出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第4問
問題
次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものに該当しないものはどれか。
(1) 石綿等が使用されている建築物の解体等の作業に係る業務
(2) 潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務
(3) 廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
(4) 特定化学物質のうち第二類物質を取り扱う作業に係る業務
(5) エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
第1種衛生管理者|特別教育が必要な業務と労働安全衛生法の教育義務を解説
安全衛生のための特別教育は、危険又は有害な業務に労働者を就かせるときに、事業者があらかじめ行う必要がある教育です。答えは(4)です。特定化学物質のうち第二類物質を取り扱う作業そのものは、特別教育を行わなければならない業務としては挙げられていません。特定化学物質は健康障害を防止するための管理が重要ですが、特別教育の対象業務かどうかは、危険有害性の有無だけで判断するのではなく、法令上列挙されている業務に該当するかで判断します。
(1) 石綿等が使用されている建築物の解体等の作業に係る業務
適切です。石綿等が使用されている建築物や工作物の解体等の作業に係る業務は、特別教育が必要な業務に該当します。石綿は吸入すると肺がん、中皮腫、石綿肺などの重い健康障害を起こすおそれがあり、粉じんを飛散させない作業方法や保護具の使用、湿潤化、隔離などの知識が不可欠です。そのため、作業に就く前に安全衛生のための特別教育を行う必要があります。
(2) 潜水作業者への送気の調節を行うためのバルブ又はコックを操作する業務
適切です。潜水作業者への送気を調節するバルブ又はコックを操作する業務は、特別教育が必要な業務に該当します。潜水作業では、送気の不足や停止が直ちに生命の危険につながります。また、過剰な送気や不適切な操作も作業者の安全に影響します。潜水作業者本人だけでなく、送気を管理する者にも正しい知識と操作方法が求められるため、特別教育の対象となります。
(3) 廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
適切です。廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務は、特別教育が必要な業務に該当します。焼却灰には、ダイオキシン類などの有害物質が含まれる可能性があり、粉じんとして吸入したり皮膚に付着したりすることによって健康障害につながるおそれがあります。そのため、ばく露防止の方法、保護具の使用、作業後の洗浄、汚染拡大防止などについて教育を受ける必要があります。
(4) 特定化学物質のうち第二類物質を取り扱う作業に係る業務
不適切です。特定化学物質のうち第二類物質を取り扱う作業は、健康障害防止のための管理が必要な有害業務ですが、これだけをもって特別教育が必要な業務には該当しません。特定化学物質障害予防規則では、作業主任者の選任、局所排気装置などの発散抑制措置、作業環境測定、特殊健康診断などが重要になります。危険有害な物質を扱うから必ず特別教育が必要、と考えると誤りです。試験では、特別教育の対象として法令に列挙されている業務かどうかを確認することが大切です。
(5) エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
適切です。エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務は、特別教育が必要な業務に該当します。エックス線は電離放射線であり、適切に管理しなければ被ばくによる健康障害を起こすおそれがあります。透過写真撮影では、照射方向、管理区域、遮へい、立入禁止措置、線量管理などの理解が必要です。そのため、作業に就く労働者には、あらかじめ安全又は衛生のための特別教育を行わなければなりません。
この問題で覚えるポイント
特別教育は、危険又は有害な業務に労働者を就かせるときに、事業者があらかじめ行う教育です。判断の中心は、業務が危険そうかどうかではなく、労働安全衛生規則などで特別教育の対象として定められているかどうかです。石綿等が使用されている建築物の解体等の作業、潜水作業者への送気調節に関するバルブ又はコックの操作、廃棄物焼却施設での焼却灰の取扱い、エックス線装置を用いた透過写真撮影などは特別教育の対象として押さえておきます。特定化学物質を扱う業務は有害業務であり、作業主任者、作業環境測定、特殊健康診断、発散抑制措置などが重要になりますが、第二類物質を取り扱う作業というだけで特別教育の対象になるわけではありません。特別教育、作業主任者、作業環境測定、特殊健康診断はそれぞれ制度の目的が異なるため、セットで混同しないように整理することが重要です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「有害な作業ならすべて特別教育が必要」と考えさせる点にあります。特定化学物質の第二類物質は明らかに健康障害リスクのある物質なので、受験者は特別教育が必要だと思いやすいです。しかし、法令問題では日常感覚ではなく、どの義務がどの業務に課されているかを正確に区別する必要があります。特定化学物質では、特別教育よりも作業主任者、作業環境測定、特殊健康診断、局所排気装置などの管理措置が問われやすいです。似たように危険有害な業務が並んでいる場合は、危険性の大小ではなく、特別教育の対象業務として列挙されているかを確認するのが正答への近道です。
