【ビル管過去問】令和5年度 問題171|害虫防除|イエヒメアリ・トコジラミ・ユスリカ・ツマアカスズメバチを解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|ねずみ、昆虫等の防除第171問

問題

害虫やその防除に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) イエヒメアリの防除には、食毒剤が有効である。

(2) トコジラミは、ピレスロイド剤に対する抵抗性を示す集団が報告されている。

(3) ツマアカスズメバチは、特定外来生物に指定されている。

(4) ユスリカ類の建築物への侵入を抑制するために、電撃殺虫機を窓や出入口の近くに設置する。

(5) ヤケヒョウヒダニは、自由生活性のダニである。

ビル管過去問|害虫防除|イエヒメアリ・トコジラミ・ユスリカ・ツマアカスズメバチを解説

この問題は、代表的な害虫やダニの生態と、それぞれに適した防除方法を正しく理解しているかを問う問題です。ポイントは、害虫ごとに有効な防除法が異なることと、見た目や名前の印象ではなく、生態に基づいて判断することです。正しい知識としては、イエヒメアリには食毒剤が有効であり、トコジラミには薬剤抵抗性の問題があり、ツマアカスズメバチは特定外来生物に指定されています。また、ヤケヒョウヒダニは自由生活性のダニです。一方で、ユスリカの侵入防止対策として、電撃殺虫機を窓や出入口の近くに設置するという記述は不適当です。なぜなら、光で虫を誘引する機器を開口部の近くに置くと、かえって外から虫を引き寄せるおそれがあるためです。

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(1) イエヒメアリの防除には、食毒剤が有効である。

適切です。イエヒメアリは非常に小型で、建物内のわずかなすき間や設備周辺に営巣し、列を作って広範囲に行動することがあります。このようなアリ類では、見えている個体だけを接触殺虫剤で駆除しても、巣全体を十分に抑えられないことがあります。食毒剤は、働きアリが餌として巣に持ち帰り、他の個体や女王アリにも影響が及ぶことが期待できるため、コロニー全体の制御に適しています。特にイエヒメアリのように群れで生活する昆虫では、巣ごと対処する発想が重要です。

(2) トコジラミは、ピレスロイド剤に対する抵抗性を示す集団が報告されている。

適切です。トコジラミは吸血性の害虫で、ベッド周辺や家具のすき間、壁紙の継ぎ目などに潜んで生活します。近年は各地で再び問題となっており、その背景の一つとして薬剤抵抗性が知られています。とくにピレスロイド系薬剤に対して抵抗性を示す集団が報告されており、以前のように同じ薬剤を使えば十分というわけではありません。そのため、駆除では薬剤選択だけでなく、潜伏場所の把握、加熱処理、物理的除去、侵入経路対策などを組み合わせる総合的な管理が大切です。試験では「トコジラミ=抵抗性に注意」という知識がよく問われます。

(3) ツマアカスズメバチは、特定外来生物に指定されている。

適切です。ツマアカスズメバチは外来性のスズメバチで、生態系や養蜂業への影響が懸念されている種です。このため、日本では特定外来生物に指定されています。特定外来生物は、飼養、保管、運搬、販売、譲渡、野外への放出などが原則として規制される対象であり、社会的にも注意が必要な生物です。ビル管試験では、単なる昆虫名の暗記ではなく、「外来生物として法的にどう位置づけられているか」が問われることがあります。害虫防除は衛生面だけでなく、法制度との関係も押さえることが大切です。

(4) ユスリカ類の建築物への侵入を抑制するために、電撃殺虫機を窓や出入口の近くに設置する。

不適切です。ユスリカ類は光に誘引されやすい性質をもつため、電撃殺虫機や誘虫性のある捕虫器を窓や出入口の近くに設置すると、建物外部のユスリカをかえって引き寄せてしまうおそれがあります。侵入防止を目的とするなら、まずは開口部管理が基本です。具体的には、網戸や自動扉、すき間の遮断、外灯の種類や配置の見直しなどで、建物内に入りにくい環境を作ることが大切です。捕虫器を使う場合も、外から見えにくい位置や、建物内部で侵入後の拡散を防ぐ位置に配慮して設置する必要があります。つまり、「虫を殺せる機械だから入口近くでよい」という発想は誤りであり、侵入防止では誘引効果まで考えなければなりません。

(5) ヤケヒョウヒダニは、自由生活性のダニである。

適切です。ヤケヒョウヒダニは、室内のほこりや寝具、じゅうたんなどに生息するダニで、人や動物の体表に常時寄生して生活するダニではありません。このように、宿主に依存せず環境中で生活するものを自由生活性といいます。ヤケヒョウヒダニは、湿度や温度、餌となるフケや有機物の量などの影響を受けて増殖し、アレルゲンとして問題になることが多いダニです。衛生管理上は、ダニそのものによる吸血被害よりも、アレルギーとの関係を理解することが重要です。寄生性ダニとの違いを区別して覚えることが得点につながります。

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この問題で覚えるポイント

害虫防除では、虫の名前だけでなく、生態と行動特性に応じた対策を結びつけて覚えることが重要です。アリ類のように社会性をもち、巣全体で生活する昆虫には、個体をその場で殺すだけでなく、巣に持ち帰らせて全体に作用させる食毒剤が有効です。トコジラミは吸血性害虫で、ベッド周辺や家具のすき間に潜伏し、ピレスロイド抵抗性の問題があるため、薬剤だけに頼らない対策が必要です。ユスリカは光に誘引されやすいため、侵入防止では照明や捕虫器の位置が重要になります。開口部の近くに誘虫性の機器を置くと逆効果になることがあります。ツマアカスズメバチは外来種としての危険性から特定外来生物に指定されている点を押さえる必要があります。ダニでは、ヤケヒョウヒダニのような自由生活性のダニと、宿主に寄生して生活するダニとを区別して理解することが大切です。試験では、防除法、生態、法的区分、衛生上の意味をセットで整理しておくと対応しやすくなります。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、「殺虫できる機器なら、虫が入ってきそうな場所に置けばよい」という日常感覚を利用している点にあります。たしかに窓や出入口の近くに電撃殺虫機を置けば効率がよさそうに思えますが、ユスリカのように光へ集まる虫では、開口部の近くに誘引源を置くこと自体が侵入を助長してしまいます。つまり、「駆除効果」と「侵入防止効果」を混同すると誤答しやすいのです。また、害虫の名前に引っぱられて判断してしまうのも危険です。たとえばトコジラミは昔の知識のまま「殺虫剤で簡単に駆除できる」と考えると誤りますし、ヤケヒョウヒダニも「ダニだから寄生性だろう」と思い込むと間違えます。このように、一部だけ知っていると正しく見えてしまう選択肢が並んでいるため、試験では「その生物の生活様式に合った対策か」「その表現は本当に防除目的に合っているか」を落ち着いて確認することが大切です。

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