窒素ではなく、ノルマルヘキサンなどの有機溶剤で問われやすい症状として区別して覚えます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、化学物質名と健康障害の組合せを一部だけ入れ替えている点です。どの選択肢も「中毒症状らしい言葉」が並んでいるため、症状名だけを見ると正しく感じやすくなります。しかし、衛生管理者試験では、症状が存在するかどうかではなく、その物質の代表的な健康障害として正しいかが問われます。特に、二酸化窒素は「窒素」という語から神経系の障害を連想してしまうと誤りやすいですが、実際には気道や肺などの呼吸器障害が中心です。末梢神経障害は有機溶剤、とくにノルマルヘキサンなどと結び付けて整理すると、同じような組合せ問題にも対応しやすくなります。
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