出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|建築物衛生行政概論第2問
問題
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)に基づく特定建築物に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 特定建築物の衛生上の維持管理に関する監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長である。
(2) 建築物環境衛生管理基準を定め、維持管理権原者にその遵守を義務付けている。
(3) 保健所は、多数の者が使用、利用する建築物について、正しい知識の普及を図るとともに、相談、指導を行う。
(4) 特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。
(5) 登録業者の業務の改善向上を図ることを目的として、事業ごとに、都道府県を単位とした団体を知事が指定する制度が設けられている。
ビル管過去問|建築物衛生法 特定建築物 制度概要・監督官庁を解説
この問題は、建築物衛生法における特定建築物の制度の基本構造を問う問題です。監督官庁が誰か、維持管理基準の位置づけ、保健所の役割、建築物環境衛生管理技術者の選任義務など、制度の根幹が問われています。正しいのは(1)から(4)で、誤っているのは(5)です。(5)は、登録業者に関する団体の指定制度について述べていますが、そのような制度は建築物衛生法には設けられていません。条文や制度の名称がもっともらしく見えるため迷いやすいですが、特定建築物制度と登録業制度は区別して整理しておくことが大切です。
(1) 特定建築物の衛生上の維持管理に関する監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長である。
適切です。建築物衛生法において、特定建築物の衛生上の維持管理について監督を行うのは、都道府県知事のほか、保健所を設置する市の市長や特別区の区長です。これは、地域住民の健康や生活環境に密接に関わるため、地域の公衆衛生行政を担う行政機関が関与する仕組みになっているからです。試験では「監督官庁」と聞かれたときに、国の省庁を直接答えるのではなく、実際の監督権限を持つ地方公共団体の長であることを押さえておく必要があります。
(2) 建築物環境衛生管理基準を定め、維持管理権原者にその遵守を義務付けている。
適切です。建築物衛生法では、特定建築物について、空気環境、給水、排水、清掃、ねずみや昆虫等の防除などに関する建築物環境衛生管理基準が定められており、維持管理権原者はこれを守らなければなりません。ここで重要なのは、単に努力義務ではなく、法令に基づく遵守義務である点です。特定建築物は、多数の人が利用する建物であるため、衛生状態が不適切だと健康被害が広がるおそれがあります。そのため、一定の客観的な基準を定め、継続的に適切な維持管理を行わせる制度になっています。
(3) 保健所は、多数の者が使用、利用する建築物について、正しい知識の普及を図るとともに、相談、指導を行う。
適切です。保健所は、特定建築物に限らず、多数の者が使用または利用する建築物について、衛生的環境の確保に関する知識の普及、相談対応、指導などを行います。建築物衛生法は、違反に対して監督や命令を行うだけでなく、平常時から衛生管理の水準を高めるための啓発や助言も重視しています。したがって、保健所の役割は単なる取締り機関ではなく、建築物の衛生管理を支援する行政機関でもあると理解しておくと整理しやすいです。
(4) 特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。
適切です。特定建築物の所有者、占有者その他の者で、その建築物の維持管理について権原を有する者は、建築物環境衛生管理技術者を選任しなければなりません。建築物環境衛生管理技術者は、建物の衛生的環境を確保するために、維持管理が適正に行われるよう監督する専門的立場の責任者です。試験では「所有者が必ず選任する」と狭く覚えるのではなく、「維持管理権原者が選任する」という考え方で押さえることが大切です。実務でも、所有関係と管理責任が一致しない場合があるため、この表現の違いは重要です。
(5) 登録業者の業務の改善向上を図ることを目的として、事業ごとに、都道府県を単位とした団体を知事が指定する制度が設けられている。
不適切です。建築物衛生法には、建築物清掃業や建築物空気環境測定業などの登録業制度がありますが、選択肢のように、事業ごとに都道府県単位の団体を知事が指定する制度は設けられていません。文章はもっともらしく見えますが、実在しない制度を混ぜ込んだひっかけです。登録業制度は、一定の物的・人的要件を満たした事業者を登録する仕組みであり、業界団体を知事が指定して業務改善を図る制度とは別物です。法律上の制度として存在するかどうかを冷静に見分けることが必要です。
この問題で覚えるポイント
建築物衛生法の特定建築物制度では、多数の者が使用し、または利用する一定規模以上の建築物について、衛生的環境を確保するためのルールが定められています。ここで重要なのは、誰が監督するのか、誰が管理責任を負うのか、どのような基準を守るのかを整理して覚えることです。監督官庁は、都道府県知事、保健所を設置する市の市長、特別区の区長です。維持管理の主体は、所有者そのものとは限らず、維持管理について権原を有する者であり、その者が建築物環境衛生管理技術者を選任します。さらに、建築物環境衛生管理基準は努力目標ではなく、遵守義務のある基準です。したがって、制度全体は、行政による監督、管理権原者による実施、技術者による専門的管理という三層構造で理解すると整理しやすくなります。また、特定建築物制度と登録業制度は同じ法律の中にあるため混同しやすいですが、前者は建物そのものの衛生管理、後者は衛生管理業務を担う事業者の登録制度であり、対象が異なります。この違いを押さえると、同テーマの問題にも対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、実在する制度や用語の中に、存在しない制度を自然に紛れ込ませている点にあります。特に登録業制度は建築物衛生法の中に実際に存在するため、「業務の改善向上」「都道府県単位の団体」「知事が指定」といった行政法らしい言い回しが並ぶと、受験者はついありそうだと思ってしまいます。しかし、法律問題では、もっともらしさではなく、制度として本当に規定されているかを見抜かなければなりません。また、「所有者等」「維持管理権原者」「監督官庁」など、似たような立場の用語を曖昧に覚えていると誤答しやすくなります。日常感覚で読むとどれも正しそうに見えますが、試験では、誰に権限があり、誰に義務があり、どの制度の話なのかを厳密に切り分ける姿勢が重要です。
