出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働生理第41問
問題
耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 耳は、聴覚、平衡感覚などをつかさどる器官で、外耳、中耳、内耳の三つの部位に分けられる。
(2) 耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3) 内耳は、前庭、半規管、蝸牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚を分担している。
(4) 半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じ、前庭は、体の回転の方向や速度を感じる。
(5) 鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
第1種衛生管理者|耳の構造と聴覚・平衡感覚の仕組みを解説
耳の構造と、聴覚・平衡感覚をどの部位が担当しているかを整理する問題です。答えは(4)です。誤りの理由は、半規管と前庭の働きが逆になっているためです。半規管は体の回転の方向や速度を感じ、前庭は体の傾きや直線的な加速度を感じます。耳は「外耳、中耳、内耳」に分けられ、音を伝える経路と、姿勢やバランスを保つ仕組みを分けて理解することが重要です。
(1) 耳は、聴覚、平衡感覚などをつかさどる器官で、外耳、中耳、内耳の三つの部位に分けられる。
適切です。耳は音を感じ取る聴覚器官であると同時に、体の傾きや回転を感じ取る平衡感覚の器官でもあります。構造上は、外耳、中耳、内耳の三つに分けられます。外耳は耳介や外耳道を含み、音を集めて鼓膜へ導く部分です。中耳には鼓膜や耳小骨、鼓室などがあり、音の振動を内耳へ伝える役割があります。内耳には蝸牛、前庭、半規管があり、蝸牛は聴覚、前庭と半規管は平衡感覚に関係します。
(2) 耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
適切です。耳介で集められた音は外耳道を通って鼓膜に届き、鼓膜を振動させます。この振動は中耳にある耳小骨に伝わります。耳小骨は、つち骨、きぬた骨、あぶみ骨からなる小さな骨の連なりで、鼓膜の振動を効率よく内耳へ伝える働きをします。空気中の音の振動を内耳のリンパ液の振動へ伝えるには調整が必要であり、耳小骨はその振動を増幅して内耳へ伝える重要な役割を担っています。
(3) 内耳は、前庭、半規管、蝸牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚を分担している。
適切です。内耳は、聴覚に関係する蝸牛と、平衡感覚に関係する前庭、半規管から構成されます。蝸牛は音の振動を神経の信号に変換し、聴神経を通じて脳へ伝えます。前庭と半規管は体の姿勢や動きを感じ取る部分で、立つ、歩く、姿勢を保つなどの動作に関係します。試験では、蝸牛は聴覚、前庭と半規管は平衡感覚という対応関係を押さえることが大切です。
(4) 半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じ、前庭は、体の回転の方向や速度を感じる。
不適切です。半規管と前庭の働きが逆です。半規管は、体や頭が回転したときの方向や速度を感じ取る器官です。たとえば、首を左右に回す、体を回転させるといった動きに関係します。前庭は、体の傾きや直線方向の動きを感じ取る器官です。たとえば、体が前後左右に傾く、エレベーターで上下に動く、乗り物が加速・減速するような動きに関係します。平衡感覚という点ではどちらも同じ内耳の器官ですが、感じ取る動きの種類が異なるため、ここが正誤判断の中心になります。
(5) 鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
適切です。鼓室は中耳にある空間で、耳管によって咽頭につながっています。耳管の働きにより、鼓室内の圧力は外気圧と等しく保たれます。飛行機の離着陸時や高い場所へ移動したときに耳が詰まったように感じるのは、外気圧と鼓室内圧に差が生じるためです。つばを飲み込んだり、あくびをしたりすると耳管が開き、圧力差が調整されます。鼓膜が正常に振動するためには、鼓膜の外側と内側の圧力がほぼ等しいことが重要です。
この問題で覚えるポイント
耳は外耳、中耳、内耳に分けられます。外耳は耳介と外耳道を中心に音を集めて鼓膜へ導く部分です。中耳は鼓膜、耳小骨、鼓室、耳管などからなり、音の振動を内耳へ伝える部分です。耳小骨は、つち骨、きぬた骨、あぶみ骨で構成され、鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝えます。内耳は蝸牛、前庭、半規管からなり、蝸牛は聴覚、前庭と半規管は平衡感覚を担当します。平衡感覚では、前庭は体の傾きや直線的な動きを感じ、半規管は体や頭の回転の方向や速度を感じます。鼓室は耳管によって咽頭に通じ、鼓室内の圧力を外気圧と等しく保つことで、鼓膜が正常に振動できるようにしています。
ひっかけポイント
このテーマで最も狙われやすいのは、前庭と半規管の働きの入れ替えです。どちらも内耳にあり、どちらも平衡感覚に関係するため、まとめて覚えていると誤答しやすくなります。前庭は傾きや直線的な動き、半規管は回転の動きと整理すると判断しやすくなります。また、耳の構造では、外耳、中耳、内耳の区分と、それぞれの役割が混同されやすいです。音を集めるのは外耳、振動を伝えて増幅するのは中耳、音を神経信号に変える蝸牛や平衡感覚に関係する前庭・半規管があるのは内耳です。耳管についても、鼓室と咽頭をつなぎ、鼓室内圧を外気圧に近づける働きがあると覚えると、気圧変化による耳の詰まりとも結びつけて理解できます。
