出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働生理第43問
問題
ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
(2) ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
(3) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
(4) 職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
(5) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
第1種衛生管理者|ストレスの原因とストレスによる健康障害を解説
ストレスは、外部からの刺激であるストレッサーに対して、体が適応しようとして起こす心身の反応です。答えは(1)です。ストレッサーは心身の活動を一律に抑圧するのではなく、自律神経系や内分泌系を介して心拍数の増加、血圧上昇、ホルモン分泌などを引き起こし、身体を活動しやすい状態にすることもあります。ストレス反応は抑圧だけで説明できない点が重要です。
(1) 外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
不適切です。ストレッサーとは、暑さ、寒さ、騒音、人間関係、仕事上の変化など、心身に負担を与える外部からの刺激をいいます。ストレスを受けると、体はその刺激に対応するため、自律神経系や内分泌系を働かせます。このとき交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上昇したり、血糖値が上がったりして、むしろ活動に備える反応が起こります。もちろん、ストレスが長く続くと疲労感、意欲低下、睡眠障害などが現れ、心身の働きが低下することもあります。しかし、ストレッサーが常に心身の活動を抑圧するわけではありません。「その形態や程度にかかわらず」「抑圧する」と断定している点が誤りです。
(2) ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
適切です。ストレスを受けると、交感神経系や内分泌系が働きます。交感神経や副腎髄質からは、ノルアドレナリンやアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌され、心拍数の増加、血圧上昇、血糖値上昇などを引き起こします。また、副腎皮質から分泌されるホルモンもストレス反応に関与します。これらは、身体がストレスに対応するための重要な仕組みです。試験では、ストレス反応と自律神経系、内分泌系、カテコールアミン、副腎皮質ホルモンを結び付けて覚えると判断しやすくなります。
(3) 昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
適切です。ストレスの原因は、不快な出来事だけではありません。昇進のように一見すると望ましい出来事であっても、責任の増加、人間関係の変化、仕事量の増加などにより、心身に負担がかかることがあります。転勤や配置替えも、職場環境、通勤、業務内容、人間関係が変化するため、ストレスの原因になります。試験では、ストレスの原因を「嫌な出来事だけ」と考えないことが大切です。生活や仕事上の大きな変化は、良い変化であってもストレッサーになり得ます。
(4) 職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
適切です。ストレッサーには、心理的なものだけでなく、物理的・化学的な環境要因も含まれます。職場の騒音、暑熱、寒冷、不快な湿度、悪臭などは、作業者に不快感や疲労感を与え、集中力の低下や体調不良につながることがあります。衛生管理者試験では、ストレスをメンタル面だけでなく、作業環境管理とも関連するテーマとして理解することが重要です。職場環境の改善は、健康障害の予防だけでなく、ストレス対策としても意味があります。
(5) ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
適切です。ストレスが長く続くと、自律神経系や内分泌系の働きが乱れ、身体疾患につながることがあります。交感神経の緊張が続くと血圧が上がりやすくなり、高血圧症の原因の一つになります。また、心臓や血管への負担が増えることで、狭心症などの循環器疾患に関係することもあります。さらに、胃や十二指腸などの消化器にも影響し、十二指腸潰瘍などの発症に関与する場合があります。ストレスは気分の問題だけでなく、身体の病気にもつながる点を押さえておきましょう。
この問題で覚えるポイント
ストレスとは、ストレッサーに対して心身が適応しようとして起こす反応です。ストレッサーには、騒音、暑熱、寒冷、悪臭などの物理的環境要因、職場の人間関係や責任の増加などの心理社会的要因、昇進、転勤、配置替えなどの生活上・職場上の変化が含まれます。ストレス反応には、自律神経系と内分泌系が深く関与し、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが重要です。短期的には心拍数増加、血圧上昇、血糖値上昇など、身体を活動に備えさせる反応が起こります。長期的・過度なストレスでは、高血圧症、狭心症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、睡眠障害、抑うつ状態などにつながることがあります。試験では、ストレスを単なる精神的な悩みではなく、職場環境、身体反応、健康障害を結び付けて理解することが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、ストレス反応を「心身の活動を抑圧する」と一方向に決めつけている点です。日常感覚では、ストレスという言葉から疲れる、落ち込む、やる気がなくなるといったイメージを持ちやすいため、「抑圧する」という表現を正しいと感じてしまうことがあります。しかし専門的には、ストレスを受けた直後の身体は、交感神経やホルモンの働きによって、むしろ活動しやすい状態になることがあります。誤答を避けるには、「常に」「必ず」「その形態や程度にかかわらず」のような断定表現に注意することが重要です。ストレスは抑圧だけでなく、活動亢進、適応反応、長期化による健康障害まで含む広い概念として判断してください。
