出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|空気環境の調整第47問
問題
結露に関する次の文章の( )内に入る語句の組合せとして、最も適当なものはどれか。 暖房時の壁体の内部や表面での結露を防止するには、壁体内において、水蒸気圧の( ア )側に( イ )の低い( ウ )を設けることが有効である。
(1) ア:高い イ:熱伝導率 ウ:断熱材
(2) ア:高い イ:湿気伝導率 ウ:防湿層
(3) ア:低い イ:湿気伝導率 ウ:防湿層
(4) ア:低い イ:熱伝導抵抗 ウ:断熱材
(5) ア:低い イ:湿気伝導率 ウ:断熱材
ビル管過去問|結露防止の基本原理|防湿層・断熱材・水蒸気圧の考え方を解説
この問題は、暖房時に壁体内結露を防ぐための基本原理を問う問題です。結露防止では、熱の流れだけでなく、水蒸気の移動をどう抑えるかが重要です。正しい選択肢は(2)です。暖房時は室内側の水蒸気圧が高くなりやすいため、水蒸気圧の高い側、つまり室内側に、湿気を通しにくい防湿層を設けることが有効です。この原理を押さえておくと、断熱材と防湿層の役割の違いも整理しやすくなります。
(1) ア:高い イ:熱伝導率 ウ:断熱材
不適切です。熱伝導率が低い断熱材を設けることは、熱の移動を抑えて表面温度の低下を防ぐうえで有効ですが、この文章は壁体内における水蒸気圧と結露防止の関係を問うています。ここで直接重要なのは、熱の伝わりやすさではなく、湿気の通りにくさです。断熱材は主として熱を通しにくくする材料であり、水蒸気の移動を止めることが主目的ではありません。そのため、結露防止の基本原理としては、防湿層を高水蒸気圧側に設けるという考え方が正解になります。
(2) ア:高い イ:湿気伝導率 ウ:防湿層
適切です。暖房時には一般に室内の方が温かく、室内空気は多くの水蒸気を含みやすいため、室内側が水蒸気圧の高い側になります。この水蒸気が壁体内部へ移動し、内部で温度が下がって露点に達すると内部結露が生じます。そこで、水蒸気圧の高い側に湿気伝導率の低い防湿層を設け、水蒸気の侵入そのものを抑えることが有効です。つまり、暖房時の結露防止では、室内側に防湿層を配置することが基本となります。試験では、断熱材は熱対策、防湿層は湿気対策と整理して覚えると判断しやすくなります。
(3) ア:低い イ:湿気伝導率 ウ:防湿層
不適切です。防湿層そのものは湿気伝導率が低い材料であるため、その点だけを見るともっともらしく見えます。しかし、設ける位置が誤っています。暖房時の結露防止では、水蒸気が多い室内側から壁体内へ湿気が入り込むことを防ぐ必要があります。したがって、防湿層は水蒸気圧の低い側ではなく、高い側に設けるのが原則です。位置関係を逆にしてしまうと、壁体内に湿気が入り込んだ後で止める形になり、十分な結露防止になりません。
(4) ア:低い イ:熱伝導抵抗 ウ:断熱材
不適切です。断熱材は熱伝導抵抗が大きい、つまり熱を通しにくい材料であり、その性質自体は正しいです。しかし、この選択肢も設置位置が誤っています。暖房時の結露防止では、壁体内へ侵入する水蒸気を抑えるため、水蒸気圧の高い側に防湿層を設けることが重要です。断熱材は温度低下を緩やかにして結露しにくくする補助的な役割はありますが、文章の空欄を埋める中心概念としては適しません。さらに、水蒸気圧の低い側に断熱材を置くという表現では、結露防止の本質を説明したことになりません。
(5) ア:低い イ:湿気伝導率 ウ:断熱材
不適切です。湿気伝導率が低いという性質は、防湿層に求められる性質としては適切ですが、断熱材の主たる役割は熱の移動を抑えることです。断熱材の中にはある程度湿気を通すものもあり、防湿層と同じようには扱えません。また、暖房時に重視すべき位置は水蒸気圧の高い側であり、低い側としている点も誤りです。この選択肢は、断熱材と防湿層の役割の違いをあいまいにしているため、誤答を誘いやすい内容です。
この問題で覚えるポイント
暖房時の壁体内結露は、室内側の暖かく湿った空気に含まれる水蒸気が壁体内へ移動し、内部の温度が露点以下になった場所で凝縮することで生じます。したがって、結露防止では温度低下を抑える対策と、水蒸気の侵入を抑える対策の両方を考える必要があります。断熱材は熱の移動を抑え、壁や表面の温度低下を防ぐための材料です。一方、防湿層は湿気の移動を抑えるための材料であり、暖房時には水蒸気圧の高い室内側に設けるのが原則です。ここで問われやすいのは、熱伝導率が低い材料は断熱材、湿気伝導率が低い材料は防湿層、という役割の違いです。さらに、暖房時と冷房時では高水蒸気圧側が変わりうるため、防湿層の位置も条件によって考える必要がありますが、ビル管ではまず暖房時は室内側が高水蒸気圧側になりやすいという基本を確実に押さえることが大切です。表面結露は室内表面温度が露点以下になることで起こり、内部結露は壁体内部で起こるという違いも、あわせて整理しておくと得点につながります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、断熱材と防湿層の役割を混同させる点にあります。受験者は結露対策と聞くと断熱材を連想しやすいため、熱伝導率や熱伝導抵抗といった言葉が入ると正しそうに見えてしまいます。しかし、この問題の核心は水蒸気圧と湿気の移動です。つまり、熱の話ではなく湿気の話として読めるかが勝負になります。また、「高い側」と「低い側」を逆にして迷わせるのも典型的な出題です。結露は湿気が入ってから起こるため、対策は湿気が入る前、すなわち高水蒸気圧側で行うという発想が必要です。さらに、材料の性質だけ一部正しくても、設置位置が誤っていれば全体として不正解になります。このように、一部だけ正しい文章に引っ張られず、何を防ぐために、どこに、何を設けるのかを一連の流れで判断することが重要です。
