出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)4月公表問題|労働生理第41問
問題
筋肉に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮するが、神経に比べて疲労しやすい。
(2) 筋収縮には、グリコーゲン、りん酸化合物などのエネルギー源が必要で、特に、直接のエネルギーはATPの加水分解によってまかなわれる。
(3) 筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差や年齢差はほとんどない。
(4) 運動することによって筋肉が太くなることを筋肉の活動性肥大という。
(5) 筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分に供給されると完全に分解され、最後に乳酸になる。
ビル管過去問|筋肉を解説を解説
筋肉の収縮、エネルギー源、疲労、筋力、筋肥大、グリコーゲン分解について整理する問題です。答えは(5)です。酸素が十分にある場合、筋肉中のグリコーゲンは最終的に二酸化炭素と水まで分解され、多くのATPを産生します。乳酸は、酸素の供給が不十分なときに生じやすい物質です。
(1) 筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮するが、神経に比べて疲労しやすい。
適切です。筋肉は、運動神経から伝わる刺激を受けて収縮します。神経は刺激を伝える役割を担いますが、筋肉は実際に収縮して力を発揮するため、エネルギーを消費し、代謝産物も生じます。そのため、神経に比べて疲労しやすいとされています。
(2) 筋収縮には、グリコーゲン、りん酸化合物などのエネルギー源が必要で、特に、直接のエネルギーはATPの加水分解によってまかなわれる。
適切です。筋肉が収縮するときに直接使われるエネルギーは、ATPがADPとリン酸に分解されるときに得られます。筋肉内にはATPのほか、クレアチンリン酸などのりん酸化合物や、グリコーゲンがエネルギー源として蓄えられています。ATPは量が限られるため、運動中はこれらのエネルギー源を利用してATPを補充しながら筋収縮を続けます。
(3) 筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差や年齢差はほとんどない。
適切です。全体としての筋力は、筋肉量や体格の違いにより性差や年齢差が現れます。しかし、筋肉の単位断面積当たりで比較すると、発揮できる力には大きな差はないとされています。つまり、筋力差の主な要因は筋肉の質そのものよりも、筋肉の量や断面積の違いです。
(4) 運動することによって筋肉が太くなることを筋肉の活動性肥大という。
適切です。筋肉は、運動やトレーニングによって繰り返し負荷を受けると、筋線維が太くなり、筋肉全体が発達します。これを活動性肥大といいます。反対に、長期間使わないことで筋肉が細くなる状態は廃用性萎縮と呼ばれます。
(5) 筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分に供給されると完全に分解され、最後に乳酸になる。
不適切です。酸素が十分に供給される有酸素的な条件では、グリコーゲン由来の糖は最終的に二酸化炭素と水にまで分解され、多くのATPを産生します。乳酸が生じるのは、激しい運動などで酸素の供給が不足し、糖が不完全に分解される場合です。この選択肢は、酸素が十分な場合と不足する場合の代謝を取り違えています。
この問題で覚えるポイント
筋肉は神経からの刺激を受けて収縮し、神経より疲労しやすい組織です。筋収縮の直接のエネルギー源はATPであり、ATPの加水分解によって収縮に必要なエネルギーが得られます。筋肉内のグリコーゲンやクレアチンリン酸などは、ATPを再合成するための重要なエネルギー源です。最大筋力は筋肉全体で見ると筋肉量の影響を受けますが、単位断面積当たりでは性差や年齢差はほとんどないとされます。運動によって筋肉が太くなることは活動性肥大、使わないことで筋肉が細くなることは廃用性萎縮です。グリコーゲンは酸素が十分にあると二酸化炭素と水まで分解され、酸素が不足すると乳酸が生じやすくなります。
ひっかけポイント
この問題の中心は、グリコーゲン分解の最終産物を酸素の有無で正しく区別できるかです。日常的に「激しい運動をすると乳酸がたまる」と覚えていると、グリコーゲンの分解は最後に乳酸になると考えてしまいがちです。しかし、乳酸は酸素が不足した条件で生じるものであり、酸素が十分にある場合の最終産物は二酸化炭素と水です。また、筋力の性差や年齢差については、筋肉全体の大きさで見るのか、単位断面積当たりで見るのかによって判断が変わります。試験では、このように条件を少し変えて正誤を問う表現に注意することが大切です。
