出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)10月公表問題|労働生理第42問
問題
筋肉に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応を反射といい、最も単純な反射には膝(しつ)蓋腱(けん)反射などの伸張反射がある。
(2) 筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差や年齢差はほとんどない。
(3) 運動することによって筋肉が太くなることを筋肉の活動性肥大という。
(4) 荷物を持ち上げたり屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じている。
(5) 筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分に供給されると完全に分解され、最後に乳酸になる。
第1種衛生管理者|筋肉の収縮様式と活動性肥大・エネルギー代謝を解説
筋肉では、反射、筋力、筋肥大、収縮様式、エネルギー代謝がよく問われます。答えは(5)です。筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分にある場合、最終的に二酸化炭素と水まで分解され、エネルギーを生み出します。乳酸が生じやすいのは、酸素供給が不十分な状態で糖質が分解される場合です。酸素が十分なときと不足しているときで、グリコーゲンの分解結果が変わる点を押さえることが、この問題の中心です。
(1) 刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応を反射といい、最も単純な反射には膝(しつ)蓋腱(けん)反射などの伸張反射がある。
適切です。反射とは、刺激に対して意識的に考える前に起こる、自動的で定型的な反応のことです。膝蓋腱反射は、膝の下を軽くたたくと下腿が前に伸びる反応で、筋肉が急に伸ばされたときに収縮する伸張反射の代表例です。反射は脳でじっくり判断してから起こるものではなく、脊髄などを介して素早く起こるため、危険から体を守る働きにも関係しています。
(2) 筋肉が収縮して出す最大筋力は、筋肉の単位断面積当たりの平均値をとると、性差や年齢差はほとんどない。
適切です。最大筋力は、一般には筋肉の太さ、つまり筋断面積に大きく左右されます。男性の方が平均的に筋力が大きいとされるのは、筋肉量や筋断面積が大きい傾向があるためです。筋肉の単位断面積当たりで比較すると、発揮できる力の平均値には性差や年齢差はほとんどないとされています。試験では、「筋力の差は筋肉の質そのものより、筋量や断面積の差として説明される」と整理すると理解しやすいです。
(3) 運動することによって筋肉が太くなることを筋肉の活動性肥大という。
適切です。運動や筋力トレーニングなどで筋肉に継続的な負荷がかかると、筋線維が太くなり、筋肉全体が大きくなります。これを活動性肥大といいます。活動性肥大は、使うことで筋肉が発達する現象です。反対に、長期間使わない筋肉では筋肉が細くなる廃用性萎縮が起こります。活動性肥大と廃用性萎縮は対になる知識として覚えると、正誤判断に役立ちます。
(4) 荷物を持ち上げたり屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じている。
適切です。等張性収縮とは、筋肉の張力がおおむね一定のまま、筋肉の長さが変化して関節運動が起こる収縮です。荷物を持ち上げるときや屈伸運動をするときには、関節が動き、筋肉の長さが短くなったり伸びたりします。このような動きを伴う筋収縮は、等張性収縮に分類されます。これに対して、関節を動かさずに力を出す場合には、筋肉の長さがほとんど変わらない等尺性収縮が関係します。
(5) 筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分に供給されると完全に分解され、最後に乳酸になる。
不適切です。酸素が十分に供給される場合、筋肉中のグリコーゲンは分解されてエネルギーを生み出し、最終的には二酸化炭素と水になります。乳酸が生じるのは、強い運動などで酸素の供給が不足し、糖質が不完全に分解される場合です。つまり、この選択肢は「酸素が十分に供給される」としながら、「最後に乳酸になる」としている点が誤りです。酸素が十分な場合は完全分解、酸素が不足する場合は乳酸が生じやすい、と区別して覚える必要があります。
この問題で覚えるポイント
筋肉に関する問題では、収縮様式とエネルギー代謝の区別が重要です。反射は、刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応で、膝蓋腱反射のような伸張反射が代表例です。最大筋力は筋肉の断面積に大きく左右され、単位断面積当たりの筋力では性差や年齢差はほとんどないとされます。運動により筋線維が太くなることを活動性肥大といい、使わないことで筋肉が細くなる廃用性萎縮と対比して覚えると整理しやすいです。等張性収縮は筋肉の長さが変化し、関節運動を伴う収縮であり、荷物を持ち上げる動作や屈伸運動などが該当します。一方、関節を動かさずに力を出す場合は等尺性収縮です。筋肉中のグリコーゲンは、酸素が十分にあれば完全に分解され、最終的には二酸化炭素と水になります。酸素が不足すると乳酸が生じやすくなるため、酸素の有無と分解産物をセットで覚えることが大切です。
ひっかけポイント
この問題では、「完全に分解される」という正しい方向の表現に続けて、「最後に乳酸になる」という誤った結論をつなげている点がひっかけです。乳酸は運動や筋肉疲労のイメージと結びつきやすいため、筋肉中のグリコーゲンの最終産物として選びたくなります。しかし、酸素が十分にある場合は完全分解により二酸化炭素と水になります。乳酸は、酸素供給が不足したときの不完全な分解で生じるものです。また、等張性収縮と等尺性収縮も混同しやすいテーマです。関節運動を伴うかどうかを基準に判断すると、荷物を持ち上げる動作や屈伸運動は等張性収縮と考えられます。用語の印象だけでなく、実際に筋肉の長さや関節が動いているかを確認することが、正誤判断のポイントです。
