出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働生理第40問
問題
代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
(2) 代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3) 基礎代謝量は、安静時における心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量で、睡眠中の測定値で表される。
(4) エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。
(5) エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度を表すことができるが、精神的作業や静的筋作業には適用できない。
第1種衛生管理者|代謝の種類と基礎代謝量・エネルギー代謝率を解説を解説
代謝では、物質を分解してエネルギーを取り出す異化と、エネルギーを使って体に必要な物質を作る同化の区別が重要です。答えは(5)です。エネルギー代謝率は、筋肉を動かす動的筋作業の作業強度を表す指標ですが、精神的作業や静的筋作業のように酸素消費量だけでは負担を正確に表しにくい作業には適用しにくいからです。
(1) 代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
不適切です。体脂肪やグリコーゲンなどの物質が分解され、エネルギーが取り出されてATPが合成される過程は、同化ではなく異化です。異化は、大きな物質を小さな物質に分解し、その過程でエネルギーを得る反応です。たとえば、グリコーゲンが分解されてブドウ糖となり、さらにエネルギー産生に使われる流れは異化に当たります。同化は、反対にエネルギーを使って物質を合成する働きです。
(2) 代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
不適切です。栄養素を材料として、ATPのエネルギーを使い、蛋白質など体に必要な物質を合成する反応は、異化ではなく同化です。同化は、体を作る方向の代謝です。たとえば、アミノ酸から蛋白質を合成する反応や、ブドウ糖からグリコーゲンを合成して蓄える反応がこれに当たります。選択肢では、同化と異化の名称が逆になっています。
(3) 基礎代謝量は、安静時における心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量で、睡眠中の測定値で表される。
不適切です。基礎代謝量は、生命を維持するために必要な最小限のエネルギー代謝量をいいます。心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量という説明は正しいですが、睡眠中の測定値で表されるという部分が誤りです。基礎代謝量は、通常、早朝空腹時、覚醒した状態、安静臥床、快適な室温などの条件で測定されます。睡眠中は覚醒時より代謝が低下するため、基礎代謝量そのものを表す条件としては適切ではありません。
(4) エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。
不適切です。一定時間中に体内で消費された酸素量と排出された二酸化炭素量の容積比で表されるのは、呼吸商です。エネルギー代謝率は、作業によって増加した代謝量が基礎代謝量の何倍に相当するかを示す指標です。名称が似ていますが、酸素と二酸化炭素の比を問うものではありません。呼吸商は、体内で主に糖質、脂質、蛋白質のどれがエネルギー源として使われているかを推定する指標として扱われます。
(5) エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度を表すことができるが、精神的作業や静的筋作業には適用できない。
適切です。エネルギー代謝率は、身体を動かして酸素消費量が増えるような動的筋作業の強度を表すのに適しています。歩行、運搬、掘削作業のように筋肉が収縮と弛緩を繰り返す作業では、エネルギー消費量が作業強度に比較的よく対応します。一方で、精神的作業は頭脳や神経の負担が中心であり、酸素消費量の増加だけでは作業負担を十分に表せません。また、静的筋作業は、姿勢保持や力を入れ続ける作業のように、筋肉内の血流が妨げられて疲労が強く出ることがあります。そのため、エネルギー代謝率だけでは負担を適切に評価しにくいのです。
この問題で覚えるポイント
代謝は、異化と同化に分けて整理すると正誤判断がしやすくなります。異化は、体脂肪やグリコーゲンなどを分解してエネルギーを取り出し、ATPを合成する反応です。同化は、ATPのエネルギーを使って、アミノ酸から蛋白質を作るなど、体に必要な物質を合成する反応です。基礎代謝量は、生命維持に必要な最小限の代謝量であり、心臓の拍動、呼吸、体温保持などに使われます。測定条件は、睡眠中ではなく、早朝空腹時、覚醒時、安静状態などが基本です。エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度を表す指標であり、精神的作業や静的筋作業の負担評価には適しません。呼吸商は、酸素消費量と二酸化炭素排出量の比であり、エネルギー代謝率とは別の指標です。
ひっかけポイント
このテーマでは、同化と異化の用語を逆にした選択肢がよく出ます。分解してエネルギーを得るのが異化、エネルギーを使って合成するのが同化、と方向で覚えると判断しやすくなります。また、基礎代謝量は安静時の代謝量という印象から睡眠中と結びつけやすいですが、試験では覚醒した安静状態で測定する点が狙われます。さらに、酸素と二酸化炭素の容積比という説明は呼吸商であり、エネルギー代謝率ではありません。名称にエネルギーや代謝という言葉が含まれていても、何を比べている指標なのかを確認することが大切です。
