出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|建築物衛生行政概論第9問
問題
建築物環境衛生管理基準に基づく飲料水の衛生上必要な措置に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 水道事業者が供給する水(水道水)を直結給水により、特定建築物内に飲料水として供給する場合、定期の水質検査を行う必要はない。
(2) 水道事業者が供給する水(水道水)を特定建築物内の貯水槽に貯留して供給する場合、貯水槽以降の飲料水の管理責任者は、当該特定建築物の維持管理権原者である。
(3) 供給する水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知する。
(4) 飲用目的だけでなく、炊事用など、人の生活の用に供する水も、水道法で定める水質基準に適合する水を供給することが必要である。
(5) 水道事業者が供給する水(水道水)以外の井水等を使用する場合、水道水と同様の水質が確保されていれば、給水栓における残留塩素の保持は必要ない。
ビル管過去問|建築物衛生法 飲料水管理|貯水槽水道・水質基準・残留塩素を解説
この問題は、特定建築物における飲料水管理の基本ルールを問う問題です。ポイントは、直結給水と貯水槽給水で管理の考え方が異なること、水質基準への適合が必要な範囲、そして水道水以外の水を使う場合には残留塩素の保持が必要になることです。正しい選択肢は、(1)(2)(3)(4)で、最も不適当なのは(5)です。(5)は、井水等であっても給水栓において残留塩素を一定以上保持しなければならない点を誤っています。
(1) 水道事業者が供給する水(水道水)を直結給水により、特定建築物内に飲料水として供給する場合、定期の水質検査を行う必要はない。
適切です。直結給水の場合は、水道事業者が供給する水がそのまま建築物内に送られるため、建築物側で貯留による水質変化が起こりにくいです。そのため、建築物衛生管理基準上、貯水槽水のような定期の水質検査は原則として不要です。ただし、給水設備の汚染や異常が疑われる場合には、必要に応じて水質を確認する必要があります。試験では、直結給水と貯水槽給水の管理義務の違いを押さえておくことが重要です。
(2) 水道事業者が供給する水(水道水)を特定建築物内の貯水槽に貯留して供給する場合、貯水槽以降の飲料水の管理責任者は、当該特定建築物の維持管理権原者である。
適切です。貯水槽に一度水をためる場合は、その後の水質管理は建築物側の責任になります。つまり、水道事業者が供給した時点では安全であっても、貯水槽や配管の維持管理が不十分であれば水質が悪化するおそれがあります。そのため、貯水槽以降の飲料水の衛生確保については、特定建築物の維持管理権原者が責任を負います。この点は、直結給水との大きな違いとしてよく出題されます。
(3) 供給する水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知する。
適切です。飲料水に健康被害のおそれがあると判明した場合、最優先すべきなのは被害拡大の防止です。そのため、まず給水を止め、同時に利用者へ危険性を速やかに知らせなければなりません。ここでは「直ちに」という表現が重要で、点検後に様子を見る、あるいは一部の関係者だけに伝えるという対応では不十分です。建築物衛生法の実務では、異常時対応の迅速さが非常に重視されます。
(4) 飲用目的だけでなく、炊事用など、人の生活の用に供する水も、水道法で定める水質基準に適合する水を供給することが必要である。
適切です。飲料水の衛生管理というと、つい「飲み水」だけを想像しがちですが、実際には炊事用など人の生活に使う水も対象になります。口に直接入れる水だけでなく、調理を通じて人体に影響する可能性があるためです。そのため、建築物内で供給されるこれらの水についても、水道法の水質基準に適合していることが必要です。試験では、「飲用のみ」と狭く考えてしまうと誤りやすいので注意が必要です。
(5) 水道事業者が供給する水(水道水)以外の井水等を使用する場合、水道水と同様の水質が確保されていれば、給水栓における残留塩素の保持は必要ない。
不適切です。井水等を使用する場合は、たとえ検査上の水質が良好であっても、給水栓において残留塩素を保持する必要があります。これは、水質が一時点で良好でも、配管や貯水設備の途中で微生物汚染が起こるおそれがあるためです。残留塩素は、消毒が適切に機能しているかを示す重要な指標です。したがって、「水質がよければ残留塩素は不要」とするこの記述は誤りです。この問題の正答は(5)です。
この問題で覚えるポイント
建築物衛生管理基準における飲料水管理では、まず直結給水と貯水槽給水を区別して整理することが重要です。直結給水は水道事業者の供給水をそのまま使用する形であり、原則として建築物側での定期水質検査は不要です。一方、貯水槽給水では、貯水槽以降の水質管理責任は維持管理権原者にあります。つまり、水をためた時点で建築物側の管理責任が明確になると理解すると整理しやすいです。 また、供給する水は飲用だけでなく、炊事用など人の生活の用に供する水も水道法の水質基準に適合していなければなりません。試験では「飲み水だけが対象」と狭く考えると誤答につながります。さらに、水道水以外の井水等を使用する場合には、単に水質検査の結果が良好であるだけでは足りず、給水栓における残留塩素の保持が必要です。ここは非常に重要な論点で、消毒の継続性を担保するための要件として押さえる必要があります。 異常時対応も頻出です。供給水が人の健康を害するおそれがあると分かったときは、直ちに給水を停止し、関係者に危険を周知することが必要です。平常時の管理だけでなく、異常時にどう動くかまで含めて覚えておくと、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「水質が良好なら残留塩素は不要ではないか」と受験者に思わせる点にあります。日常感覚では、検査結果がよければ安全と考えがちですが、建築物衛生管理では、供給過程での再汚染リスクまで見込んで管理しなければなりません。つまり、静的な水質の良否と、継続的な消毒状態の確認は別の論点です。ここを混同すると誤ります。 また、直結給水と貯水槽給水の管理責任の違いも、よく狙われる罠です。どちらも同じ水道水だから管理も同じだろうと考えると間違えます。実際には、貯水槽にためた時点で建築物側の管理責任が重くなります。さらに、「飲料水」という言葉から、飲む水だけを対象と考えてしまうのも典型的な誤りです。試験では、用語を日常語の感覚で狭く捉えず、法令や基準上の対象範囲で判断することが大切です。
