出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|空気環境の調整第57問
問題
浮遊粒子の次のア〜エの動力学的性質のうち、粒径が大きくなると数値が大きくなるものの組合せとして、最も適当なものはどれか。 ア 終末沈降速度 イ 拡散係数 ウ 気流に平行な垂直面への沈着速度 エ 粒子が気体から受ける抵抗力
(1) ア と イ
(2) ア と ウ
(3) ア と エ
(4) イ と エ
(5) ウ と エ
ビル管過去問|浮遊粒子の動力学的性質を解説
この問題は、浮遊粒子の粒径が大きくなったときに、どの動力学的性質が増加し、どの性質が減少するかを整理できているかを問う問題です。正しい選択肢は(3)です。終末沈降速度は粒子が大きいほど大きくなり、また粒子が気体から受ける抵抗力も一般に粒径が大きいほど大きくなります。一方で、拡散係数は粒径が小さいほど大きくなり、気流に平行な垂直面への沈着速度も微小粒子ほど拡散の影響で大きくなりやすい点が重要です。粒子の大きさによって支配的な移動の仕組みが変わることを押さえると、落ち着いて解けるようになります。
(1) ア と イ
不適切です。アの終末沈降速度は、粒子が大きくなるほど重力の影響を強く受けるため、大きくなります。しかし、イの拡散係数は逆で、粒径が小さい粒子ほどブラウン運動が活発になり、大きな粒子ほど小さくなります。したがって、アは正しい方向ですが、イは粒径が大きくなると大きくなる性質ではありません。この選択肢は、一方だけ正しく、もう一方が逆であるため不適切です。
(2) ア と ウ
不適切です。アの終末沈降速度は粒径が大きくなるほど大きくなるため正しいです。一方、ウの気流に平行な垂直面への沈着速度は、主として拡散による壁面への移動が関係するため、一般に微小粒子ほど大きくなります。粒子が小さいほど不規則運動が活発で、流れに沿う壁面へ到達しやすくなるからです。粒径が大きい粒子は重力沈降では下向きの面には付きやすくても、気流に平行な垂直面への沈着では拡散の寄与が小さくなるため、単純に大きくなるとはいえません。
(3) ア と エ
適切です。アの終末沈降速度は、粒子が大きくなるほど重力の作用が相対的に強くなり、空気中を落下する速さが大きくなります。空気中の微小粒子はなかなか沈まず長く浮遊しますが、粒径が大きくなると比較的速く沈降します。エの粒子が気体から受ける抵抗力も、粒子が大きくなるほど一般に大きくなります。粒子が大きいほど気体と接する表面や流れに対する影響が増えるためです。この2つはともに粒径の増加に伴って数値が大きくなる性質として整理できます。そのため、この組合せが最も適当です。
(4) イ と エ
不適切です。イの拡散係数は粒径が大きくなるほど小さくなります。これは小さな粒子ほど気体分子の衝突の影響を受けて不規則に動きやすいからです。一方、エの粒子が気体から受ける抵抗力は粒径が大きいほど大きくなる方向です。したがって、この選択肢も一方は合っていても、もう一方が逆です。拡散という言葉から、粒子が大きいほど広がりやすいと直感的に考えてしまうと誤りやすいですが、実際には逆である点に注意が必要です。
(5) ウ と エ
不適切です。エは粒径が大きくなるほど大きくなるので正しい方向です。しかし、ウの気流に平行な垂直面への沈着速度は、一般に粒径が小さい粒子ほど拡散の影響で大きくなりやすく、粒径が大きくなったからといって大きくなる性質ではありません。この選択肢は、垂直面への沈着を重力沈降と同じ感覚で考えると選びやすいですが、垂直面への沈着では重力だけでなく拡散の寄与が重要になるため、そこで判断を誤りやすいです。
この問題で覚えるポイント
浮遊粒子の挙動は、粒径によって支配的な移動機構が変わります。粒径が大きい粒子では重力の影響が強くなり、終末沈降速度は大きくなります。つまり、大きい粒子ほど空気中に長くとどまりにくく、沈みやすくなります。これに対して、拡散係数は小さい粒子ほど大きくなります。これはブラウン運動による不規則な動きが微小粒子で顕著になるためです。壁面への沈着も、どの面に付着するかによって考え方が変わります。気流に平行な垂直面への沈着は、重力よりも拡散の影響を強く受けやすいため、小粒径側で大きくなりやすいことが重要です。また、粒子が気体から受ける抵抗力は、一般に粒径が大きいほど大きくなります。試験では、沈降は大粒径、拡散は小粒径という対比を軸に整理しておくと、類題にも対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、粒子が大きいほど何でも数値が大きくなるように感じてしまう日常感覚を利用している点です。実際には、終末沈降速度のように大粒径で大きくなる性質もあれば、拡散係数のように小粒径で大きくなる性質もあります。特に拡散は、粒子が大きいほど広がりやすそうだという直感と逆なので、そこが狙われやすいです。また、沈着速度という言葉だけを見て、重い粒子ほど壁に付きやすいと短絡的に考えると誤ります。どの面への沈着なのか、重力が支配的なのか、拡散が支配的なのかを区別して考えることが大切です。問題文の条件を丁寧に読み、用語ごとに支配機構を思い出す習慣をつけると、同じ型のひっかけに強くなります。
