出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第31問
問題
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づき、腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対して当該作業に配置する際に行う健康診断の項目として、適切でないものは次のうちどれか。
(1) 既往歴及び業務歴の調査
(2) 自覚症状の有無の検査
(3) 負荷心電図検査
(4) 神経学的検査
(5) 脊柱の検査
第1種衛生管理者|腰痛予防対策指針と腰痛健康診断の検査項目を解説
腰痛健康診断では、腰部に大きな負担がかかる作業に就く労働者について、腰痛の既往、現在の症状、神経症状、脊柱の状態などを確認します。答えは(3)負荷心電図検査です。負荷心電図検査は心臓の虚血性疾患などを調べる検査であり、腰痛予防のために配置時に行う健康診断項目には含まれません。腰痛に関する健康診断では、腰そのものや神経症状、作業歴との関係を確認する項目が中心になります。
(1) 既往歴及び業務歴の調査
適切です。既往歴とは、過去にかかった病気やけがの履歴のことです。腰痛健康診断では、過去に腰痛を起こしたことがあるか、椎間板ヘルニアなどの腰部疾患があったか、また、これまで重量物取扱い作業や不自然な姿勢での作業に従事していたかを確認します。腰痛は、過去の発症歴や作業内容と深く関係するため、配置前にこれらを把握することは予防上とても重要です。
(2) 自覚症状の有無の検査
適切です。自覚症状とは、本人が感じている痛み、しびれ、だるさ、違和感などの症状を指します。腰痛は検査数値だけで判断しにくい面があり、本人の訴えが重要な手がかりになります。腰部の痛みだけでなく、下肢のしびれや放散痛がある場合には、神経が圧迫されている可能性も考えられます。そのため、作業に配置する際の健康診断項目として適切です。
(3) 負荷心電図検査
不適切です。負荷心電図検査は、運動などで心臓に負荷をかけた状態で心電図を記録し、狭心症などの心疾患の有無を調べる検査です。これは循環器系の検査であり、腰痛予防対策指針に基づく腰痛健康診断の主要な検査項目ではありません。腰部に著しい負担のかかる作業に配置する際に確認すべきなのは、腰痛の既往、現在の腰部症状、神経症状、脊柱の状態などです。名称に「負荷」とあるため、腰に負担のかかる作業と関係がありそうに見えますが、検査対象は心臓である点に注意が必要です。
(4) 神経学的検査
適切です。神経学的検査では、下肢のしびれ、感覚異常、筋力低下、反射の異常などを確認します。腰痛の中には、単なる筋肉疲労だけでなく、椎間板ヘルニアなどにより神経が圧迫されて起こるものもあります。腰部の障害が神経症状として足に現れることがあるため、腰部に著しい負担のかかる作業へ配置する際には重要な検査です。
(5) 脊柱の検査
適切です。脊柱とは背骨のことで、腰痛と直接関係する部位です。脊柱の検査では、姿勢、変形、可動域、圧痛、運動時の痛みなどを確認します。腰部に負担のかかる作業では、脊柱の状態が悪いと腰痛を発症しやすくなったり、既存の症状が悪化したりする可能性があります。そのため、配置時の腰痛健康診断項目として適切です。
この問題で覚えるポイント
腰痛予防対策指針に基づく配置時の腰痛健康診断では、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状の有無の検査、脊柱の検査、神経学的検査など、腰部や神経症状に直接関係する項目を確認します。腰痛は、過去の腰痛歴、重量物取扱い作業、不自然な作業姿勢、長時間の同一姿勢などと関連しやすいため、作業歴の確認が重要です。腰痛健康診断で問われる検査は、腰そのものの状態と、腰から足にかけて現れる神経症状を確認するものと整理すると判断しやすくなります。心電図検査、負荷心電図検査、胸部エックス線検査など、腰痛と直接関係しない一般的な検査や循環器系の検査は、腰痛健康診断の項目としては選びません。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「負荷心電図検査」という言葉に含まれる「負荷」にあります。腰部に著しい負担のかかる作業という問題文を読んだ直後だと、「負荷」という言葉が作業負荷や腰部負担と関係しているように見えます。しかし、負荷心電図検査は心臓に運動負荷をかけて心疾患を調べる検査であり、腰痛の検査ではありません。試験では、名称の一部だけが問題文のテーマと似ている選択肢が混ぜられることがあります。正誤判断では、言葉の印象ではなく、その検査が何を調べるものかを確認することが大切です。
