出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|建築物衛生行政概論第8問
問題
建築物環境衛生管理技術者に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1) 特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるよう、監督する。
(2) 選任された特定建築物に常駐することが必要である。
(3) 特定建築物所有者等と雇用関係がなければならない。
(4) 特定建築物維持管理権原者に設備改善を命じることができる。
(5) 環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておかなければならない。
ビル管過去問|建築物環境衛生管理技術者の役割|選任要件と業務内容を解説
この問題は、建築物環境衛生管理技術者の役割、選任要件、権限の範囲について理解しているかを問う問題です。正しいのは、特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるよう監督するという内容です。建築物環境衛生管理技術者は、法令に基づいて維持管理の実施状況を確認し、助言や監督を行う立場ですが、常駐義務や雇用関係は必須ではありません。また、改善を命じる法的権限はなく、帳簿書類を備える義務の主体も管理技術者本人ではない点を押さえることが大切です。
(1) 特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるよう、監督する。
適切です。建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物において空気環境、給水、排水、清掃、ねずみや昆虫等の防除などの維持管理が、環境衛生上適正に実施されるよう監督する役割を担います。ここでいう監督とは、自らすべての作業を行うことではなく、維持管理が法令や基準に沿って行われているかを確認し、必要に応じて意見を述べ、適正な管理を確保することです。建築物衛生法における管理技術者の中核的な役割そのものを述べた内容であり、最も適当です。
(2) 選任された特定建築物に常駐することが必要である。
不適切です。建築物環境衛生管理技術者には、選任された建築物への常駐義務はありません。重要なのは、その建築物の環境衛生上の維持管理を適切に監督できることです。実務上は現場に赴いて状況確認や指導を行うことはありますが、法令上、常にその建築物に滞在していなければならないとはされていません。常駐管理人や設備員のような現場配置のイメージと混同すると誤りやすい部分です。
(3) 特定建築物所有者等と雇用関係がなければならない。
不適切です。建築物環境衛生管理技術者として選任されるために、特定建築物所有者等との雇用関係は必須ではありません。必要なのは、法で定められた資格を有していることと、その建築物の維持管理を適正に監督できる立場にあることです。そのため、外部委託先の技術者などが選任される場合もあります。雇用されている社員でなければならないと考えると、選任要件を狭く捉えすぎてしまいます。
(4) 特定建築物維持管理権原者に設備改善を命じることができる。
不適切です。建築物環境衛生管理技術者には、維持管理権原者に対して設備改善を命令する法的権限はありません。管理技術者は専門的立場から意見を述べたり、改善の必要性を助言したりすることはできますが、命令権を持つ行政機関ではありません。法的な命令や措置命令は、所管行政庁などの権限に属するものであり、管理技術者の役割とは異なります。助言や監督と命令を区別して理解することが大切です。
(5) 環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておかなければならない。
不適切です。帳簿書類を備え、保存する義務は、特定建築物の所有者や維持管理権原者など、建築物の管理責任を持つ側に課されるものです。建築物環境衛生管理技術者は、それらの記録内容を確認し、維持管理が適切かを監督する立場ですが、法的義務の主体そのものではありません。この問題は、実際に業務で帳簿を確認する立場であることから、備え付け義務者でもあると錯覚しやすい点がひっかけになっています。
この問題で覚えるポイント
建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物の環境衛生上の維持管理を監督する専門技術者です。中心となる役割は、空気環境の測定、給水や排水の管理、清掃、害虫防除などが法令や基準に沿って適正に行われるよう確認し、必要な意見を述べることにあります。自らすべての実務を実施する立場ではなく、管理全体を技術的に監督する立場であることが重要です。 選任にあたっては、建築物環境衛生管理技術者免状を有していることが前提ですが、所有者等との雇用関係までは要求されません。外部の専門家が選任されることもあります。また、常駐も必須ではなく、適切に監督できる体制があれば足ります。ここは、設備員や管理員のような常駐職と混同しやすいので注意が必要です。 さらに、管理技術者には命令権はありません。改善の必要性を指摘し、助言することはできますが、法的に命じることができるのは行政庁など別の主体です。この違いは頻出です。帳簿書類の備付けや保存についても、義務を負う主体は所有者や維持管理権原者側であり、管理技術者本人ではありません。試験では、監督する者と義務主体、助言する者と命令できる者を整理して覚えることが正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、建築物環境衛生管理技術者が重要な立場であることから、何でもできる、何でも責任を負うと受験者に思わせる点にあります。実際には、管理技術者は専門的な監督者であって、常駐義務を負う現場担当者でもなければ、所有者等に命令できる行政権限者でもありません。この立場の違いをあいまいに覚えていると誤答しやすくなります。 また、実務で帳簿書類を確認したり、改善を求めたりする場面があるため、帳簿の備付け義務者や改善命令権者でもあるように感じてしまうのも典型的な罠です。試験では、実務上関わることがあるという事実と、法的義務や法的権限を持つということは別だと区別する必要があります。一部だけもっともらしい文章に見えても、義務主体や権限主体がずれていないかを必ず確認することが、今後も同じパターンの問題で得点するためのコツです。
