出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|空気環境の調整第67問
問題
図は、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける冷媒の標準的な状態変化をモリエル線図上に表したものである。
圧縮機の出口直後に相当する図中の状態点として、最も適当なものは次のうちどれか。

(1) ア
(2) イ
(3) ウ
(4) エ
(5) オ
ビル管過去問|蒸気圧縮冷凍サイクルの基礎|モリエル線図と状態変化を解説
この問題は、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける冷媒の状態変化を、モリエル線図上で正しく読み取れるかを問う問題です。圧縮機の出口直後の冷媒は、蒸発器から戻ってきた低圧の蒸気が圧縮されて、高圧かつ高温の過熱蒸気になっているのが基本です。したがって、モリエル線図では低圧側から高圧側へ圧縮された後の位置を選ぶ必要があり、正しい選択肢は(1)です。冷凍サイクルでは、圧縮機出口、凝縮器出口、膨張弁出口、蒸発器出口のそれぞれで冷媒の圧力や乾き度、熱量の状態が大きく異なるため、その違いを整理して覚えることが得点につながります。

(1) ア
適切です。圧縮機の出口直後では、蒸発器から戻った低圧の冷媒蒸気が圧縮され、高圧かつ高温の蒸気になっています。蒸気圧縮冷凍サイクルでは、圧縮は一般に乾いた蒸気またはやや過熱した蒸気を高圧側へ押し上げる過程です。そのため、モリエル線図では圧力が上がり、同時にエンタルピーも増加した位置に移動します。圧縮機出口の冷媒は液体ではなく蒸気であり、しかも凝縮器に入る前なので、通常は過熱蒸気の領域にあります。この問題では、その状態に対応する位置がアであるため、正答となります。
(2) イ
不適切です。圧縮機の出口直後に相当する点を選ぶには、高圧側の蒸気状態であることが必要です。もしイが圧縮前の吸入側に近い位置であれば、それは蒸発器出口または圧縮機入口に相当します。この段階の冷媒はまだ低圧側にあり、圧縮によって高圧化される前の状態です。圧縮機出口と入口を混同すると誤答しやすいですが、入口は低圧蒸気、出口は高圧過熱蒸気という違いを押さえることが大切です。
(3) ウ
不適切です。圧縮機出口直後の冷媒は蒸気でなければなりません。したがって、もしウが凝縮器で熱を放出した後の飽和液や過冷却液の位置であれば、圧縮機出口ではありません。凝縮器出口では冷媒は高圧の液体となっており、ここから膨張弁へ向かいます。圧縮機出口はまだ凝縮しておらず、熱を多く持った蒸気状態であるため、液体領域に近い点は選べません。
(4) エ
不適切です。膨張弁の出口直後では、冷媒は高圧液から低圧側へ絞られ、圧力が急激に下がります。このとき、エンタルピーはほぼ一定のまま、液と蒸気が混在した湿り蒸気の状態になります。これは圧縮機出口とはまったく異なる状態です。圧縮機出口は高圧高温の蒸気であり、膨張弁出口は低圧の湿り状態です。圧力の高低と、蒸気か液混合かの違いを見分けることが重要です。
(5) オ
不適切です。蒸発器出口付近の冷媒は、低圧側で熱を吸収し終えた蒸気です。圧縮機へ入る直前の状態として、乾き飽和蒸気またはやや過熱蒸気であることが多いですが、まだ高圧にはなっていません。そのため、蒸発器出口と圧縮機出口はどちらも蒸気状態である点が似ており、ここが典型的なひっかけになります。しかし、圧縮機出口は高圧側、蒸発器出口は低圧側という決定的な違いがあります。蒸気であることだけで判断せず、圧力の位置関係まで確認する必要があります。
この問題で覚えるポイント
蒸気圧縮冷凍サイクルは、圧縮、凝縮、膨張、蒸発の4つの基本過程で構成されます。圧縮機出口では、冷媒は高圧かつ高温の過熱蒸気です。凝縮器ではその蒸気が外部へ放熱し、高圧液になります。膨張弁では圧力が急低下し、エンタルピーほぼ一定のまま低圧の湿り状態になります。蒸発器では周囲から熱を奪って蒸発し、低圧蒸気となって再び圧縮機へ戻ります。モリエル線図では、圧縮は圧力上昇とエンタルピー増加、凝縮は高圧側での放熱、膨張は等エンタルピー変化、蒸発は低圧側での吸熱として読み取ります。試験では、圧縮機出口が高圧過熱蒸気、凝縮器出口が高圧液、膨張弁出口が低圧湿り冷媒、蒸発器出口が低圧蒸気であることを確実に区別できるようにしておくことが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、蒸発器出口と圧縮機出口がどちらも蒸気状態であるため、見た目の印象だけで選んでしまいやすい点にあります。受験者は「蒸気だから圧縮機出口らしい」と考えがちですが、実際には圧力が低い蒸気なのか、高い蒸気なのかが決定的に重要です。また、モリエル線図に不慣れだと、凝縮器出口の高圧液や膨張弁出口の湿り状態との区別も曖昧になりやすいです。つまり、状態の名前だけで覚えると混乱しやすく、圧力、相の状態、熱の出入りをセットで理解していないと誤答しやすい構造になっています。今後も、冷凍サイクルの問題では「どこで圧力が高いか」「蒸気か液体か」「熱を吸う側か放出する側か」を順番に確認する癖をつけることが大切です。